2010年04月15日

ゲームブック半里を往く その3 スーパー・ブラックオニキス

すいません、狂戦士化しないでマサイヤさんに勝つ方法ってあるんでしょうか。あと創土社の「テンペスト」は一体いつ出るんでしょうか。


実際の所、このゲームブックの最大の謎は、タラミスがあれだけ露出度の高い鎧(いわゆるハイレグアーマー)を着ているのにプレートメイルと1しか防御力が変わらないのは何故なのか、という点だと思うんだがどうだろう。最近では意外と見なくなったが、古き良き時代の「露出度重視鎧」というのをごく当然のように着用しているタラミスさん、職業はどういう訳か聖職者です。チート級の回復術の持ち主ですが、敵も結構チートなので問題ないぜ。


ということで、実に二年半ぶりのゲームブックネタは、前回と同じく鈴木直人氏の作品、「スーパー・ブラックオニキス」について書いてみたいと思う。


スーパー・ブラックオニキス。1987年、東京創元社より発売。著者は、前年に「悪魔に魅せられし者」「魔宮の勇者たち」「魔界の滅亡」のいわゆる「ドルアーガ三部作」を世に送り出し、既にゲームブックファンの間に名声をとどろかせていた鈴木直人氏である。原作としてはパソコン版の「ザ・ブラックオニキス」をモチーフにしており、ブラックタワー、ウツロの街など、大枠の設定は踏襲している。

可能な限りルールを簡略化したとは言うものの、フラグチェックシステム、4人パーティの戦闘システムなどその内容には実験的な部分も多く、立ち位置的には間違いなく「上級者向け」のゲームブックになっていると思う。システム自体の複雑さ故、初版のものにはバグも多かった。まあ、元々のブラックオニキスが結構気が狂った様な難易度だからそれに比べればなんということもないかも知れないが。

まずは参考ページとしてWikipediaを。

Wikipedia:スーパー・ブラックオニキス

こちらのページでは、作品解説含めて、キャラクター紹介・アイテム紹介など、様々なデータを載せてくださっている。素晴らしいデータ量である。

「スーパー・ブラックオニキス」ウツロの街案内

さて、内容の話にいこう。


・ウツロの街の歩き方。

スーパー・ブラックオニキスは、設定や背景についてはPC版の「ザ・ブラックオニキス」を大体踏襲している。攻略目標はウツロの街であり、ブラックタワーであり、ブラックオニキスなのであり、ウツロの街には病院も井戸も墓場もある。

といっても、なぞっているのは飽くまで設定や背景だけであり、その内容や展開は「ザ・ブラックオニキス」より遥かに多彩だ。仲間集めのイベントあり、司法官の屋敷に忍び込むイベントあり、トイレの地下を探索したり、仲間と飲んだり露店をひやかしたり、ゲームブック内で主人公である「テンペスト」は本当に色々な行動をする。

というかテンペストは結構ユニークな性格をしており、プレイヤーの行動次第では黒騎士をくだらないダジャレで硬直させてその間に逃げたり、髪型について指摘されて凶暴化したりする。

ゲームブックの最大の強みは「本であること」だ。ただ遊ぶだけでなく、「本であること」を生かした深みのあるストーリーを経験し、世界観をどこまでも深く掘り進めることに、ゲームブックのゲームブックたる存在意義がある。

そこから考えると、「スーパー・ブラックオニキス」は、理想的な素材に理想的な調理を加えられたと言っていいだろう。シンプルなゲームの上に構築された、見上げるような世界観。ドルアーガと同様の「本であるメリット」を生かしたゲームブックのあり方は、鬼才・鈴木直人氏の面目躍如といったところだろう。

ちなみに、鈴木氏のゲームブックには色々な場面でスターシステムに近い遊びが取り入れられているのだが、このゲームブックにもクルスが出たりメスロンが出たりタウルスが出たりパオト(作者本人)が出たりしている。パオトさんに関しては露店を見れば一目瞭然だが、病院のメスロンとタウルスについては気付かない人も結構いるような気がする。



・ドルアーガを越えた「パーティプレイ」の愉悦。

スーパー・ブラックオニキスの肝といえば、勿論本の上で「4人パーティ」というゲーム性を実現したことに尽きるだろう。

鈴木直人氏の前作「ドルアーガ三部作」では、主人公ギルガメスの仲間として、勿論東洋魔術師の「メスロン」や盗賊王「タウルス」剣士クルスなどなどが登場してくるわけだが、彼らは実際のゲーム上の戦闘や判定に登場してくることはなく、極論してしまえば演出だけの存在であった。

それに対して、戦闘や探索を含めて、完全に「ゲームの中で操る存在」として「仲間」を取り入れたのが本作である。バムブーラもシモンもタラミスも、食事もすれば愚痴も言う、それだけではなく戦闘になればきちんとオーガやサイクロプスをぶった切ったり、タコに向かって火球を放ったりする。

実際に(アイテムやオプション扱いではなく)仲間がシステム上戦闘に参加するゲームブックというのは、ゲームブック全体を見渡してもそこまで多くはない。創元推理文庫で言うと、他にワルキューレシリーズ、ウルフヘッドシリーズくらいではないだろうか。これは恐らく、例えば「仲間が死んだ時の処理が分かりづらい」であるとか、「戦闘が煩雑になる」といった事情が影響していると思うのだが。その辺の問題を「仲間が死んだらフラグを立てておいて、解決するまでは死にっぱなし→その仲間が必要なダンジョンにはいけない」という力技で解決した上で、4人それぞれにきちんと役割や個性があるという多層性を実現している鈴木直人氏の力量には、やはり感嘆する他ない。

パーティプレイがあるということはレベルアップもあるということで、迷宮内で稼いだ経験値を「病院」で消費することによって4人は強くなる訳だが、このシステムもかなり出色だったと思う。「キャラクターを強くする為に何度もダンジョンにいって戦闘する」、「敵に勝てなくなったら適当なダンジョンで経験値稼ぎをする」といったRPG独特の味を見事に実現している。若干成長具合が偏るキライもあったけど。


ちなみに、盗賊「バムブーラ」と魔法使い「シモン」については、それぞれ3キャラの同名のキャラクターから一人を選んで連れていくことになり、各々の性能差・見た目の差が結構激しい。

バムブーラの場合、太っちょ、おっさん、小人の3人から一人を選ぶことになる。一番腕が立つのはウツロの城壁で遭遇する小人であり、ゲーム自体も小人を連れていくと大幅に楽になるのだが、ふとっちょを連れていくと最後の最後で黒騎士をまとめて道連れにしてくれるイベントが見られたりもする。

シモンの場合、東洋風、老人、若者の三択であり、性能だけから言うと前者二人はかなり不利なのだが、最初から魔法が使えるアイテムを持っているという事情もある。ただ、アイテム集めの労を負ってでも若者シモンを選ぶメリットは大きい。

ちなみに、作中のイラストでシモンとバムブーラが(登場シーン以外)ことごとく黒塗りになっているのは、3キャラ各々で見た目が全然違うことによる悲劇であろうと思われる。おかげでイラスト中に登場出来るのは殆どテンペストとタラミスのみである。別にいいけどさ。需要はタラミス以外ないのかも知れないし。


フラグの話が出たので触れるが、このゲームブックのフラグ管理システムは、ゲームを深くするのに必須なものでありながら、作者に対しても読者に対しても鬼門であったと思われる。何かイベントを行うと「A-1,2,3にチェックを入れる」といった感じでイベントを起こしたことを管理するのだが、これがまたバグも多ければつけミスも多い。確か初版では、5,6箇所くらいはフラグに由来するバグがあったのではなかったか。

このフラグ管理システムは、更に形を複雑にし、「キーナンバーシステム」として林友彦氏に採用されることになる。


・「また間違えやがった!」(回転ドア前、バムブーラさん談)

このゲームブックは、多分ドルアーガ以上にマッピングが重要なゲームブックではなかったかと思う。「緻密なマッピングを意識している」という点では、恐らく創元のゲームブック中でも随一だったのではないだろうか。

探索しなくてはいけない迷宮はレベル1からレベル5、及びブラックタワーだが、それらダンジョンからウツロの街に至るまで、どのマップも明確に「施設の配置」「展開との連携」を考えられており、マップなしで適当に進もうとすると、このゲームブックすっげえ苦労する。特にレベル3の回転ドアのダンジョンなんかは、マッピングが苦手なライトプレイヤー泣かせだったと思う。

とはいえ、方眼紙にせこせこと地図を書いていき、地図がだんだん埋まっていく楽しさというのは、やはり絶妙な楽しさを持っていたと思う。

Wizardry程ではないかも知れないが、「ドルアーガ」や「ブラックオニキス」といったゲームブックがきっかけでマッピングの楽しさに目覚めた、という人も、案外少なくないのではないだろうか。このマッピングの楽しさは、更に形を変えて、「パンタクル」「パンタクル2」といった鈴木氏の作品に継承されていくことになる。


取り敢えず、金貨と魔法のマントを人数分保持したアドベンチャーシートが私の手元にはまだ残っているのですが、「スーパー・ブラックオニキス2」は一体いつ出るのでしょうか?ファイアークリスタルだろうがムーンストーンだろうが何でもこいだぜ!


ということで、いー加減長くなった上、読んでいる人の中でわかる人がどれだけいるのか大変謎なテーマである為、今回はこれくらいにしようかと思う。

次回はいつになるか分からないが、同じく創元の、あの辺とかあの辺のゲームブックについて書くことになりそうな気がする。
posted by しんざき at 13:03 | Comment(4) | TrackBack(0) | ゲームブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
うわー、めっさ懐かしい。
確かにマッピング必須でしたよね。

>黒騎士をくだらないダジャレで硬直させてその間に逃げたり

2回目は見切られてあっさり捕まったりしましたね(笑)。
Posted by FORCE at 2010年04月15日 22:20
林友彦氏のキーナンバーシステムは「ネバーランドのリンゴ」の時点で既に使われていたので、
スーパーブラックオニキスよりも前ですよ〜。
記号によるチェックシステムは双葉社のファミコン冒険ゲームブックで多用されてた記憶がありますね。

四人パーティを操作させながら煩雑ではないシステムはホントに見事でしたねえ〜。ワルキューレやウルフヘッドは仲間の管理がめんどかったのなんの…(笑)。
Posted by マッターミーヤ at 2011年07月21日 23:53
↑↑
ところがギッチョンw
付録のアドベンチャラーズ・インに
愛読者有志が創作した幻のパラグラフがあるのです!

その条件とは2回目に見切られてマサイヤの前に引っ立てられる事です。
何とマサイヤ自らとっておきの話をしてくれるのです。
題して「呪いのウツロ饅頭」……
Posted by 「あんた、文無しだね」は死のメッセージ at 2013年12月17日 14:54
ギッチョン
Posted by at 2013年12月26日 00:25
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