随分前、就職活動での面接について、面接する側の視点を書いてみたような覚えがある。
あれから暫くたつ間に、うちの部署も何人かの人を採用させて頂いた。で、皆さん今も辞めずに働いて頂いている。以前は私が一人でやっていたような仕事も今は大部分皆さんに渡してしまい、お陰で私自身は随分楽になっている。
で、私がどの様な基準、というか思考過程で来て頂く人を選んだのか、ちょっと晒してみようかと思った。当たり前の内容のような気もするけれど、もしかすると何かの参考になる人がいるかも知れないし、私自身の将来の参考にならないとも限らない。といっても飽くまでもうちの会社、というかうちの部署での話なので一般化する気は全然ない。
前提:私の部署は、とある会社のシステム部で、専ら自分達で開発した自社の顧客向けシステムの保守・追加開発、その他社内システムの開発・保守などをやっている。技術的には結構裁量が利く。よそからのシステム開発を受注したりすることは基本的ににない。人数は少ないし、定期採用も行っていない。
1.まず最初に、「今、うちの部署は何故人材を必要としているのか」を整理してみる。
2.次に、「具体的に、人材を必要としている仕事・分野はどこなのか」を整理してみる。また、その分野を今後どう舵取りしていくかも合わせて考える。
3.ここまでで、その人材に払える(というか、これくらいは払えと経理に主張出来る)お給料を超ざっくりと試算する。
4.次に、「新しい人に入ってきてもらったとして、その仕事をやってもらえるようになるまでにどの様なフローが必要になるか」を考えてみる。
5.ここで初めて諸々の条件を考えてみる。
6.募集を出して面接する。
で、選考では具体的にどんなところを見たかというと。必要なスキルとかコミュニケーションの取り易さというのはまあ前提として、
・本人が思い描いている「今後やりたいこと」と、こちらが提示する仕事が合致するかどうか。今後食い違いが発生する可能性はどれくらいあるか。
・4で考えたフローがどれくらい省略出来るか。
基準としては「無理のない範囲でなるべく長く働いてくれそうな人」というのが大きかったと思う。つまり、会社に入った後でどれくらい不満が発生しそうかなあ、というのが重要だと思ったので、どの程度「これはやりたい」「こういうのはイヤだ」というのを持っているかということと、それと現状(うちの会社が提供出来るもの)がどれくらい食い違っているかということはアレコレ聞いたり話したりした。それに加えて、人材を採用するのにかかるコストと、やってもらいたい仕事が軌道に乗るまでの期間を秤にかけた感じ。
思考過程について細かい補足を書く。
1.「今、うちの部署は何故人材を必要としているのか」
2.「具体的に、人材を必要としている仕事・分野はどこなのか」
当たり前の前提だと思う。これが明確になっていないと、そもそも「どんな人に来て欲しいのか」ということが決まらない。
例えば、部署内で今、とある分野の開発が回らないという問題が発生しているとする。それは人手不足によるものなのか、それとも他に障害があるのか。切迫度はどれくらいか。今後も継続して発生し得る問題だとすれば、人材を採用する意味はおおいにある。一方、一時的な問題だったら他にやり過ごす方法を考えたい。なんだかんだで、人材募集は会社にも、人材自身にも多大なリスクやコストを要求する。
で、折角人材を採用しても一つのお仕事が終わったらやることなくなっちゃいました、では話にならないから、その後のこともアレコレと考える。今後、この部分のシステムはどういう方向にもっていくか。この開発案件は終わった後どう続くか。それに基いて、募集する人材に必要なスキルや要件は色々決まる。
3.その人材に払える(というか、これくらいは払えと経理に主張出来る)お給料をざっくりと試算する。
勿論、来て頂く人のスキルとか経験年数とかによって上下はする。
私は経理面での決裁権をもっていないので、当たり前だが払ってもらう給料については自分で決められない。経理の偉い人と談判しなくてはいけない。そこで、「これくらいの効果が発生するからこれくらいは提示してもいいでしょ?後で文句言うなよてめえ」という感じで交渉する為の材料を用意して、もっていく。結構苦労する。
4.「新しい人に入ってきてもらったとして、その仕事をやってもらえるようになるまでにどの様なフローが必要になるか」を考えてみる。
これも当たり前だが、開発環境を用意して席を用意して、そこに座ってもらうだけで仕事をしてもらうのは、どんな達人にも不可能だ。割り振る仕事や中身について説明して理解してもらって、オリエンテーションも色々して、後はその人の経験やスキルに沿って、どんな仕事からお願いするか考えなくてはいけない。その順番を考える。
この時、「新入社員にこの仕事をお願いするとしたら、そこに辿り着くまでにどんな過程が必要になるかな」ということを全部書き出してみる。中途の人の場合、それが多分あちこちはしょれる。これも一つの基準。
5.ここで初めて諸々の条件を考えてみる。
6.募集を出して面接する。
スキルについては、募集時点ではあんまり細かく出せないことが多い。経験年数とか全然あてになんないし。だからむしろ細かくは出さない。ただし、「こんな仕事をしてもらうことを考えている」ということは事前になるべく細かく出しておいて、それに対してどの様な自己評価をしているか、ということを基準のひとつにする。基準がはっきりしているとアピールもやりやすいらしく、色々喋ってくれる。それに、入社してもらってからその仕事を振っても当然文句を言われない。
あと、前の会社を辞めた人であれば、「どういう思考過程で」辞めるに至ったか、というのはかなり重要なので割と詳しく聞く。不満を持つポイントはどこなのか。採用してからの不満は出来る限り少ない方が万人にとって平和。
「こんな筈じゃなかった」というのは不満をもつ際のクリティカルポイントだと思うので、会社の悪いところについては結構洗いざらい喋る。ここで会社側が飾ってはいけない。引かれたらそれはそれでいいや別に。入社してから「こんな筈じゃなかった」と考えちゃうのはあらゆる人にとって不幸だ。
他に細かいことはこっちで書いた時とあんまり変わってない。
・以上から面接のコツ(笑)的なものを導出するとしたら。
・自分に期待されている仕事の内容、というものはなるべく詳しく聞いた方がいい気がする。
・その上で、自分の方向性、やりたいことが明確にそれに合致していれば、それが最大のアピールポイントになるような気がする。
・会社の悪いところは聞き逃さないように気をつけた方がいい。というか、うちの会社素晴らしい!とかしか言わない人がいたら疑ってかかるべきだと思う。
いや、知りませんよ、私が面接するとしたら、ですよ。
ということで、大概長くなったのでこれくらいで。後で何か思いついたら書き足すかも知れない。
2010年01月27日

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