2008年09月09日

我々はお年寄りを舐め過ぎているんじゃないだろうか

主にWeb制作とかのお話。

特にまとまった考えでもないので、まあつらつらと書く。

例えば「高齢者富裕層をターゲットにしましょう」という会社の大方針が決まった場合、「お年寄りの方」にアピールする方法が賑やかに俎上に上がる。当然、Webページのデザインとか、インターネットに不慣れな人をWebページに呼び込む方法、みたいなものもたくさん話題に挙がる。

で、それらを話し合う際の「当然の前提」というものを、誰も疑おうとはしない。つまり、「目が悪い、細かい字は読めない、インターネットに不慣れ、パソコンど素人、Googleなんて知らない」という「いわゆるお年寄り像」だ。


それがおかしい、という訳ではない。マーケティングというものは、ターゲット層をある程度一般化しないといつまで経っても方針が決まらない。「いわゆるお年寄り」という一般的な層を想定した時、その最大公約数的な姿が上記の様なものであることは確かなのかも知れない。複雑なWebページを読んでくれるユーザーなど殆どいない、というのも確かなのだろうし、ページが読みやすくシンプルであることに越したことはないだろう。


いいたいことは二点ある。


・「いわゆるお年寄り」像が固定化している余り、見せ方の発想が全然膨らまない。スタートラインが「素人向けページ」から動かず、コンテンツもそこから飛躍しない。

・「スペックが高いお年寄り」の存在が全く視野に入っていない。



多分5、6年は前になるが、某区の生涯学習センターというところで、高齢者の方向けのパソコン教室という仕事をやったことがある。20人くらいの昭和初期〜中期生まれの人達に、パソコンの使い方やネットの読み方をお教えする仕事だ。その時間の大半は、「いわゆるお年寄り」像を確認する仕事で占められていた。都市伝説通りというか、マウスを空中に向かって動かす人もいれば、モニターのスイッチをPCの電源と勘違いしている人もいた。

ただ、その時同時に感じたのは、「俺たちって結構お年寄りを舐めているのかも」という漠然とした違和感だ。

彼らの目は確かに幾分焦点を合わせにくいかも知れないし、耳は幾分遠いかも知れないが、そこには長年新聞に挟まれた広告を眺めてきた経験が積もっている。コンテンツを読みこむ鋭い視点をもっている人も中にはいた。教えれば教えるだけ、こちらが驚く様な速度で技術を習得する人も時にはいた。


そして、彼らの目には見えるのだ。「初心者向けなだけで中身の薄いWebページ」の、その薄さに至ったプロセスが。


生涯学習センターで出会ったおじいちゃんの話をしてみよう。

A作さんという、70手前のおじいちゃんがいた。それこそキーボードの触り方もよくわからないし、WebページのURLを「えいちてぃーてぃーぴー」と読み上げながらでないと打ち込めない様な奇癖をもった人でもあったが、彼にGoogleの存在を教えた時、私はちょっと面食らった。彼は検索エンジンというものの存在を知るや、真っ先に「他の検索エンジン」についても知りたがったのだ。

「だってさ、これ、電話帳みたいなもんでしょ。で、作ってんの会社でしょ」

「ええ、まあ、そうですね」

「ならさ、お金次第で上の方に載ったり載らなかったりするんじゃないの。会社に都合の悪いことは載らなかったりとかさ」


SEOだのGoogle八分だのという言葉が一般化する、遥か昔の話である。


我々は、「いわゆるお年寄り像」を想定する時、例えば振り込め詐欺にひっかかる様な人の良いおばあちゃん、リテラシーなどというものは欠片ももっていないメディア音痴おじいちゃんのイメージを強く持ちすぎなんじゃないか、と、私はそれ以来なんとなく思う様になった。そしてそのイメージが、広告を作る際の要所要所に紛れこんで、知らず知らずの内に「シンプル過ぎて薄いページ」を作らせていたりしないか、となんとなく思う様になった。


「こんなところまで読んでくれないだろうし」というイメージの元、見せ方を深く考えることもせずに省略された大量の文言の存在を、見抜く人は見抜く。シンプライズと手抜きは全く違うものであることを、知っている人は知っている。

「いわゆるお年寄り」が最新技術に疎いことは確かなのだろう。だが、それを全人格にまで当てはめてそこから発想を飛躍させられないとすれば、目が曇っているのはこちらの方かも知れない。

posted by しんざき at 11:24 | Comment(7) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
うちの祖母は80を超えましたが、
Vistaを使い管理してるアパートの家賃収入を
Excelで管理し、
WORDで自前の名刺を作って、麻雀ゲームを買って来て遊んでおります。


最近思うのは、しっかりしていた両親が幼稚化しているように感じること。
いわゆる老化なのか。
判断力が確かに落ちてるし、些細なことで機嫌悪くなるし。
それこそ「いわゆるお年寄り」像へと繋がるのかな。

まぁそれはそれとして、事象として不思議でならない。
老化とはどうしてこのようなカタチなんだろう。
ただ体が弱っていくだけではダメなんだろうか?

なんだか生命論みたいになっちゃった。
Posted by bari at 2008年09月09日 12:55
"ハイスペックなお年寄り"というターゲット選定は新鮮で面白いですね。

確かに"いわゆるお年より像"の方は比率としては多いですが、
ニッチ商圏としてこれから注目が集まっていく層になりそうです。
(あるいは、すでに目ざとい会社はターゲッティングしているかも)
Posted by hasegawa at 2008年09月09日 17:08
知識とか思考では経験には勝てないって話に読んだ。
Posted by * at 2008年09月10日 04:39
その侮れないお年寄り達は、「パソコンのぱの字から」のような年寄り初心者向けの本を書こうとしないんですよね。
落語に出てくるご隠居さんのような格式な人は、字が読めて本をたくさん読んで得た知識を日々楽しんでいますが、語る相手は熊さん八っつぁんであって、頑固蒙昧なお年寄りは華麗にスルー。
Posted by てんてけ at 2008年09月10日 22:36
>bariさん
>老化とはどうしてこのようなカタチなんだろう。
>ただ体が弱っていくだけではダメなんだろうか?

多分、それはそれで色々考えられるテーマなんだと思います。その内考えてみたいなあと思いました。

>hasegawaさん
>"ハイスペックなお年寄り"というターゲット選定は新鮮で面白いですね。

なんか最近、意外とニッチでもないんじゃないかなあ、と思う様になりました。

>*さん
どうなんだろ。経験は確かに強いですけど、「お年寄り最強」と思ってる訳じゃないですよ。

うちの会社の企画とか見てると、ちょっと頭が固い様に見えたんで。

>てんてけさん
>その侮れないお年寄り達は、「パソコンのぱの字から」のような年寄り初心者向けの本を書こうとしないんですよね。

「教わる」ということに対する欲求と、「教える」ということに対する欲求、両方を摩滅させずに持ち続けているお年寄りは、多分凄く少ないんじゃないかと思います。
Posted by しんざき at 2008年09月11日 12:50
遅レスながら、記事を見ていてこの話を思い出しました。
84歳のvipper
http://workingnews.blog117.fc2.com/blog-entry-616.html
まあ、この話は嘘かまことかは分かりませんがネットリテラシーの高い年配の方はいらっしゃると思います。どんな年でも向上欲の高い方はいらっしゃいますしねー。自分もそうでありたいなと思います。
Posted by akix at 2008年09月13日 22:22
>akixさん
ああ、私も昔読みましたそれ。本当にその年の人だったら面白いですよね。
Posted by しんざき at 2008年09月15日 16:27
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