2008年08月19日

レトロゲーム万里を往く その81 メタルマックス2

…押してもいいんだぜ!懐かしいドラム缶をよ!

(メタルマックス2 デスクルス看守の発言より引用)



当然話はこれからな訳だ。


かつてゲーム業界に、データイーストという異能集団があった。


異能とかなんとかいうといかにも中二病っぽい大仰な言い方になるが、彼らに限っては異能と言う他に言葉が見つからない。

彼らの作るゲームの特徴は、たった一言で表現出来る。

「自重を知らないゲーム作り」

データイーストは、一方ではB-WINGやバルダーダッシュ、ウルフファングやマジカルドロップの様な良作・名作を生み出す傍ら、もう一方ではカルノフやチェルノブ、トリオ・ザ・パンチやザ・グレートラグタイムショーの様な、「普通のメーカーなら思いついても作らない」凄まじいゲームを世に送り出し続けた。彼らの凄いところは、いわゆるイロモノゲームのみに留まらず、例えばヘラクレスの栄光や神宮寺三郎といった「まともな」名作群にも、色濃く彼らの「味」を残し続けたことだろう。

100点満点な優等生ゲームは一本たりとも存在しないが、どれ一つをとってもデータイーストの味わいを感じられないゲームはない。彼らはある意味、セガ以上に自分達の「味」を知り尽くしていたのかも知れない。

メタルマックスに含まれる「鉄」と「油」の臭いは、紛れもなく、データイーストでなければ表現し得ない味だったのである。


メタルマックス2。近未来風RPG。1993年3月、SFCにてデータイーストより発売。前作のシステムをひとかけらも取りこぼすことなく、その「とんがった」ゲーム性と世界観を全面にわたって押し出した、この作品こそがメタルマックスシリーズを確立したと言っていい。

戦車を中心にしたゲームシステムはもとより、グラップラー四天王やビイハブ船長、ガルシアやバトー博士やピチピチブラザーズといった、前作のウルフに勝るとも劣らない「濃い」キャラクター達が、メタルマックスという世界観に圧倒的な色づけをしたと言えるだろう。


ゲーム的には、例えばLOVEマシンであるとか、4種類から選んで戦車を自作出来るシステムであるとか、姉ちゃんでなくイリットであることなどが前作との大きな違いとして挙げられる。が、それより何より、データイーストならではの自重してなさというものが大幅にパワーアップしていることこそ、この作品をメタルマックスたらしめているということが出来るだろう。

メタルマックスシリーズ、特に「2」がどれだけ自重していないゲームか。今回はこれをメインにして話を進めてみたいと思う。


・死体が自重してない。

いきなり細かい話になるが、多分メタルマックスの殺伐さを分かりやすく表現している要素の一つだと思うので、軽く触れておこう。

RPGにおける「死」の取り扱いというものは、結構面白いテーマである。ざっくりといえば「やられた状態」というものをどう扱うか、「戦闘不能」や「死」というものをどう扱っているかという話で、たとえばドラクエであれば死んだ仲間は棺おけで表現されるし、FFでは単に「戦闘不能」になり、フィールド画面ではそもそも表示されない。この辺は、「死」がかなりの度合い隠蔽されている例だろう。

で、メタルマックスの場合どうなのかという話なのだが、端的に言ってぜんっぜん隠蔽されてねえ。

仲間の死体はもうまるっきりそのまんま、思いっきりどざえもん風の「死体」というグラフィックでずりずりと引きずられていくし、海やダンジョンの周辺に死体がぷかぷか浮いていたりする。ソルジャーは仲間になる前に何度か死体の状態で主人公と対面していたりするし、テッドブロイラー様の火炎放射では容赦なく黒焦げになったりするし、ドクターミンチに話かけると「なんだこの死体は!まだ生きとるじゃないか!」とか怒られたりする。この殺伐っぷりは流石データイーストとしか言い様がない。

一事が万事で、メタルマックスの世界観は「殺伐」という一語で全般が統一されている、ということがまずは言えるだろう。


・台詞が自重してない。

上記の「殺伐」っぷりを強烈にアシストしているのが、頭の先から足の先まで漏れなく殺伐としている、NPC軍団の台詞である。言わずと知れたデスクルスの住人達を始めとして、どの町もこの町も乾燥した台詞をはくNPC、張り紙、スワン住人、マリリンなどで埋め尽くされている。

ただフリーズドライであるばかりでなく、時にはおバカな台詞、時には寂漠とした台詞、時には狂気に満ちた台詞が入り乱れて、「メタルマックス」という世界観を形成していると言うべきだろう。一例を挙げる以上の説明はない。


「あんたは強え! 強えヤツはただしい!」

「あけろ あけろ!ひひひ!せかいじゅうのドアというドアを!きんこというきんこを!」

「しにてェ・・・・。」

「グラップラーのやつらは野バスをころすばかりで、じぶんのクルマにすることはできなかったのさ!」

「これで 死ねる・・・・ あんしんして のう!」

「キャタピラにならひかれて死んでもいいわ!」


「2」を遊んだ人にとってはなじみのある台詞ばかりだろう。スーパーファミコンのRPGという畑で、「しゅうじんはクソ!かんしゅはかみさま!」などという台詞を一片のためらいもなくモニターに表示してみせた、データイーストの自重の無さに戦慄する他ない。

勿論台詞だけでなく展開も自重していない訳で、特にドラム缶とかドラム缶とかドラム缶とか、殆ど「刷り込み」というレベルでデスクルスの存在をプレイヤーの頭に焼き付けた、あの辺のイベントは余人では到底ゲーム化出来なかったであろう。その他、スカンクス戦→モンキーセンターの一連の展開とか、テッドブロイラーの顔見せ→決戦とか、エバ博士とカリョストロにまつわる色々であるとか、どれをとっても「浮いてない」ケレン味たっぷりのイベントばかりである。

そんな中、殆ど唯一に近いオアシスであるイリットに転ぶハンターが多いのは当然ではあるのだが、それでもあの弟さんは地雷を配置し過ぎなので誰かどうにかしてください。どんだけ結婚までの展開が速いのかと。


・戦闘が自重してない。

特にバランスの話であるのだが。「2」の戦闘バランスは前作に輪をかけて絶妙であると思う。崩壊しそうで崩壊していない、工夫次第で楽にもなればハードにもなる、強大火力の乱れ撃ち。

始めの頃はまるで歯が立たなかった賞金首が、頭を捻って用意した装備で雑魚と化す、この極端さもこのゲーム独自のものだったと思う。今となっては、サイゴンに苦戦していた日々が遠い。

「ハンター一人旅」であるとか「戦車無しプレイ」であるとか、様々な縛りプレイが隆盛した要因でもあったろう。


前作に比べて人間戦闘がハードになっていることも一つの要素だ。マダム・マッスルやアダムアントもさることながら、最後の最後に待ち構える因縁の賞金首・テッドブロイラー。これは燃える(二つの意味で)。テッド様には、裏技など使わず、是非正面から生身で挑むべきであると、私は強く主張したい。


余談になるが、戦車の選択、及び戦車に積む装備の選り取りは、「2」では前作を数段圧して面白くなっていると思う。

バトー博士の研究所で4種類の戦車が自作出来るのも一つだが、レオパルトの様なウルフの様ないかにも戦車戦車とした戦車から、いわずと知れた野バスやバギーの様な「クルマ」まで、全てが精細なグラフィックで装備を表示してくれる。スタイルにこだわるも良し、攻撃力にこだわるも良し、S=Eにこだわるも良し、様々な「こだわり」をプレイヤーに提供してくれるという意味では、このゲームは当時出色の出来だったと思う。

「見た目にこだわって」195ミリバーストを積むかどうかが論争になるという、この様なゲームが当時他にあっただろうか。ちなみに私自身は、「大砲とS=Eは全車両違うものを使う」「ウルフには177ミリアモルフ」というスタンダードなんだかそうでもないんだかよく分からないこだわりを現在に至るまで保持しており、一方でサウルス砲を使ったことは一回もありませんすいません。私のパーティはレオパルド、ウルフ、ゲパルトなんですけど、一体どれに載せればいいんスかアレ。

まあ、ゲームに慣れてしまうとあまり大砲を買う必要自体がなくなってしまったりするのだが、それはご愛嬌ということで。155ミリスパルクはちょっと優秀過ぎるよなあ。


・ポチが自重してない。

「すきな人」の基準が「最後にえさをくれた人」なんですけど、食欲で生きているこの爆裂おばかドッグを誰かどうにかしてください。あと、つやつやしなくていいから戦闘レベルを上げろっていっといてください。



その他、数々のBGMからグラフィック、OPからEDに至るまで、全てがメタルマックス2を形成している欠かさざる要素である為に、いくら語っても話は終わらないのだが。取り敢えず言えることは、このゲームってSFCの数あるRPGの中でも指折りの「BGMがマッチしまくっているゲーム」ですよねー。

と、いくら何でもエントリーが長くなり過ぎたので、取り敢えず今回はこの辺で締めておきたいと思う。


データイーストは残念ながら倒産してしまったが、彼らの「残り香」とでも言うべきものは、様々なメーカーに移り住んでいる。再びデコゲーの味わいに出会えることを祈るのみ、である。
posted by しんざき at 23:02 | Comment(6) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
ここまで語られたのなら、ぜひゲームボーイアドバンスのリメイク版についても一家言ほしいですね
Posted by un at 2008年08月20日 19:00
>unさん
うーーん。アレはあんまり冷静な視点で言及出来そうにないので、やめておきます。
Posted by しんざき at 2008年08月22日 21:48
BGMも本当に良く出来てる上に、世界観に合ってますよね
ボス戦や雑魚戦、フィールド等、今でも脳内再生出来る曲ばかりです
Posted by 通りすがりの人 at 2008年08月26日 14:40
実はワタシ最近2をやったのですが、エかったですねえ。音楽も世界もシナリオも…音楽では「Dr.ミンチに会いましょう」の軽妙さと賞金首バトルのハラハラ感が好きでございました。

印象に残ってんのはスワンですかねェ。あのイヤミな元同僚の末路。はなむけの言葉が「大法螺吹くにしても念が入ってたよな! ヤローの身体は確かに改造してあったもんなァ!」素晴らしすぎて涙も出ねェっすな。

…悪人も居れば善人も居る、ヘタレも居れば反骨の人も居る。しかし全員がこの世界的には「正しい」野郎ばかり。んー、エエ話でしたなあ。
Posted by おやじノ介 at 2008年08月27日 23:08
>通りすがりの人さん
ボス戦曲の盛り上がりは異常ですよね。村のちょっと寂しそうなBGMとかもいいんですが。

>おやじノ介さん
>素晴らしすぎて涙も出ねェっすな。
スワン住人の一言一言が、メタルマックス世界の素晴らしい殺伐っぷりを表現しまくっていたと思います。下手するとデスクルス以上に。

>しかし全員がこの世界的には「正しい」野郎ばかり。んー、エエ話でしたなあ。
心から同感です。
Posted by しんざき at 2008年08月28日 12:02
わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
Posted by 右から左へうけ流すーー at 2011年02月10日 15:34
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック