2004年12月01日

レトロゲーム万里を往く その5 〜キャプテン翼〜

「キャラゲー」という言葉がある。

漫画、アニメなどのキャラクターを起用したゲームという意味と、キャラクターの魅力に頼りっきりで他のゲーム性が薄いゲームの二つの意味があるのだが、今回は前者の意味で話を進める。ジャンルは様々だが、大体は「原作」に則ったゲーム性なり展開なりを有していることが多い。版権が絡むという大きな問題はあるが、一定数の原作ファンの売上が見込める、キャラクター作成やストーリーに頭を悩ませる必要がない、ゲームを横展開(販促活動など)させ易いといった様々なメリットがあり、基本的にはメーカーにとって美味しい題材である。

賛否両論あるだろうが、少なくともファミコンの初期から中期において、キャラゲーの功績は小さくなかった。ゲームをやったことがない少年が、「ドラゴンボール」や「星闘士星矢」をプレイしたい一心で親に必死の無心をするという、当時そういった市場の広がり方はかなり広範だったのではないか。

前回の「迷宮組曲」では、コロコロコミックとハドソン主導での販促(といっていいか若干微妙であるが)活動を紹介したが、こういった「キャラゲー」に関しては、なんといってもバンダイが草分けであったろう。ファミコンに関する限り、初めて発売されたキャラゲーは1985年の「キン肉マン マッスルタッグマッチ」(スパルタンXはキャラゲーというかどうか微妙なところだ)であったのだが、これ以降もバンダイは「超時空要塞マクロス」「オバケのQ太郎ワンワンパニック」「ゲゲゲの鬼太郎 妖怪大魔境」などなど、僅か半年の間に立て続けのキャラゲーラッシュを見せている。

惜しむらくはこういったタイトルの大部分の出来が微妙であったことで、当時の子供の中には「折角ファミコンを買ってもらったのに一面の最初で挫折した」だの、「孫悟空が漫画の絵と似ても似つかぬ顔で、母親に泣き言を言ったらわがまま言うんじゃないとひっぱたかれた」だの、「ドラゴンボールだと思って小遣いはたいて買ったらスーパーモンキー大冒険だった」だのといった家庭内動乱を経験した者も少なくないかも知れない。元来、キャラゲーというのは名作、人気作の漫画やアニメにしか作られぬものであって、ファンの期待に十全に答えることはそう簡単ではないのだ。

こういった中で、ある時突然、「これひょっとすると原作より面白いんじゃねえか?」とユーザーに思わせる程の、突然変異的名作が出現した。

「キャプテン翼」(1988年4月28日 テクモ)である。

サッカーゲームではあるのだが、サッカーっぽいアクション性は殆どない。ボールを得た選手がフィールドを走りまわり、敵の選手と接触すれば「ドラクエ」の戦闘画面の様なコマンド選択で相手をかわす。ゴール前までボールを持っていけば、原作と同様の「ドライブシュート」や「タイガーショット」などが飛び交い、アニメ的な演出で選手を3人くらい吹っ飛ばしたりゴールを突き破って壁に突き刺さったりぐねぐねと左右に曲がったりカバ焼きにすると美味かったりする。この辺りの物理法則の狂いっぷりに関しては、今さらここで論ずる必要もあるまい。小林サッカーが「このゲームを参考にした」と言われる所以だ。

このゲームの物凄いところは、「ファンのニーズを完璧に把握していた」ところにある。

当時の少年ファンというのは、別にリアルなサッカーゲームを遊びたい訳ではなかったのだ。ゾーンプレスも知らなければセンタリングが何かもわからぬ、ヘタをするとオフサイドの意味すら解さない子供達にとっては、要するに翼や日向や若林の活躍が見られればそれで良かったのである。そういった意味で、「キャラクターの静的(漫画的)な対決」と「派手な必殺技」の二つに特化した、いわば「アニメの追体験」を実現しているこのゲームは、キャプテン翼という漫画のゲーム化としては一つの理想的な到達点であった。

原作にはないオリジナルのドラマ性もこのゲームの魅力であったろう。後に2、3と続編が続いていく中で、ゲームオリジナルのキャラや必殺技も数を増していき、後々に更なるパワーアップを遂げてプレイヤーの前に表れるケレン味は、まさに少年漫画の王道といえる。
こうして、当初から吹っ切れていたであろう開発陣は、原作以上のとんでもない必殺シュートを次々と量産していき、微妙なリアル路線に傾いていった原作を遥かに越えた「少年漫画」的世界がやがて出現することになった。仕舞いには「ゲームを元に漫画を描け!」などという声すら出始める始末である。原作を食ってしまうキャラゲーなどそう滅多にあるものではない。この辺り、細かいエピソードはまたいずれ紹介したい。

最後に一つだけ、ある必殺シュート時の会話への疑念を提起して本エントリーの結びとしよう。

「頼むぞ次藤!!」
「まかせろタイ!!」

本当に九州人か?
posted by しんざき at 18:08 | Comment(7) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
こばやしサッカーて何かと一瞬思いましたが、
しょうりんサッカーですね。

当時のキャラゲーで他にもお勧めが、
仮面ライダー達が主人公のアクションで先頭がボタン連打の押し相撲のものです。
二号はボタン連射してると、空中歩行できるという優れもの(?)。
タイトル忘れてしまいました。。。
わかりますか?
Posted by いす at 2004年12月02日 13:27
それは多分「仮面ライダー倶楽部」ですね。あれも結構物凄いゲームでした。

http://www1.u-netsurf.ne.jp/~inugo10w/game/1.html

こちらのHPが詳しいかと。これもその内扱いたいです。
Posted by しんざき at 2004年12月02日 14:58
やつは九州人じゃありませんw

そういや、FCキャプテン翼って発売がのびまくって、出る頃には連載が終わってしまったという落ちがありましたが。
てっきり、発売時期を逃した駄作かなと思ってましたがやってみるとひじょーに出来が良くてはまったのを思い出しました。
Posted by mono at 2004年12月02日 17:21
>ドラゴンボールだと思って小遣いはたいて買ったらスーパーモンキー大冒険だった

Σ(・ω・ノ)ノ
Posted by End at 2004年12月02日 19:22
そろそろ創元ネタを!!w
Posted by nei at 2004年12月02日 21:15
>monoさん
個人的には「し、しまったタイ!!」とかの方が印象強いんですが、アレは何か九州弁を勘違いした宮城辺りの人なんでしょうか。
発売時期を逃した名作ってのは結構多そうですね。

>Endさん
そのAAなんかステキです。ちなみにそこは突っ込みドコロです。

>neiさん
おわ、いらっしゃいませ。ご無沙汰してます。ご覧になって下さっていたとは。
ドルアーガがちゃんと控えてますから安心してくださいw
Posted by しんざき at 2004年12月02日 23:27
>しんざきさん
そうそう、仮面ライダー倶楽部でしたね。
期待しております。
Posted by いす at 2004年12月03日 15:26
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