2017年04月12日

中国では「兆」の単位が時代や場合によって違ったりする、という話

なんか話題になっていて昔を思い出したので、ちょこっと書いてみます。常識だったりしたらすみません。

中国での「一億以上の大きな数」についての漢字の用法は昔からえらいごちゃついていて、その混乱を今でも結構引きずっている、という話です。

Wikipediaに分かりやすくまとまっていますのでちょっと引用してみます。

Wikipedia:命数法

万より大きい数詞の示す値には3種類あり、統一されていなかった。下数、中数、上数である。

(中略)

その後、千万の次を億とし、十億(10^9)、百億(10^10)と続けていく方法が考案された。これを中数(ちゅうすう)という。ただし、初期の数学書に示されている中数は万万(10^8)倍ごとに新たな名称をつける方式であった。すなわち、千億(10^11)、万億(10^12)、十万億(10^13)と続き、億の万万倍を兆(10^16)、兆の万万倍を京(10^24)とする。これを万万進という。後に、万倍ごと、すなわち万万を億、万億を兆(10^12)とする万進に移行した。

(中略)

中国では、近代まで万万進と万進が混用されたままであった。それに加えて、メートル法の接頭辞のメガ(10^6)に「兆」(下数における10^6)の字をあてたため、さらに混乱が生じた。今日では、「億」は中数の10^8、「兆」は下数の10^6の意味となっており、兆より億の方が大きくなっている。

これ、「今日では」っていうのが中国全域での一般的な用法と考えていいのかまでは分からないんですが、少なくとも技術用語では「兆」って書くとメガ、つまり10の6乗のことなんですよね。10兆って書いてあると10M、つまり1千万だったりします。なので、冒頭引用させていただいた画像は、MB単位のDL進行具合を表示しているんだ、ということになります。

これだけでも割とめんどーくさい話ですよね。

ただこれ、昔は更にえらい面倒なことになってまして、同じ「兆」という漢字が、時代によっては10の6乗だったり、10の16乗だったり、10の12乗だったりしたんです。これ、同時代ですら表記が混乱してたりしたんですよ。

以前書いたことがありますが、私、大学時代の専門は国語学でして、奈良時代やら平安時代の文書の研究などをしておりました。卒論のテーマは「唐大和上東征伝」の研究です。唐の大和上、つまり鑑真の渡来について書かれた文書でして、「天平の甍」の元ネタにもなっているんですが、まあ本題とは関係ないんで一旦置いておきます。

で、特に日本の国語学って漢文研究と切っても切れなかったりしますんで、中国の古文書もちょくちょく資料として触れたりするんですよ。なにせ昔の文書なんで、大数が出てくることなんて滅多にないんですが、たまーに出てくると「ここで言う兆がどの数え方で記載された兆なのか」ということを調査しなくてはならず、そこではやとちりや見当違いをやらかしてしまうと数字で考えて最大10の10乗分くらいずれたりするんで、大変な目に遭うわけです。場合によってはなんとなく推測するしかなかったりするんで一層カオスです。

中国史は専門でないのでよくわからないんですが、おそらく過去の研究では、「兆の意味を取り違えたせいで数字的に壮絶なずれが生じて、文章の解釈が訳わからないことになった」みたいなケースもあったんじゃないでしょうか。もしかすると、解釈が誤ったまま現在に伝えられている話、なんてのもあるのかも知れません。

ちなみに、中国では万万進という、8桁ごとに単位が変わっていく制度が採用されていた時期もあるので、小学生が良く使うような「いちまんおく」とか「十万兆」みたいな数字も、実際に単位として使われていたりしました。現在の中国語でどうなのかはよく知らないんですが、10の16乗を「万万億」と表記するのは一般的な表記だそうです。

兆、という単純な漢字でも、意外な罠をはらんでいるというだけのお話でした。


今日書きたいことはそれくらい。


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(追記 04/12 19:37)
いくつか声が挙がっていたので追記しますが、「命数法」のページの「仏典の数詞」のところは読んでみて容易に眩暈を起こせるので読み物としてちょっとお勧めです。不可説不可説転。



posted by しんざき at 19:16 | Comment(1) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする