長男がまた高校の図書室で借りてきて、「これは読んだ方がいい」と言われたので読んでみたら大変面白かったです。
テーマとしては「日本神話も絡んだ輪廻転生もの」と言ってしまってもいいのかも知れないのですが、展開されるストーリーは痛快な現代もので、「カレー屋でアルバイトをしている女性二人組の日常生活」からお話が始まり、その後あっちこっちに話が吹っ飛ぶ大騒動が始まります。
物語のキーになるのは「徒名草文通録」という一冊の古書であり、主人公である杏が同居人の祥子に「徒名草文通録を盗み出す」という依頼をするところから始まり、あれよあれよという間に平安過去から現在、人間から神様まで、色んなスケールで事件が波及していきます。
「階段島」と同様、河野裕先生の得意技なのかも知れないのですが、「一見すると大したことが起きていないように見えるのに、気が付くといつの間にか話がとんでもなく複雑に広がっており、最後は散らかった要素を隅々まで回収し切って終わる」という展開、要は「話の広げ方と畳み方」がとにかく物凄く上手いなーと。
読者が気付かないうちに物語の要点を大体提示されており、後から「ああ、これこういうことだったのか!!」をこれでもかこれでもかと叩きつけていくの、ストーリーテリングとして超ハイレベルな手法ではないでしょうか。
お話としては、基盤部分のシナリオの底堅い面白さを背景に、その上に乗っかっているキャラクターたちが誰も彼も大変魅力的で、「このキャラこんな風に動いてたのか……」というのを後から追っかけていくだけでも十分楽しい、ということも言えるかと思いました。
以下は若干のネタバレも混じる感想箇条書きです。未読の方はお気をつけください。一応大きなネタバレは避けますが、一応折りたたみます。
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