2009年06月21日

レトロゲーム万里を往く その88 スターフォース

それは、遠い遠い昔のお話。



「連射が速い」ということが一つのステータスとして、ゲームを攻略する上での重要な才能として君臨していた時代。シンクロ連射装置などというものは、まだカゲもカタチも存在しなかった時代。高橋名人というささやかな夢を、皆がこぞって追いかけた時代。


「ディフェンダー」に始まり、「ヴァンガード」や「ゼビウス」といった名作によって既定路線となった「スクロール」という概念は、シューティング業界にもう一つのものを持ち込んだ。それが即ち「連射」である。

スペースインベーダーを草分けとする当初の固定画面シューティングゲームでは、1ステージに登場する敵の数がそもそも制限されていた。ハード的な制約などその他もろもろの事情もあり、基本的には自機から発射される弾の数は1ないし2。重要なテクニックになってくるのは、精密な操作と弾発射のタイミングだった。

それに対し、スクロールという要素は「敵の純増」「画面の広がり」「敵が出てくるペースの調整」など、様々なゲーム性の変化をSTGにもたらすことになる。ゼビウスの時点で、既に「たくさん出てくる空中敵の物量作戦」「それに対抗する為の連射」(あとバキュラ256発とか)といった連射の要素は発生していた。

そこに、「空中・地上の弾の打ち分け要素を撤廃」という処置をした上で、色んな要素を詰め込んで一気に連射の地位を上げまくったのが、言わずと知れた「スターフォース」である。


スターフォース。縦スクロールシューティング。1984年、テーカン(後のテクモ)よりアーケード版発売。翌1985年にはハドソンよりファミコン版が発売され、「キャラバン」や「コロコロコミック」などと合わせた広告戦略により、「スターソルジャー」などへと繋がるFC縦シューの基礎を形作り、さらには「高橋名人の出現」という、ファミコン業界の重要なターニングポイントの引き金を引いた。


まずは関連ページリンク。

アーケード版に関しては、いつも通りというか「OKINIIRI」さんを参照して頂けるのが一番いいのではないかと思う。バブシカさんの緻密なレビューが読める。
OKINIIRI:スターフォース

ゲームの背景その他に関してはWikipediaを参照のこと。
Wikipedia:スターフォース

さて、ゲームの話にいこう。


・突如そこに現れた「連射」の重要性。

当然のことながら、スターフォースは縦スクロールシューティングである。プレイヤーは自機「ファイナルスター」を操り、敵が撃ってきた弾を避けて、こちらの弾を地上・空中問わず敵にぶち当てる。そのゲーム性は今からは想像も出来ない程シンプルだ。

重要な要素は3つくらいある。

・耐久力のある敵の増加。
・「連射によってボーナス点が入る」ギミックの大量投入。
・敵の攻撃の基本は自機への突っ込み。


例えばの話、ゼビウスでは、バキュラ以外のあらゆる敵が「一発撃ったら終わり」だった。「耐久力」という概念がそもそも存在しなかったのである。これはボザログラムだろうが、アンドアジェネシスだろうが変わらない。撃つ場所は多いけど。


これに対してスターフォースでは、地上敵・空中敵問わず、耐久力のある敵が激増している。ラリオスやエリアターゲットは言うに及ばず、トッパーの様な空中敵、ジムダやマジッカなどの地上敵、ヒドンの様な「隠れキャラ」に至るまで、そこには「たくさん撃たないと倒せない」敵が山盛りだった訳である。

それに加えて、ラリオスやジムダ・ステギなどの「たくさん撃って撃破に成功すればボーナス点」という要素の追加。弾幕はそれほどキツくないけど、高速で自機に突っ込んでくる数々の敵機。敵を倒すことでポイントが加算され、エリアが先に進んでいくシステム。これらをまとめることで、このゲームはどうなったか。

そう。つまりスターフォースは、テーカンが意図したものなのかどうか、おそらく史上初の「連射が速ければ速い程有利」というゲームに仕上がっていたのである。


ここに、一人の巨人が現れる土壌が整った。


・高橋名人という「怪物」の出現。

ハドソンの高橋利幸氏が初めてファミコン小僧達の前に現れたのは、チャンピオンシップロードランナーの販促イベントである(参考:"高橋名人”という社会現象)その後、彼は「キャラバン」という、全国レベルでのゲーム大会において「高橋名人」となる。

「キャラバン」の第1回、「TDK全国ファミコンキャラバン 」で使われたゲームが、勿論スターフォースだ。

高橋名人は勿論ゲームが上手かった訳だが、彼の最も有名な特技である「16連射」が名人の看板になる為には、「連射というスキル」が重要な才能として数えられる必要があった。その為の土壌として、スターフォースというゲームはうってつけだった。

高得点を上げる為に、大量の敵を押しのける為に、ほぼ必須ともいえる「連射の速さ」。コロコロコミックの漫画で、デパートでの販促イベントで、「連射」という要素は高橋名人とセットになって、シューティングゲームでの主要な才能の一つへと駆け上がっていったのである。


私は、当時の業界の盛り上がりをうっすらと覚えている。ラリオスが、ジムダ・ステギが、漫画の展開とワンセットになって次から次へと撃破されていった風景。やがてごく一般的なゲーム好きのなかから「毛利名人」がハドソンに見出され、発生する「14連射」と「16連射」の対比。色々なメーカーがこぞって名人を擁立したことも記憶に残っているが、ある程度定着したのはバンダイの橋本名人くらいではなかったか。

「コロコロコミック」と「キャラバン」そして「高橋名人」と「連射」。後にスターソルジャーまで発売してこれらの要素を子供相手にクローズアップした、ハドソンの戦略は今から振り返っても見事だったと思う。


シューティングゲームの時代の、ほんの一時期。やがて、「連射」という要素は「シューティングゲームの多様化」や「連射装置・ソフト連射の普及」などによってスターダムから追いやられ、ハドソンもゆっくり、ゆっくりと業界のトップ集団から退いていくことになる。



・私にとってのスターフォース。

知っている人はよく知っている、「ジョイボール」という代物がある。十字キーにあたる部分がボール上になっており、ボールを掴んでぐりぐりと自機を操るという微妙な操作感のコントローラーだが、私が初めて「連射装置」というものを体験したのがジョイボールであり、このスターフォースだった。

ピアノ撃ちで必死にならなくてもラリオスが撃破出来る!というのは確かに鮮烈な感動だったが、周囲のファミコン小僧の間では「邪道なもの」として位置づけられており、またボールをちょっとずらすとくりっとメーウスに突っ込むことが多かった為、そこまで欲しいとは思わなかった。それよりなにより、当時は「手動連射をいかに速くするか」ということがファミコン小僧達の最大の関心事であった訳である。この点、ハドソンの戦略にものの見事に乗せられたといって間違いないだろう。

ゼビウス当時はまだそこまでゲームに時間を使えなかった私にとって、スターフォースは多分初めての「点稼ぎの楽しさ」を教えてくれたソフトだったと思う。エリアターゲットを倒した時のあのファンファーレを、ラリオス前の緊張感を、今でも私は覚えている。


シンプルイズベストの、その先にあったゲーム。スターフォースは確かに、縦スクロールSTGの一つのルーツであったと思う。
posted by しんざき at 00:57 | Comment(2) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
こんばんは。

あぁ、懐かしいです。
小学校低学年くらいの頃でした。
「デッデデッデデッデデッデチャララーンチャーラ♪〜」
ってオープニングのメロディーと、ゲーム中の
敵を撃破するときの「ガガガガン!」って効果音が
とても印象に残っています。

隠れキャラを探すのも楽しかったですし、撃破しきれずに
スクロールに消えていくのが悔しかったですね。

確かに超名作だと思いました。
それでは、失礼しました。
Posted by USHIZO at 2009年06月21日 02:58
>USHIZOさん
スターフォースも「音」が印象的なゲームでしたよねー。エリアターゲット前の盛り上がりは異常。
Posted by しんざき at 2009年06月23日 09:24
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