2004年11月13日

あるゴーストライターの日常

広告理論、というものをご存知だろうか。

筆者は昔ゴーストライターなどという酔狂なアルバイトをしていたことがあって、およそ文筆業の最下層にて、結構様々な仕事をやらせてもらった。
ゴーストライターというのは基本的に物書きの下請けで、与えられた材料を元に注文通りのものを仕上げるのが仕事である。例えば連載物の穴を埋める場合であれば、語尾・文体まで指定された通りのものを書かなくてはいけない。それが出来なくては金にはならぬ。そこには創造性が割って入る余地はあまりない。純粋に技術的な仕事である。

一方、筆者が出入りさせてもらっていた出版社はそこ自体業界の下請けで、いわゆるゴーストの仕事以外にも、摩訶不思議な文筆依頼が幾つもきていた。
例えば、怪しげな新製品の解説文の依頼であるとか。
例えば、どこかの商用サイトのメールマガジンの巻頭コラムであるとか。

笑えるのが女性誌の三者対談形式のコラムの代筆などという仕事で、とある編集者の人が担当していたのだが。
「いやーー、すっかり女子高生の言葉使いに詳しくなっちゃったよーー」
などと、にこやかに笑いながら三人分の少女言葉を一人でひねり出す無骨な3×歳独身体育会系の姿に、思わず寒気とか乾いた笑いとか、色々なものが背筋を走る会社であった。

私が三度程担当させてもらった仕事に、「通販の商品のアオリ文」というものがあった。
ここでようやく一行目の文章にたどり着くのだが、広告というものには、様々な「売る為の」文章のノウハウというものが存在する。電車の中の吊り広告にも、テレビCMにも新聞の一面広告にも色々な大系がある。

細かい話をしていると余りにも長くなってしまうので別項に譲るが、商品の宣伝文句の法則の一つに、「良く知られた専門用語を使え」というものがあった。
専門用語というのがポイントで、意味はいまいちわからないけれど、なんとなく聞いたことがある、知ってはいる、という単語を混ぜておく。勿論細かい意味は説明しない。これだけで面白い様に売上が伸びる、ということなのである。

今ではすっかり定着してしまったが、一昔前には「マイナスイオン」というものが流行った。
「活性酸素」とか「界面活性剤」などというのも良く聞く言葉だ。意味は知らないが。
例示をすればキリがないのだが、科学的な言葉もあれば殆ど信仰でしかない謳い文句もあり、根拠があるものもあれば驚く程無根拠な言葉もある。探してみると色々な検証サイトがあって面白い。
まあ一つ言えるのは、「良く知らない専門用語を観たらまず身構えましょう」ということであり、自分で書いたこともある立場としては、警戒心に一層の磨きがかかりもする、という話なのである。


いや、今回のこの長々しいエントリーを一言で総括すると、通販で買った新しいルータが全然認証しねえぞふざけんな金返せってことなのだが。何だよGBICって。
posted by しんざき at 14:28 | Comment(0) | TrackBack(1) | ゴーストライター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック

あるゴーストライターの日常・五徹目
Excerpt: 前回の続き。遠い遠いお空の向こうでの出来事と思われていたトラブルが、物凄い勢いで私の頭上に落っこちてきたところからの話である。 I先生の代筆を受けるに至った顛末に関しては、こちらもご併読頂きたい。 ..
Weblog: 不倒城
Tracked: 2005-01-13 18:18