2009年12月09日

レトロゲーム万里を往く その92 ナッツ&ミルク

ナッツ「ドンキーコングのレディよりはヨーグルの方が正統派ヒロインっぽいんじゃないだろうか」

ミルク「カービィの中の人って俺じゃね?」
(「レトロゲーム箴言集「シャドウ・オブ・ハドソン」(民明書房刊)」より一部抜粋)



ファミコンにおける「ステージエディット」というものは一体何だったのか、ということをちょっと考えてみる。


説明するまでもないかも知れないが、ステージエディットというものは、例えばパズルゲームや固定画面アクションゲームなどで、自分の好きな様にステージを作成出来るという機能である。プレイヤーは、例えば難易度が高いマゾステージであるとか、逆に目をつぶっていてもクリア出来るヌルステージ、敵を徹底的にイジめ倒すことが出来るサドステージなど、様々なステージを作成することが出来る。

初期から中期のファミコンタイトルには、このステージエディット機能がついたゲームがぽつりぽつりと見られる。ぱっと思いつく感じ、1985年までの間に、ステージエディット機能がついているゲームは少なくとも5本出ている。ロードランナー、エキサイトバイク、レッキングクルー、バトルシティ、そしてナッツ&ミルクである。


ナッツ&ミルク。固定画面型アクションゲーム。1984年7月28日、ハドソンより発売。ファミコンにおける、記念すべき初のサードパーティ発(つまり任天堂以外から発売された)タイトルであり、また初の「ステージエディット」機能を盛り込んだゲームでもあった。3日後に同じくハドソンから発売された「ロードランナー」と並んで、ファミコン黎明期におけるハドソンのスタートダッシュを下支えした佳作タイトルの一角だったと言っていいだろう。ファミコン発売の年である1983年から少なくとも丸二年、ファミコン業界は任天堂とナムコ、そしてハドソンを中心に回っていたのである。


まずは関連リンクを。

ゲーム自体については、いつものことだが、Wikipediaに詳しい。
Wikipedia:ナッツ&ミルク

こちらのページでは画面も参照頂くことが出来る。素晴らしい見易さである。
ナッツ&ミルク


さて、ゲームの話をしよう。

・僕達が「アルゴリズム」に出会った日。

ナッツ&ミルクは固定画面型アクションゲームである。プレイヤーは、まんじゅうに足が二つついた様な独特のデザインをした主人公「ミルク」を操り、顔色が悪い敵キャラ「ナッツ」をジャンプで避けたり誘導して海に放り込んだりして避けながら、ステージ中の果物アイテム(バナナとリンゴのみという極めて健康的なチョイスである)を集め、ゴール地点である恋人「ヨーグル」の家を目指す。

ミルクは攻撃手段を持っていない。徒手空拳孤立無援のミルクに出来るアクションは、ただ移動とジャンプのみ。その為、ゲームの中心は「ミルクをひたすら追い掛け回すナッツをいかに避け、果物を集めるか」という点に終始する。

そのゲーム性として、「ドンキーコング」や「ドンキーコングJR」、「ポパイ」などと比較されるのはやむを得ないところだろう。「基本的には倒せない敵キャラ」「クリアの過程でアイテムを集める」「ヒロイン(JRの場合にはヒロインは父コングだが)のところに辿り着く」といった要素も、先行するタイトルと通じるところがある。「鬼ごっこ」的なゲーム要素が、アクションゲームとしては一番原始的な形だと考えることも出来るだろう。

ナッツ&ミルクが先達と大きく異なるのは、「50ステージ」という当時としては常識外れに膨大なステージ数と、ラウンドスキップ(セレクトボタンを押すことによってその面を飛ばすことが出来た)やボーナスステージなどの様々な追加要素にあるだろう。「ステージセレクト」的な要素が初めてファミコン業界に姿を現したタイトルでもあった。

ゲームとしてのナッツ&ミルクの特徴は、二つの要素に集約されると思う。つまり、「ジャンプによるパズル要素」と、「ナッツの行動予測」である。

ジャンプがジャンプアクションの根幹になるのは当然だが、このゲームにおけるジャンプは「ナッツをかわす手段」であると同時に、「得点稼ぎの方法の一つ」でもあり、「スプリングと絡めてパズル的な地形を突破する為のテクニック」でもある。

ナッツをジャンプで飛び越えるとボーナス点が入る。これは、「回避」という行動自体に報酬がつくことで、後述する「いかにナッツの行動を読むか」という流れにプレイヤーを呼び込むことに通じる。

また、通常のジャンプは1マス分しか飛ぶことが出来ないが、タイミングを合わせると2マス分の距離を飛び越えることが出来る、というのもこのゲームを奥深くしていた要素の一つだろう。50ステージどのマップをとっても、ジャンプというテクニックの使い方を考えないステージはなく、その「考えられた配置」の完成度は高い。


そしてもう一つ、「ナッツの行動予測」というものが、このゲームの「肝」であると私は考える。

ナッツは通常何も考えずにミルクを追いかけるだけの動きをするのだが、例えばある条件下では全く逆の方向に動いたり、ある地形上ではミルクの縦軸を先に追いかけたりと、様々な意味で「面白い」動き方をする。これを利用して、やがてプレイヤーは「ナッツをおびき寄せておいて、あるタイミングで一点突破する」であるとか、「ロープの上でナッツを誘導して、上手い事画面下に叩き落す」といった、相手の動きを予想した戦術というものを学習していくことになる。

すぐ後に発売された「ロードランナー」、そして11月の「パックマン」と並んで、「敵がこの後どういう風に動くか」ということを予想する、という楽しみ方をプレイヤーに提供した初めてのファミコンゲームである、と私はこのゲームを評価している。この一点において、ポパイやドンキーコングはナッツ&ミルクに一歩を譲るだろう。ロードランナーなどに比較すればその知名度では劣るが、ナッツ&ミルクも確かに、アクションゲームの根っこの近くに位置するタイトルの一つなのである。



・で、ステージエディットの話。

凄く端的に言うと、「データレコーダの為に追加された機能」なんじゃないかなあ、とか邪推してしまうのですが。

参照:ザ・周辺機器ズ様

ナッツ&ミルクが発売されたのは1984年7月28日。これに先立って、6月21日に任天堂より発売されたのが、いわずと知れたファミリーベーシックである。

ファミリーベーシック自体については以前もちらっと書いた。重要なのは、これと前後してファミコン用のデータレコーダ(カセットテープにゲームやベーシックのデータを記録する為の周辺機器)が発売されたことであり、おそらく任天堂はある程度MSX(ファミコンと同時期に発売された、低価格PCの規格。ゲームも出来る)を意識していたのではないか、という憶測である。


覚えていらっしゃる方も多いとは思うのだが、ファミコン初期には「ゲームのデータを保存する」こと事態が容易なことではなかった。当時はまだバッテリーバックアップも出現しておらず、フラッシュメモリなどカゲもカタチもない。パスワードコンティニューすらまだ一般的ではなかった(初出は多分85年のフラッピーだと思う)時代である。

そんな折、ベーシックの別売り付属機器として発売されたデータレコーダは、当然のことながらユーザーがせこせこと打ち込んだベーシックのプログラムを保存する為の機械だった訳なのだが、当時ベーシックを使いこなせるお子様は当然それほど多くなく、データレコーダが普及するには「他の使い道」がどうしても必要になる。当たり前である。

で、その「他の使い道」を提供する為に打ち出されたものの一つがハドソンと任天堂タッグによる「ステージエディット」である、という側面は意外にあったりするんじゃないかなあ、と私は推測(というか邪推)するのだがどうだろうか。

「ハードが先にあり、そこからゲームの要素が作りこまれる」というのは別に全然珍しいことではなく、例えばファミコンのタイトルには「マイク」を使った遊び方が導入されたゲームが山ほどある。とはいえ、このゲームの「データレコーダ対応」という要素については些か政治的なタイムリーさを見ざるを得ず、そういう意味では、「高橋名人の為に追加された」同じくハドソンの迷宮組曲、タイトル画面の連射機能を個人的には連想したりするのである。

少なくとも、当時ベーシックで打ち出された「自分でもゲームが作れる」という方向性をある程度意識した機能である、という推測は外れてはいるまい。バトルシティは確かデータレコーダ対応してなかった気がするけど。

もっとも、このしばらく後に「バッテリーバックアップ」という機能が一般化し、ターボファイルなどという超強力なライバル付属機器も現れ、データレコーダはあっさり時代の孤児となってしまう訳ですが。技術の進歩というものは、かくも速い。


勿論、上記のような邪推とは何の関係もなく、ステージエディットはそれ自体「とても面白い」要素ではあった。イラストのような色とりどりのステージを作ることも出来れば、本格的なパズル要素に挑戦することも出来る。

ナッツをブロックで囲んで外に出られなくしたりであるとか、海の上に配置してステージ開始早々延々と海中に没し続けるナッツを見て楽しむであるとか、そういった残酷な少年的遊び方をした人も当時は結構いたのではあるまいか。子供の創作意欲を刺激するメニューであったことは確かな事実だろう。

エディット機能は、後のファミスタや倉庫番などに受け継がれつつ、より機能の高いハードへと流れ込むことになる。



ということで、大概長くなったので今回はこの辺りで締めることにする。

次回はまたタイトルもの万里の予定です。

posted by しんざき at 23:53 | Comment(0) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック