ウマ娘のシナリオって、「トレーナーとウマ娘の恋愛」「トレーナーからウマ娘への恋愛的な意味での好意」をかなり注意深く匂い消ししているシナリオが多いです。もちろん、「男性トレーナーでも女性トレーナーでも同じシナリオが適用される」という事情もあるんでしょうが、これについては凄く注意深く作られてるなーと思ってまして。
ウマ娘からトレーナーへの好意は描写されるものの、それが徹頭徹尾「トレーナーとしての信頼感」に丸められているシナリオが、例えばシンボリルドルフとか、エアグルーヴとか、キングヘイローとか、オグリキャップとか。というかこのパターンが殆ど。
一方、「ウマ娘側は微妙に(恋愛的な意味も窺える)好意を滲ませた動きをするけれど、トレーナー側がそれに応じる/絆される気配を見せない」というシナリオもあります。
例えばマヤノトップガンシナリオ。マヤノトップガンはトレーナーへの好意を前面に押し出した行動をするんですが、それに対して殆どのパターンでトレーナーが抑制的な反応をします。代表的なところが温泉旅行で、ここでは「娘を旅行に連れてきた父親か…?」って感じのムーブになってます。
カレンチャンシナリオもそれに近く、トレーナーは時折催眠電波でも受けたのかって感じの認知の吹っ飛び方を見せるんですが、それでもカレンチャンのカワイイムーブに対して、全体的には非常に抑制された反応を返しています。クリスマスイベントとかその代表例。
アグネスタキオンシナリオは、表面上のテイストにまぎれて随所にタキオンからの好意が描写されるんですが、それに対してトレーナーは徹底的にモルモットムーブをしており、恋愛要素の匂い消しをしています。
ちょっと特殊なのがスーパークリークシナリオで、クリークシナリオにおけるトレーナー-ウマ娘関係は既に子どもが二人くらいいるんじゃないかっていう進捗度なんで逆にあまり恋愛要素ない気がするんですが、まあスーパークリークシナリオはある意味カレンチャン級の電波展開なので一旦おいておくとして、まあとにかく「どのシナリオでも、基本的にはトレーナーは(ウマ娘からの好意に対して)非常に抑制的な会話や行動をする」というのは大体共通しているように思います。
で、それに対してナイスネイチャシナリオなんですけど、一言で言うと「このシナリオだけ、トレーナー側が妙に思わせ振り」なんですよ。
象徴的な部分がここなんですけど、
これ、実際には「ネイチャの頑張る姿が好き」という話で、ネイチャはそれを盛大に勘違いして慌ててしまう、という場面なんですが、ここ、他のシナリオからすごーく浮いてると思いません?
私、最初読んだ時「ええええこのトレーナーこんな誤解を招くような発言するキャラクターだっけ!?」って思ったんですよ。他のシナリオの、徹頭徹尾感情をコントロール出来ている、ある意味仙人みたいなトレーナーだったら間違いなくこんな言い方しません。これ絶対マヤノのトレーナーと同一人物じゃねえ。
他の部分でも、例えば初詣で「君のことをお願いしてた」とか、勝負服イベントでネイチャの手料理を食べた時とか、「トレーナーからネイチャへの好意」を微妙に匂わせるシナリオが多いんですよ。ネイチャだけ異様に多い。
で、これ、多分ネイチャだけ「恋愛ありスポーツもの少女漫画シナリオ」になってるからなんですよね。
ネイチャシナリオってスポ魂少女漫画シナリオとしてはもう王道中の王道で、
・頑張ってもいまいち止まり、という自分の力量にコンプレックスを持っている主人公(ヒロイン)
・キラキラしているライバル
・主人公をひたむきに支えて、励まし続けてくれるトレーナー
・トレーナーや周囲の声援を受けて、ようやく前を向くことが出来た主人公
・最後の最後に求め続けた輝きを手に入れる
って考えると、これ以上ないくらい少女漫画展開なんです。トレーナーの動き方も、そりゃもうこんだけされたら主人公落ちるわって感じのド恋愛ムーブ。
こうして考えると、「コーチが思わせぶりな発言をするけれど実はそれが(その場では)誤解」というのも、少女漫画としてはド定番の展開なんですよね。ヒロインがやきもきしているところを見て、そこに感情移入するのがスポ魂恋愛少女漫画の一つの楽しみ方ですので、そこが丁寧になぞられたシナリオがネイチャシナリオだなーと。
で、ウマ娘開発陣の本当に上手いところは、このシナリオをナイスネイチャに適用したところだよなーと。史実でも歴史的なブロンズコレクターとして知られ、走っても走ってもGIをとれなかった、それでもファンたちに愛され続けたナイスネイチャ。そのナイスネイチャにこういうシナリオを用意したらそりゃ史実も合わせてピタっとハマるわと。(ナイスネイチャは、史実でも担当厩務員さんに非常に懐いていたことでも知られていました)
史実では最後まで輝き切れなかったナイスネイチャを、トレーナーの手で輝かせる。その下敷きとして選ばれたのが少女漫画的スポ魂恋愛展開。そりゃこれだけ完成度高いシナリオになるよなーと、ライターさんの上手さに感心する次第なんです。
小倉記念からこつこつ作ってた手作りトロフィーが、最後にネイチャに前を向かせるキーになる展開とかもうすごーく好き。
テイオーやマックイーン、ライアンとかのサブキャラも、シナリオ上凄くいい味出してますよね。
ネイチャシナリオではヒール寄りだけど、決してただ強いだけではなく、傷つきもするし悩んだりもするテイオー。ライバルでもあるけれど、ネイチャの成長を見守ってくれる仲間でもあるメジロライアンとメジロマックイーン。メジロライアンが一番頼もしいシナリオがネイチャシナリオだと思います。ネイチャシナリオでライアン株が爆上がりしました。
あと、さり気に同室設定のマーベラスサンデーがネイチャと仲良さそうなのもとても素晴らしいと思います。マーベラスサンデー早く育成キャラにして欲しい。
ちなみにもう一点、ナイスネイチャシナリオの少女漫画っぽい好きなところをあげると、
これ、シニアの夏合宿が始まる場面なんですけど、ここで「トレーナーを見つめて沈黙するネイチャ」っていう描写が入るところがまた素晴らしいですよね…。この直前に「同室のマーベラスサンデーから、トレーナーの手作りトロフィーを嬉しそうに見つめていたことを指摘される」という場面があって、それを受けてのこの沈黙なわけなんですけど、こういう「間」の作り方も滅茶苦茶好き。
まあなんにせよ、「ナイスネイチャシナリオいいですよね…」「いい……」っていうことだけがテーマで、他に書きたいことがあるわけではありませんのでよろしくお願いします。
今日書きたいことはそれくらいです。