ハリぼん様が面白い話題を提供してくださっている。折角なので乗らせて頂こう。私はそもそも法律を専攻していた訳でもなんでもなく、知識にも結構綻びがあるので、釣られた魚としては小物だと自覚せざるを得ないのだがw 俎上に乗せて頂けると幸いである。
まず前提として、日本で一般に知られている不思議な成文憲法に関して、こんな内容なら成文である必要はないから理念だけにしちまえ、という話ならあまり反論はない。
だが、おそらく意図的にであろうとは思うのだが、ハリぼん氏は「普通の国家で施行されている憲法」と「日本で施行されているちょっと特殊な憲法」をやや混同される様な書き方で語っておられる。
例えばイギリスに憲法が存在しないとハリぼん氏はおっしゃっている。確かに明文化されたいわゆる「憲法」というものは英国に存在しないが、これはただ単に法源が成文でないというだけのことで、様々な慣習や判例を法源とする不文憲法というものは一般に認知されている言葉だ。この意味で、「イギリスに憲法がない」というテーゼが憲法不要の根拠の一つになってしまう、という構図はちょっと乱暴だ。
まあそんなことは枝葉のことであると言ってしまえばそれまでなので、「一般的な成文憲法の必要性」というテーマに絞ってアンチテーゼを提出してみたい。
まず先に軽くおさらい。憲法とは何か。
一言で言ってしまうと、憲法というのはワイルドカードである。「法律の為の法律」とでもいうべき、国家が法律だの政治姿勢だのを「正しい」と称する根拠となるのが憲法なのだ。国家自体がそのアイデンティティとして抱える法であるからこそ、他国との軋轢においても憲法を持ち出せるし、また相手からも持ち出される。それが憲法だ。
そもそも日本の憲法には、凄く不思議な点が一つある。それは、「国家主体」というものが全く盛り込まれていないということだ。例えばの話、日本国憲法では「国家領土」というものに関して一切触れられていない。まあ国旗とか国歌といった問題も同じくなのだが、いわゆる国家の主体性を定める様な、「これが日本の憲法ですよ」と主張出来る内容とはあまり思えない。成り立ちが成り立ちなのでしょうがないと言えばしょうがないのだが。
私が考えるところ、憲法の最大の実際的な役目というのは、国家の方向を定める際に、内外に「ほら、憲法にこう書いてあるだろ」と主張する根拠になる、という一点である。こればかりは不文憲法では些か難しい。故に、例えば政治・行政・立法の力が複雑に絡み合う様な、いわゆる条例法律では判断が難しいポイントに関して、的確に配置されている憲法が制定されていれば、このメリットはかなり大きい。これは勿論、理念のみならず手続きや手段も含む法文でなくてはならない。何故かというに、理念だけでは「方向性を定める」という目的に対して具体的な効力を発揮しないからだ。
つまり、成文憲法なら成文憲法であるメリットというか、意義の様なものが実際存在するべきなのに、現在の日本国憲法にはあまりそれが感じられない。というよりは、完全に成文であることが裏目に出てしまっていると言っていい。例えばの話、どこかの政治団体の方々が憲法の一部だけを捉えて「平和主義平和主義平和主義ーーーっ」とか「戦争放棄戦争放棄ーーーっ」とか、「護憲」を政争の武器だけに用いようという向きがあるのは完全なデメリットだ。この辺の人々は、憲法の意義とか意味とか成り立ちといったものはあまり深く考えられていない様に思える。
総括すると、「憲法不要」という意見に関しては私は賛同しない。むしろ他国との軋轢が増えそうな気配がある昨今、「明確な憲法」はより必要性を増している、と考える。ただ、それは勿論内外に対して、胸を張って「日本が考えた憲法はこれですよ」と主張出来る内容でなくてはいけない。少なくとも、他国の干渉だの抗議だのの内容を勘案した代物になるのは論外であるとはいえるだろう。
以上、釣られてみたのですがいかがでしょうか。
(1:47 最終段落に一部加筆修正)
2004年12月28日

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憲法はどんな「必要」の上に作られるのか
Excerpt: さて、憲法論議である。 不倒城さんのところでコメント(反論)されていたので、少々まじめに書いてみた(^^;; といっても不倒城さんの反論は、実は僕の主張と矛盾しないのだが(^^;; ま、とり..
Weblog: ハリぼんの世評ナナメ読み
Tracked: 2004-12-28 13:22
日本地域における戦後の混乱を収拾するため
GHQがGHQに向けて作成した「日本占領基本法」になります。
よって、その前提はGHQあって初めて成立するものになります。
現在日本国内のどこにGHQが存在するんでしょうか?在日米軍ではなくてGHQです。何県のどこ市でしょうw
既に存在しないため、この日本国憲法に有効性はありません。
※GHQというのは、連合国軍総司令部=現在の国連軍にあたります。日米安保条約における在日米軍とは全く意味合いが違います。
また、現職の「貴族院議員」の名前を一名挙げてみてください。
まあ、参議院は挙げることができても、貴族院は無理でしょうwこのことからしても、大日本帝国憲法にも有効性がありません。現在機能していないのですから。
しかし、今般の東日本大震災での日本人の行動を見て、海外のメディアは大絶賛しました。あれだけの悲惨な状況にもかかわらず、目立った暴動もなく、炊き出しに並んでいる姿を報道しているのです。体力の余っている若者が炊き出しを手伝っている姿を報道しているのです。海外の常識ではあり得ないことのようです。
「和を以って貴しと為す」
という条文が十七条憲法の第一条に記述されています。
この度の東北の人々は、この言葉の通りに行動していますね。ゆえに、海外のメディアも仰々しく報道したのだと考えられます。
つまり、現代日本にも十七条憲法が生きていて、立派に機能しているということです。
既に十七条憲法があるというのに、なぜ敢えて別途憲法を作らなければならないのか。十七条憲法で十分ではないのか?ここのところを相当考えたいですね。