2008年08月26日

いい加減な評論家というのは、恐るべき高スキルの職業だと思う。

だって、彼らは自分の唯一の売り物である「いい加減な評論」をお金に換えなくてはいけないのですよ?こりゃすげえ。ドラクエでいえばひのきの棒一本でだいまじんと向かい合う様なもんで、少なくとも私には無理だ。

いい加減な評論と鋭い評論、普通に考えれば前者の方が価値が低いのは当たり前の話であり、いい加減な評論の売り手は「価値の低さ」を何か別の所で補わなくてはいけない。それが例えば人脈であり、コネな訳であって、大抵の場合「人脈や立場を生かす力」が高い評論家の方が、「鋭い文章を書く力」が高い評論家よりも遥かに収入が多い。これが評論家という職業のダメなところであり、恐ろしいところでもある。ちなみに、野球の解説もそれに準ずる。


最低映画評論家の福本次郎
見映画評論


私は福本次郎という人をよく知らないが、この人の評論が上記エントリーで挙げられている通りダメなものだとしたら、この評論でお金を得ているというのはある意味タダゴトではない。

彼には少なくとも、自分の記事を商業誌その他に掲載させるだけのコネあるいは人脈と、自分の評論のダメさ加減に気付かない編集者を選びとる人物眼(雑誌に載せる場合だが)と、細かい検証抜きの勢いで取り敢えず物量揃った評論を書き上げるテンションがあることになる。これは既に才能だ。

世の中、誠意ある視点で面白い書評や鋭い評論を書き続けている「才能溢れるアマチュア」がどれだけいることか。しかしその一方、「才能溢れるアマチュア」程にはレベルの高くない評論をテキトーに書いている「テキトーなプロ」も業界にはひしめいており、そのプロ達はテキトーに食えているのである。コネや人脈のなんと不公平なことだろうか。


まあ実際の所、「評論家」というのは他の仕事で既に十分な収入、あるいは人脈を築いている人が天下り的に著す場合と、何らかの別の仕事を足がかりにコネで書き始めて口を糊する場合の2ルートが大半だと思う。つまり、「評論家」が食べていくのに重要なのは人脈や立場やコネであって、正直文章の内容ではない。

特に前者の場合、編集のチェックなどというものは無きに等しいことも結構あり、一般雑誌の書評スペースに時として恐るべきとんちんかんな内容が掲載されるのはその為だ。専門誌でない限り、雑誌の一隅にちょちょっと掲載されている書評やコラムなどにそれ程の労力が費やされる筈はなく、編集さんも誤字脱字チェックくらいしかしない場合がままある。

他人事の様に書いているが、私自身、いー加減な内容の書評やコンテンツ評をこっそり上梓したことの一度や二度はあるに違いない。昔の話だけど。

ちなみに、評論の中身が時として軽視されがちになる理由というのは、「評論」というものが本質的に抱えている弱点でもあると思う。評論とは、「既に存在するコンテンツ」に対して、「著者の視点で」論評を加えるものである。ここに「コンテンツをどう受け取るかは人それぞれ」という前提が加わってしまうと、「いい評論」「悪い評論」というものは極端に評価しにくくなってしまうのだ。

ぶっちゃけた話、「評論を書くのに一番重要なのはフィーリング」などとのたまう評論家は今でも決して珍しくない。というか私が知っているだけでも二人いる。

恐らく引用エントリーの評論の場合、そもそも真面目に当該タイトルを観ていないのではないかと私は予想する。それでも、立場がある人が書いたものであれば、株式会社が運営しているフォーマルなページに載るのだ。載ってしまうのだ。なんてこった。


とはいえ、最近はWeb界隈の事情も変わっており、余りにいー加減な評論がまかり通っていれば、きちんと論難してくれる人も出てくる。こういった環境が、徐々に「鋭いけれど人脈がない評論家」をクローズアップしていってくれることを願って已まない。


ところで、私もリンク先を読んだ。
見映画批評:ゼア・ウィル・ビー・ブラッド


ちょ。
posted by しんざき at 15:56 | Comment(11) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
>>恐らく引用エントリーの評論の場合、そもそも真面目に当該タイトルを観ていないのではないかと私は予想する。
私はね、多分この人、ある種の発達傷害と予想する。
言語以外の内容を受け取れない、生まれつきの障害の人じゃないかな?言語も字義どおり、辞書どおりの解釈をする人が100人に1人はいると言われてるんだけど。

自閉症スペクトラムとかアスペルガーとか言葉だけでも聞いたことない?劣っているわけではなくて、文化が違う、見方が違うのさ。天然の人って本当に天然なのさ。思考回路が違うのさ。アインシュタインや、ビルゲイツとかの仲間さ。

仮に、言外の意味を感じても、言葉の意味を優先させる正直者なのさ。で、比喩の殆どや状況がまったくわからない人も大勢いる。目に見えないけど、もしかしたら本人も気づいていないけど、とっても繊細だったり、鈍感だったりアンバランスな面白い人。

少し好意的に見て欲しいな
Posted by アスピー at 2008年08月28日 10:33
>アスピーさん
どうなんでしょ。アスペや発達障害は勿論知ってますが、書いてる字面だけからだと天然なんだかすげえテキトーなんだかよく分からない様な気もします。

>少し好意的に見て欲しいな

えー、好意的ですかそれ?
Posted by しんざき at 2008年08月28日 11:30
なかなか面白いエントリですね
私は、商業誌の評論は読み物だと思ってます。だから、いくら的確であっても読んでてつまらない評論は売れないのではないかと。学術誌は読み物としては最低だとよく言われますが、そういうことじゃないかなあ。
つまらない評論っていうのは、突っ込みすらされないものですよ。突っ込まれてる時点で興味をもたれているので、読み物としては勝ちじゃないでしょうか。
Posted by しの at 2008年08月29日 03:13
>しのさん
「的確なだけでは読んでてつまらない」というのはまったくおっしゃる通りだと思います。
ただ、あまりにいい加減で突っ込まれる評論、というのはやっぱり面白い読み物とは言えない様な気がします。それは突っ込んでるテキストが面白いのであって。突っ込みがないボケはいまいちパッとしませんよね。

テキトーでかつ面白い評論(というか評論家)って結構少ないんじゃないかなあ。そういう芸風の人も稀にいますけど。
Posted by しんざき at 2008年08月29日 07:14
評論家がいつも的確な評論が出来るとは限らない
ある分野では的確でも別な分野ではダメだとか

昔は良かったけど今はダメになったとか、

その場合、評論家がコネと人脈があってもおかしくない。
Posted by at 2008年08月30日 14:36
>名無しさん
>ある分野では的確でも別な分野ではダメだとか

一般的にはおっしゃる通りだと思いますけど、ある分野で的確な評論が出来る人って、だいたいどんな分野でも的確な評論を書くことが多いですよ。
「知識不足の状態でいい加減なことを書かない」という姿勢自体が、的確な評論を書く為の一つの要件ですから。
Posted by しんざき at 2008年09月02日 13:53
ド畜生掲示板
http://dochikushow.8.bbs.fc2.com/
ここから来て
売春窟に生まれついて→未来を写した子どもたち - ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記
http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20080920

ここに行きました。

映画評論 - てんてけ
2008/09/20 (Sat) 21:27:21
町山さんの意見ってどこかで読んだなぁと思っていたら、ここでした。
同じ事を思うのですね。
http://mubou.seesaa.net/article/105455989.html


まあ、ある意味その業界の腐敗度を測る一番適当な指標に近いんでしょうね。
その意味では批評よりもその批評を持ってよしとしている業界のおかしさと、それで無視してしまえる消費者の無知とレベルとそれ自体への無関心をそのまま出しているんではないかと。

あなたが町山氏の意見を見てどう思うか、と併せて、
あなたとそこの現場の業界人の意見を町山氏がどう思うのかも知りたいものです。

Posted by まあ at 2008年09月21日 13:31
島国大和のド畜生 タダの寄生虫を羨ましがる
http://dochikushow.blog3.fc2.com/blog-entry-918.html

わすれていました。いけませんねえ
Posted by まあ at 2008年09月21日 13:34
>まあさん
>町山さんの意見ってどこかで読んだなぁと思っていたら、ここでした。
同じ事を思うのですね。

んー、そうですね。評論家っていうのは色んな意味で特殊な職業なので、この業界の人(私は今は違う業界ですが)なら多かれ少なかれ同じ様なことを考えているんじゃないでしょうか。まあ、私はあんまり直截的な表現はしませんでしたけど。

どんな風に「保護」されるかを目の前で見ていると、色々と、ねえ。これはまたおいおい書こうかなーと思っています。

一応留保しておきますと、鋭い評論を書く人も勿論いますよ。

>その意味では批評よりもその批評を持ってよしとしている業界のおかしさと、それで無視してしまえる消費者の無知とレベルとそれ自体への無関心をそのまま出しているんではないかと。

こう言っちゃなんですけど、「毒にも薬にもならないコンテンツ」というのが必要とされている向きというものもあると思います。そういう意味では、毒にも薬にもならないことを書く才能、ってのも世の中には存在するのかなー。とか。
Posted by しんざき at 2008年09月21日 19:18
ウォーリーの評論を読んで「なんじゃコイツ!?」
と思い、確かめるために更にポニョの評論を読みました。
そこで福本氏という評論家がいかにスゴイかを確信しました。
んで、ググったら案の定www

わざわざ歪曲した解釈をしてまで彼を擁護する人って..なんていい人たち..

あ、本人だったらサーセン。乙。
Posted by DO at 2009年01月05日 19:34
>DOさん
え、これ↑擁護に見えましたか?

だとするとDOさんの方がずっといい人だと思いますが。
Posted by しんざき at 2009年01月09日 14:56
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