2009年10月28日

ブログ 名人伝・前編

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恣意差(しいさ)の都に住むぶろ雄という男が、天下第一のブロガーになろうと志を立てた。己の師と頼むべき人物を物色するに、当今ブログをとっては名手ぶろやすに及ぶ者があろうとは思われぬ。ぶろ雄ははるばるぶろやすに@を入れてその門に入った。

ぶろやすは新入の門人に、まず非モテ・非コミュネタを学べと命じた。聊か時宜を過ぎた感こそあるが、ブログを書くとき、ことに手始めにアクセスを稼ぐ際、脇の甘い非モテネタは未だ基本であるが故である。ぶろ雄は家に帰り、妻にありったけの独身男板ログを収集してくるよう言いつけた。彼の妻はネットゲーム廃人であり、Spamブックマーカーである。たちどころに非モテ・非コミュネタエントリーの山が築かれた。

ぶろ雄はそれらを参考に、試しに増田で非モテ自虐ネタを書いてみた。一つ二つ脊髄反射ブックマークがつく。だがはたして自分が正しく煽れているのかどうか判然としない。妻に自分のエントリーを添削させてみると、理由を知らない妻は大いに驚いた。第一、結婚している良人に、モテない、女子と会話出来ない、恋愛資本主義云々、などと書かれては、自分の立場がないという。厭がる妻をぶろ雄は叱りつけて曰く、どうせ殆どの非モテ系ブロガーは、フタを開けてみれば彼女持ちだったり妻子持ちだったりするのだ(厚生省調べ)、と。ともあれ、彼は妻に不自然な点を指摘させた。始めの内こそ「釣り乙」「はいはい非モテ非モテ」などというコメントしか集められなかった彼のエントリーだが、徐々に読者の被虐心・嗜虐心を誘い、強烈な反応を煽るに至った。

ついに、30秒で書いたエントリーが150の脊髄反射ブクマを集めるに及んで、彼は漸く自信を得て、師のぶろやすにこれを告げた。

それを聞いてぶろやすがいう。非モテネタのみではまだブログの真髄を授けるには到底足りぬ。次には、派遣・学歴ネタを学べと。ウヨサヨ話を巻き込んでブログ界隈に一騒動を起こせる様になったならば、来たって我に告げるがよいと。

ぶろ雄は再び家に帰り、アメブロで捨てアカウントを取得すると、口舌激しく派遣・学歴ネタを論じ始めた。始めの内こそ、稚拙なぶろ雄の言論は一顧だにされなかったが、なるほど学歴ネタが食いつかれるのは早い。ぶろ雄の誤りを指摘する声、「マッチョ乙」などという言説、同調、否定、異議、叱責、タイトルだけを肴になんの関係もなさそうな話を始めるブロガー、何でもありである。ぶろ雄はエントリーを重ねる毎に、どの様な言葉を連ねれば周囲の激烈な反応を喚起することが出来るのかを、幼児が歩むを学ぶが如くに身につけていった。

ある日ふと気が付くと、脊髄反射エントリーにつけられたブックマークは300を越え、「これはひどい」タグがページを赤く埋め尽くす勢いで乱舞していた。ぶろ雄は早速師匠の下に@を飛ばして報告する。ぶろやすは高蹈して胸を打ち、初めて「出かしたぞ」と褒めた。そうして、直ちに煽り・釣りの奥儀秘伝を剰すところなくぶろ雄に授け始めた。

煽りの基礎訓練に五年もかけた甲斐があってぶろ雄の腕前の上達は、驚く程速い。一年を経ずしてぶろ雄はあらゆる技法をぶろやすから学びとった。

最早師から学び取るべき何ものも無くなったぶろ雄は、或日、ふと良からぬ考えを起した。

今やブログを以て己に敵すべき者は、師のぶろやすをおいて外に無い。天下第一の名人となるためには、どうあってもぶろやすを除かねばならぬ。秘かにその機会を窺っている中に、ある日たまたまはてなダイアリーのコメント欄において、唯一人クダを巻いているid:buroyasuを見かけた。

咄嗟に意を決したぶろ雄が上から目線書き込みで攻撃をすれば、その気配を察してぶろやすもまた論点ずらし書き込みを行って相応ずる。ひとりが匿名増田に自演援護書き込みを行えば相手もそれに応ずる。どちらが劣勢になることもなかったのは、両人の技が何れも神の域に入っていたからであろう。単にゴールが見えていなかっただけかも知れないが。

さて、ぶろやすのテクニックが尽きた時、ぶろ雄の方は尚ひとつを余していた。禁断の鬼女板誘導である。得たりと勢込んでぶろ雄がテキストを書きはじめたとき、ぶろやすは咄嗟に、サーバに対してDOS攻撃をしかけて全部丸ごと落とした。ひどい話である。

ついに非望の遂げられないことを悟ったぶろ雄の心に、道義的慚愧の念が、忽焉として湧起った。ぶろやすの方では、又、危機を脱し得た安堵が、敵に対する憎しみをすっかり忘れさせた(こうした事を今日の道義観をもって見るのは当らない。管理者からアカウントを停止された翌日には別垢でくねくねしているような時代の話である)

二人は互いに駈寄るとひしとSkypeを立ち上げて、暫し美しい師弟愛の涙にかきくれながら互いを称えあった。涙にくれて相擁しながらも、再び弟子がかかる企みを抱くようなことがあっては甚だ危いと思ったぶろやすは、ぶろ雄に新たな目標を与えてその気を転ずるに如くはないと考えた。彼はこの危険な弟子に向って言った。最早、伝うべき程のことは悉く伝えた。もしこれ以上この道の蘊奥を極めたいと望むならば、ゆいてブロゴスフィアの彼方、草の根ネットの頂を極めよ。
そこにはブロ秀という斯道の大家がおられる。老師に比べれば、我々の書き込みの如きは殆ど児戯に類する、と。


(後編に続くかも知れない)
posted by しんざき at 22:21 | Comment(6) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
アクセスアップしたかったので、これは勉強に…なるようなならないような。これはむしろ釣り・煽り名人。
自分の書きたいことを書きながらブログを大きくできるなら、すごいと思うし弟子入りしたい
ともあれ続編期待わっふる
Posted by くどう at 2009年10月29日 20:27
なんだこの無駄なクオリティの高さは…
Posted by や at 2009年10月29日 22:36
元ネタが思い出せそうで出せないのですごくもどかしいです
Posted by at 2009年11月03日 04:56
>くどうさん
すいません単に煽ってるだけですコレ

>やさん
原文を改めて読むと色々とすばらしい

>名無しさん
文頭に!文頭にリンクが!
Posted by しんざき at 2009年11月03日 16:58
リンク気づかず失礼しました。いい文章って、いいね。しんざきさんの改変もいい。
Posted by at 2009年11月05日 13:37
「こうした事を今日の〜翌日には別垢でくねくねしているような時代の話である」がとくにすばらしいと思いました
Posted by や at 2009年11月08日 00:38
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