症候群、といってもいい気がする。
恋愛論とか最たるものなんだけど。世の中には、「どう考えても特殊な状況における個人的な問題なんだけど、それを一般的な問題にしたい、凄くしたい」という病気にかかっている人がたくさんいる。そりゃもう数限りなくいる。
新聞やテレビといったマスメディアが、例えば特殊な事件をネタにしてWebやオタク、アニメやゲームといったものを一般的に叩くことに憤る人は多い。が、翻ってみると、「特殊なネタ→一般化」を駆使する病というのは、マスメディアに限らずあたり一面に蔓延しているのである。もうこれは風土病などというレベルの騒ぎではない。数十年も前から発生している、思考的疾患のアウトブレイクである。
かく言う私も「一般化病」を長年患っている患者の一人である。筋金入りの患者といってもいい。病気自慢を貫徹する為にも、ひとつこの病気について一般化を行ってみよう。一般化病患者の辞書に「自己撞着」とか「自分を客観視」などという軟弱な単語は載っていないのだ。
まず、要件箇条書き。
・この病気は、「何かを論じる」というツールをもっている人が広く罹患し得る病気である。
・自分の狭い範囲での体験、一部の特殊なケース、2ちゃんのログ、場合によっては勝手な妄想をネタに、「日本における」とか「ネット社会では」とか「一般的な合コンにおいて」といった、凄く広い範囲に当てはめるのが一般的な症状である。
・根底には、「特殊論よりも一般論の方が説得力がある・あるいは面白い、読者に受ける」という反応欲求がある様な気がする。
・特徴は、「一般化具合が無理過ぎ」という一言で表せる。
定義はこんなもんか。
典型的な文脈には、以下の様なものがある。
・電車で偶然マナーの悪い若者を見つけた → 現在の日本のマナー低下に衝撃を受ける
・人間関係がひどいことになっている夫婦がいた → 今の時代、結婚なんかするもんじゃない
・アニメ好きの犯罪者発見 → これだから二次元は
・火浦功が十年何も書いてない → SF作家の余りの怠惰さには深刻な憤りを覚える
最後のはなんか違う気もするな。まあいいや。
ともかく、ゆとり世代からmixi犯罪予告、はてな村やら団塊の世代に至るまで、「一般化の対象」は数限りなく存在する。
勿論、「その一般論は実際のところ正しいのか、間違っているのか」はこの議論に直接関係がない。正しい場合も間違っている場合もあるだろう。この病気の特徴は、統計あるいは根拠の欠如、それに伴う論理の飛躍である。
本来、「具体例→一般化」というのは非常に重要な思考法であり、基本的極まる論法でもあるのだ。正しく使うのであれば、これ以上にない程有用な文章術の筈なのである。
問題は、一般化した場合の結論が綺麗にまとまり過ぎて、ついつい無理な題材でも一般化したくなってしまうということに尽きる。一般化の誘惑という名前をつけてもいい。「これこれこーゆー特殊なケースがあったよー」というだけのテキストよりも、「故に、この様な結論が出せる」というテキストが後ろにくっついていた方が、文章が格好良くまとまるのである。
様々なブログを見渡すと、上の様な文言は数限りなく発見出来る。「自分の体験」という特殊なケースをWebに発信する際、一般的な結論をくっつけたいという欲求は、どんな場合でも強いものである様だ。(繰り返すが、一般化したい病患者の辞書に自己客観視という単語は存在しない)
安易な一般化とは、つまり説得力のドーピングなのだ。このドーピングに親しみ過ぎてしまった時、人は「個人的な問題でも一般化したい病」の患者となる。
Google先生にお伺いを立てた所、実に分かりやすい形でこの症状が現れているエントリーを見つけたので、一つ参照しておこう。
合コン二元論と恋愛観。
色恋沙汰なんぞ人それぞれと言っておきながら、同じ筆でこの一般化っぷり。これはひどい。
まあ、アレです。根拠がない時は根拠がないことを自覚して書いた方がいいよね、とか。無理過ぎる一般化は流石によーく考えてから書いた方がいいよね、とか。無理に一般化しなくても、特殊なケースだけでも十分楽しいですよ、とか。大体そんな。
(追記 07/10/15 13:42)---------------------------------------
余談だが、私は「世の中のライフハックの大半は、一般化病の症例の一つ」という偏見に取り付かれている。今のところ偏見が解ける気配がない。
(追記と訂正 07/10/15 18:48)-------------------------------
文中、「火浦功が十年何も書いてない」という記述がありますが、Webで調査を行ったところ、「火浦功が多分五年くらい何も書いてない」の誤りであることが分かりました。
全国の火浦功の皆さん、及びSF作家の皆さんに 深くお詫び申し上げます。
ところで「大怒涛」って文庫化されてないんですか?





