いちいち容疑者の服を脱がせるのはどうかと思うのである。
1985年、11月29日。ファミコン業界に突如舞い降りた、「本格的推理アドベンチャー」という触れ込みのゲームがこの「ポートピア連続殺人事件」であった。いわゆる「アドベンチャーゲーム」の登場である。
このゲームを話題にするならば、まず当時の「アドベンチャーゲーム状況」を説明しない訳にはいくまい。当時、PC-6001やMZ-2000とかMSXといったパソコン業界においては、RPGやシミュレーションゲーム(以後SLG)、アドベンチャー(以後AVG)、といったジャンルのゲームが隆盛を極めていた。特にAVGはその「ゲームシステム」がパソコンの形態に非常にふさわしかったこともあり、例えばマイクロキャビンの「ミステリーハウス」とか、ハドソンの「デゼニランド」といったゲームが人気を集めている。ちなみにハドソンは元々PCゲームのメーカーであり、後にFCで発売される「サラダの国のトマト姫」もPC-8801にて発売されている。
当時のAVGと現在のAVGの決定的な違いは、「コマンドが提示されていない」ということにあるだろう。これはどういうことかというと、例えばこちらの攻略ページを見て頂ければ分かる通り、「歩く」という行動をとりたいなら「Walk」とか、「話す」をしたいなら「Talk」といったコマンドを、自分でキーボードから打ち込まなくてはいけなかったということを意味する。このコマンド群は説明書にも記載されていない為、AVGを遊ぶときは、謎を解く前にまず「使える単語」を見つけなくてはいけないというのが一般的であった。
その為、例えば棚の上を調べるなら「check」を使えばいいのか「search」を使えばいいのかとか、ある場面で何の単語を打ち込まなくてはいけないかしらみつぶしにしていくというのが当時のパソコンAVGの普通の遊び方である。今から聞くと途方もなく面倒くさい作業に思えるが、単語探し自体がゲームの一部という感覚が通常であった為、「これがあってこそのアドベンチャーム」という意識もあった様に思える。
言うまでもないことだが、ファミコンにキーボードは存在しない。まさかあまねくご家庭全てがファミリーベーシックを持っている訳もあるまい。
今をときめく「ドラゴンクエスト」の製作者として後に知られる堀井雄二氏は、ここで一計を案じた。例えば「取る」とか「探す」とか、そういった「お決まりの命令」というものはほぼ決まっている。ならばキーボードでいちいち打ち込んでもらうのではなく、画面から「取る→何か」、といった形式で選択してもらえばいいではないか!
こうして生まれたのがファミコン版の「ポートピア連続殺人事件」、そしてプレイヤーの助手である「ヤス」であった、という訳なのである。
ファミコン発のAVGということでかなりの人気を集めた本作ではあるが、その何よりの歴史的意義は「コマンド入力」という形式をファミコン上に持ち込んで確立した、という一点にあるだろう。これは後に「オホーツクに消ゆ」や「さんまの名探偵」などのAVGのみならず「ドラクエ」や「FF」にも採用されるシステムとなり、ゲーム業界全体で繁栄していくことになる。今でこそ当たり前の「コマンド入力」であるが、その淵源がこの一本のアドベンチャーゲームにあった、という点は特筆に価するであろう。
ゲーム自体に関しては私より余程詳しい方々がネットにはたくさんおられる。参考ページをいくつか挙げさせて頂こう。
最速その3 ポートピア連続殺人事件
ブログで画像を掲載してくださっている方がいた。この画面有名だなあ。
ポートピア連続殺人事件 完全攻略
このゲーム、いわゆる「早解き」の元祖の様な気がする。10分攻略は圧巻。
懐かしのゲーム
懐かしのパソコンのゲームを紹介して下さっているページ。文中、「サラトマ」の記事を参照させて頂いた。それにしても、デゼニワールドはいいのかアレ。
2004年12月23日

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犯人が超有名「犯人は○○」…『ポートピア連続殺人事件』
Excerpt: 『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』についての記事を書いたら、 セットでこっちも書かないといけませんかね…。 ということで今回は、『ポートピア連続殺人事件』 それは日本一犯人が有名なゲーム。..
Weblog: ん〜?( ̄〜 ̄;)
Tracked: 2005-11-03 20:11
ポートピア連続殺人事件
Excerpt: 推理モノとしてもそうですが、コマンド型アドベンチャーゲームとしてもかなり初期の作品ですね。1985年にファミコンカセットとして発売されたポートピア連続殺人事件です。なんとあのエニックスのゲームです。 ..
Weblog: ヒットソング情報局のBlog
Tracked: 2006-01-07 14:34