ゴーストライターを昔やっていた、という話をすると、「どんなものを書いてたんですか?」と聞かれる。必ず聞かれる。
この質問、意外に困るのだ。一般的な認識がどういうものであるにせよ、少なくとも私における限り、ゴーストライターというものは文筆業上の何でも屋であり、後片付けの専門職であり、もっと言ってしまえばゴミ拾いである。それ以上でも以下でもない。どんなものといわれても、「何でも書きます」以外に答え様がない。他人様の小説の続きだろうがコラムだろうが、乗ったことのない車のレビューから行ったことのない風俗街の紹介、チラシの広告のコピーまで、仕事さえあれば何でもやる。
ゴーストライターというと、「有名人の自伝」であるとか、「芸能人の暴露本」であるとか、とかくある人物の替え玉作家としてのイメージを持たれ勝ちである。実際そういった仕事を専らとしている人もいるのであろうが、少なくとも私が知っている限りでは、純粋に「替え玉作家」のみで食っている人はいなかった。断言は出来ないが、大部分の人はゴースト以外にも何かしらのライターの仕事や、それ以外の収入源を持っているのではないか。何故かというに、ゴーストの仕事というのは基本的には不規則不安定、収益不明お先真っ暗ぶっちぎりな仕事なのであり、それだけで安定した老後を送れようという方はなかなかに巡り合わせが良い人なのではなかろうかと思うのである。
以下、このシリーズでは「ゴーストライター」というものが実際どんな仕事をしているのか書き連ねていきたいと思う。ただし、書かれる内容は全て、かつて私が下請け会社でゴーストのアルバイトをやっていた頃の経験に基づいており、書けないことは書けないし、基本的には業界中でも日陰中の日陰にしかいなかった為に、書かれる内容も若干偏るかも知れない。それでもよければ、お付き合い頂ければ幸いである。
2004年12月04日
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