2004年12月07日

フォルクローレ今日の一枚 「Alegria」(Los Incas)

インカスはコンドルだけではないのである。

マニアのうざい一人語りであることを承知の上で、一ケーナ吹きとしてわがままな私観を言わせてもらえれば、インカスはコンドルで一面損をしていると思うのだ。

Los Incas。ペルー出身の演奏グループで、世界的なチャランゴ奏者のホルヘ・ミルチベルグをリーダーに、1950年代からヨーロッパにおいて活動している。彼らが得意曲としていた「El Condor pasa(コンドルは飛んでいく)」に「サイモン&ガーファンクル」のポール・サイモンが惚れ込んで、1970年代に歌詞をつけて発売した。このカバー版が徐々に人気を集め始め、最終的に世界的なヒットを得たことが文頭の「「コンドルは飛んでいく」のインカス」という潮流の一面となっている。

「コンドルは飛んでいく」は名曲だ。一般への知名度も非常に高く、例えば街頭演奏でもこれ一曲挟むだけで実に喜ばれる。その為、例えばフォルクローレCD販売でも、この一曲が知らない人への入り口に用いられることは多い。

問題はまさにこれだ。大手CDショップなどで、インカスは「入り口」の扱いしかされていない様に思えるのである。

アマゾンや大きめのCDショップでインカスのCDを探すと、フォルクローレ入門CDの様なものばっかりで、例えば花祭りや「ベスト・オブ・フォルクローレ」、「南米の音楽」といったタイトルのCDのバック専門バンドの様な扱いが随所で見られる。

例えば、一番売れているのがこのCDだ。かく言う私も初めて買ったフォルクローレCDはこれだった。いや、このCDはこのCDで実に味があっていいのだが、これがインカスの代表CDの様な扱いをされてしまうのは個人的にはちょっと残念無念また明日というか、忸怩たる思いを禁じえない。いい曲の基準など人それぞれであることを承知の上で、もっといいCDもあるのに、と思ってしまうのだ。なんだ、ビバフフイやラ・ボリビアーナのこのすげーやる気ない歌い方は。起きぬけのおっちゃんが新聞広げながら歌ってるのかと思ったぞ。グァンタナメラ辺りも、実にそのなんというか、まったりとした感じのハワイアンな演奏である。

まあ元々曲の好みに客観性などないのだ。私の好みをずばっと挙げてしまおう。一枚インカスのCDを挙げるとすれば、私ならこれを選ぶ。

「Aregria」

私の好きなインカスの「味」というのは、以下の二点に集約される。

・特徴的な、かすれた様な音を立てる管楽器を武器にした独特の土臭さ
・繰り返しを主体にしたのどかで味のあるメロディー

例えば標題曲の「Alegria」や「Rio Abierto」など、私にとってはまさに上記の「味」を体現したかの様な名曲だ。「La Chinita」も、明るいパートとゆったりしたパートのメリハリがはっきりしていて、演奏してみても実に気持ちがいい。試聴可能なページを見つけられなかったのが残念だが、「コンドルのインカス」が好きな方にこそ、是非一聴をお勧めしたい。

公式ページらしいものを以下に挙げておく。多分インカスのページだと思うのだが、今日の私はスペイン語を辞書片手に読み解く気力に欠けていた。

http://incas.perucultural.org.pe/
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