2010年05月18日

「テレビに出られることが報酬」という意識について。

いつものことだが、特に一般化するべき話題ではない。こんな考え方もあるのか、という程度で。


先日、某テレビ局に勤務している知人と話す機会があった。というか、とある飲みの場で一緒になった。

あまり世評がどうとかメディアがどうとかいう話にはならなかったのだが、ふとした拍子に「インタビューに対するインセンティブ」という話題が持ち上がった。通常、たとえば街頭インタビューなどで顔を晒してインタビューに応じている人は、顔を晒すというリスクの割に殆どインセンティブを受けていない。これは何故なのか、あるいは遠からずインセンティブを生じないインタビューというものは難しくなるのではないか。そんなことについては以前から考えていた。


それに対する回答がこうだった。「いや、テレビに出られるってことが十分インセンティブになるだろう?


直感的には、私はその回答は余りにも時代錯誤だと思ったのでそう指摘したし、それ程深まりもせずにその話題は立ち消えになったのだが、ことは思ったより根が深いような気がする。

私自身は、「テレビに出ること自体が報酬になる」という意識が未だに一部には残っているんだなあ、と思って、率直にいって驚いた。ただこれは、「自分をフィルタなしで(あるいは極めて薄いフィルタ越しに)広範囲に広める」ということをリスクと考えるかリターンと考えるか、ということなのであって、前者はかなりWebに偏った考え方なのかも知れない。

現在、Webでは、広範囲にわたって自分を発信するということが極めて容易に出来るし、それは既にリターンを通り越してリスクであるということがかなりの範囲で知れ渡ってしまった。昔出来なかった「自分の言葉の発信」は、今は既に当たり前のものであり、当たり前を通りこしてちょっと扱いに注意しなくてはいけないものになっている。


それに対して、「テレビに出ること自体が報酬になるんだから、映してやれば喜ぶだろう」というような意識が残留している部分がもしあるとすれば(重ねて言うが、一般化するつもりはない)、それはいわゆる「メディアとWebの意識の壁」の一因になっているのかも知れない。
posted by しんざき at 18:31 | Comment(8) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
製作会社(テレビ局)と制作会社(実際に番組を作る会社)の違いと、制作会社が問題を起こしたら(あるある大事典とか)製作会社(フジテレビ)にも道義的責任が発生するという社会の構図が、Webとは大きく違うところです。テレビはスポンサーへのクレームもありますし。
掲示板で何か問題が発生した場合、掲示板の管理者やプロバイダが責任を負うのは、まぁ利用者間での騒動程度で、2ちゃんねるでも裁判所がIPアドレスの開示を命令したらそのまま従いますし、ひろゆき氏の訴訟は民事訴訟ゆえの(ry)。
Posted by てんてけ at 2010年05月18日 20:00
街頭インタビューは誰も彼もが素直に応じるわけでもなく、何人にも声をかけたなかで、「テレビ画面に映りたい」人だけが回答するのではないでしょうか。
映りたくないと考える人なら、元からインタビューに声かけられても立ち止まりません。
将来、誰も立ち止まらなくなれば、街頭インタビューという方法も変わるのでしょうね。
Posted by いるか at 2010年05月18日 21:03
一般人がテレビにでることにメリットなんてほとんどないっていうのが
マスコミ関係者にはまるでわかってないようなのに驚いた
むしろデメリットしかないんじゃないのか
変に目立っても陰口叩かれるだけだろ
Posted by   at 2010年05月19日 12:17
世の中には自己顕示欲を満たす為に生きているような人も多いですから、自己主張の場の少なかった昔は、顔をさらすリスクを負ってでも一般人が自分の意見を公に主張できる街頭インタビューはなかなか魅力的なものだったのかも知れませんね。

私見ですが普通の人の自己顕示欲というのは必ずしも社会的地位と連動していなければならないというものでもなく、自分が肯定されているという手応えが得られれば、それが、例えばネット上での賛同や共感のような実益の無いものでも意外と満足してしまう場合が多いように思えます。
設定だけ作って満足してしまう素人の創作欲と似てるというか。
その程度なら、顔と実名を晒す危険を犯した上、他人のフィルタを通してしか自分の意見を発信できないマスメディアより、実益が無くても比較的安全に自分の主張を直接発信できるWEBの方が魅力的でしょう。

逆にマスメディアの世界に自分から飛び込むような人は良くも悪くも自意識の強い人が多いですから、世の中顔を出してなんぼだろうという感じでしょう。
ネットの匿名性に関する議論と同じ意識の隔たりを感じます。
Posted by at 2010年05月19日 12:59
TVというメディアに露出する事がステイタス
大多数ではないが、現在もそのように思っている人が少なからず存在するのも事実

ただ製作者側が「出れる事がインセンティブ」この発言をするのは、明らかに傲慢かと
TV業界の衰退とは、そこに携わる人間の怠慢だと思っている

かのビートたけしさえが発言してる
「今後テレビからネットに移行するタレントが続出する」


TV業界の中の人たちは、自分の仕事を特別視・神聖化してきたのだと思う
「ギョーカイ」という言葉自体がその表れかと
もうそろそろ目を覚まさないと

TVなんてのはただの入れ物
重要なのはそこに映されるソフト
こう言った当たり前の事を受け入れる事ができないから、TVや新聞というのは衰退の一途を辿っている
Posted by at 2010年05月20日 09:26
「テレビに出ること自体がインセンティヴ」になるような目立ちたがり一般人は、今の時代ならWebで動画作って公開したりブログ書いたりしているだろうから、それこそインセンティヴなんぞ消えてるよなぁ。。。。
まさに時代錯誤で、しんざき城主はその知人の性根を叩き直してあげた方がいいかもしれません。
Posted by NOBIE at 2010年05月21日 05:54
街頭インタビューでテレビに出ることは「自分をフィルタなしで(あるいは極めて薄いフィルタ越しに)広範囲に広める」どころか、「自分が(TV番組制作者側の)どんな恣意的なフィルターにかけられた上で広範囲に広められるかわかったものではない」という、極めて大きいリスクであるという認識すらも広まってきているように思いますがどうでしょうか。
Posted by red at 2010年05月23日 01:08
街頭インタビューって皆答えなくなったから(裁判傍聴とか特殊な場合はさらに)エキストラ使ったりするんじゃないかなぁ……。
Posted by at 2014年08月13日 10:03
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