2010年08月24日

「ドラえもん」と「キテレツ大百科」の比較論。

言うまでもなく、「ドラえもん」と「キテレツ大百科」はいずれも藤子・F・不二雄先生の代表作の一角である。この二作は、色んな点で相似しており、かつ色んな点で相違している。

この二作の似たところ、違うところを分析してみると面白そうな気がしたので、ちょっとこのエントリーでまとめてみる。原作版とアニメ版を厳密に区別していないことについては予めお断りしておく。長文なのでお暇なときに。


以下はWikipediaの参照URL。ちなみに、作品の成立自体はドラえもんが1970年、キテレツ大百科は1974年で、キテレツの方が新しい。

Wikipedia:ドラえもん

Wikipedia:キテレツ大百科



○この二作が似ているところ。

・主要キャラクターの配役。ドラえもんにおいてはのび太・ジャイアン・スネ夫・しずかちゃん・ドラえもん、キテレツ大百科においてはキテレツ・ブタゴリラ・トンガリ・みよちゃん・コロ助と、配役は極めて似通っている。「線の細い主人公・大柄なガキ大将・マザコンのボンボン・ヒロインの女の子・ロボット」というところまで同一。

・ドラえもんにおいては「ひみつ道具」キテレツ大百科においては「キテレツ斎の発明品」という、奇想天外なアイテムがどちらの作品にも登場し、そのアイテムが色々な騒動を起こしたり、あるいは騒動を解決する、というのが話の中核である。

・ドラえもんとコロ助、いずれも特殊な「異邦人」が前面に出ている。ドラえもんはドラ焼き、コロ助はコロッケが好きなど、特徴付けも似通っている。

・ヒロインの立ち位置。しずかちゃんとみよちゃんは、いずれも真面目系、性格的には殆どアクが無い美少女で、主人公から思いを寄せられている。


○この二作が違っているところ。

・主人公の立ち位置。徹頭徹尾いじめられキャラであるドラえもんののび太に対して、キテレツ大百科のキテレツはそもそもいじめられキャラではない。また、ダメさを強調されるのび太に対して、キテレツは(特にアニメ版では)物語が進むごとにどんどんしっかりしたキャラになっていく。端的にいえば、のび太よりキテレツの方が人間ができている。

・ドラえもんにおいてはひみつ道具を出していたのはドラえもんであり、のび太はそれに(基本的には)頼り切りな立場だったが、キテレツ大百科において発明品を作るのはキテレツの役目である。つまり、キテレツはドラえもんの役割も兼ねていることになる(しかも自作)。

・一方、配役的にはドラえもんに近い位置にあるコロ助は、基本的にマスコットキャラクターであり、大きな力を持たない。騒動を起こす役回りも多い。

・以上から、キテレツはドラえもんにおける「主人公としてののび太」の他、「ひみつ道具を出すドラえもん」や「出来杉」の属性をある程度受け継いでおり、コロ助は「異邦人」としての属性をドラえもんから、「狂言回し」に近い立ち位置をのび太から、それぞれ受け継いでいることが分かる。

・人間関係。ドラえもんにおいては、ジャイアンとスネ夫は物語終盤に至るまでいじめっ子キャラであり、険悪な人間関係が描写されることも(アニメ・原作問わず)頻繁にあったが、ブタゴリラとトンガリはいじめっ子的立ち位置ではない。物語序盤ではキテレツと衝突することもままあったが、特に中盤以降はキテレツのパートナー的立ち位置、あるいは騒動の起こし役になることが多い。相互の人間関係も基本的に良好である。また、ブタゴリラとトンガリのアクもジャイアン・スネ夫よりはだいぶ薄い。


乱暴に要約してしまうと、キテレツ大百科は「のび太がドラえもんの属性を受け継いで超パワーアップした「ドラえもん」」といえるのではないか、と私は思っている。


そもそも、ドラえもんにおいて何故のび太はいじめられっこだったのか?それは、物語の柱が「のび太が騒動を起こす or 騒動に巻き込まれる→ドラえもんに泣きつく→ドラえもんがひみつ道具を出して解決」という展開だったからであり、その為に「いじめられっこ」という属性が適していたからだ。のび太が当初いじめられっこだったからこそ、成長物語としてのドラえもんも成立した。

それに対して、キテレツ大百科では騒動を起こす役がコロ助やブタゴリラ&トンガリなどにも分散されており、必ずしもキテレツが騒動の起点ではない。つまり、のび太のトラブルメーカー的役回りが分散することによって、主人公がいじめられっこである必要性が消滅した、と捉えることが出来ると思う。


「ドラえもんというパターンの打破」を目指して、藤子先生自身が自らの作品を本歌取りした作品がキテレツ大百科、という側面は多分あるのだろう。漫画の中とはいえ相当ひどい境遇だったのび太(及び、のび太に投影された藤子先生)の救済、というような意味ももしかするとあったのかも知れない。いってみれば、「救済されたのび太」がキテレツである。

その結果というべきなのかどうか、ドラえもんではある意味ドロドロとしていた小学生的人間関係が、キテレツ大百科ではかなりの部分隠蔽されることになった、という指摘をすることも可能だろう。とはいえ、キテレツ大百科が長寿アニメとして子供達の人気を博したのは事実であり、いい悪いの問題でもないとは思うが。



ちなみに藤子不二雄作品には、A先生、F先生問わず、現代日本とは異なった世界から異邦人が来訪して話の中核になる、「異邦人もの日常漫画」が非常に多い。ドラえもんは勿論だし、キテレツ大百科におけるコロ助、忍者ハットリくんにおけるハットリくん、オバケのQ太郎、ウメ星デンカ、ジャングルくろべえ、怪物くん、パラソルヘンべえ、チンプイなどなど枚挙に暇がない。

で、これらの作品の主人公を見ていると、「いじめられっこ」という明確な属性を持っているキャラはあまりおらず、実はドラえもんののび太の方が特殊な立ち位置にあるのではないかという側面もあるのだが、まあこれについては項を改めて。



一応まとめておく。

・キテレツ大百科とドラえもんは、見た目は似ているが中身は結構本質的なところで相違していると思う。
・キテレツはドラえもんを吸収したスーパーのび太。
・あだ名だけ見ていると、一番いじめられているのはどう見てもブタゴリラなんだけど、なんかあれ自称らしいですね。おかしいだろブタゴリラ。



今日はこれくらいで。
posted by しんざき at 17:53 | Comment(18) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
>ブタゴリラ

肉食系ワイルドアピールとかでしょうか?
Posted by クロマル at 2010年08月25日 20:57
キテレツ大百科がドラえもんと違うところと言えば主要キャラに彼氏彼女がいる事でしょう。
Posted by gum at 2010年08月25日 23:05
薫って名前が女々しいからブタゴリラだっけ。
ベンゾウさんとかの年上キャラがレギュラーなのもキテレツならではでしたね
Posted by at 2010年08月25日 23:46
>みよちゃん

ヒロイン的存在なところでは、ドラえもんのしずかちゃんのキャラ設定だけど・・・私的には、「カードキャプターさくら」の木之本桜のほうに近い美少女キャラだと思っています。
みよちゃん・・・ステキ!
Posted by かがみん萌え at 2010年12月30日 21:02
コロスケはノビタくんよりはいい奴だと思う   



・・・かわいいし♥
Posted by コロスケ at 2011年01月03日 14:59
のび太君とジャイアンの扱いは酷すぎると思いました。
のび太君は誰にでも優しいし、ジャイアンは正義感を備えています。
この2人を悪く言ってる人は物事の本質を見られない洞察力のない人だと思います。

ヒロインは結構図々しくてワガママなとこがありますが、みよちゃんの方が人間っぽさがあって好きです。
Posted by ようすけ at 2011年04月07日 16:23
のび太の優しさやジャイアンの正義感が際立つのは大長編映画の時が多く、漫画やTVアニメなどではイジメられっ子とイジメっ子ですよ。
そりゃあたまにはそういうエピソードもありましたがキテレツと比べればかなり少ないと言って良いでしょう。

まぁ最近のアニメを見てないので色々ウルサイTV業界ですからそれも変わったかもしれませんが。
Posted by 名無し at 2011年05月13日 14:07
コロスケで、バケツとボールで出来てるの?
Posted by at 2011年06月06日 18:49
わかりやすく面白い考察ですね。設定が極端でない分、キテレツのほうが見やすかったかなとは思います。
でもドラえもんのほうが強烈な印象を残すんですよね。ユルいようでいて容赦のない描き方がヒットにつながったのでしょうか。
Posted by tiara at 2011年06月12日 14:14
しずかちゃんのお風呂などのお色気なシーンも考察の価値あり
(当時の漫画界では「エロ」は必要不可欠だった)(みよちゃんにはエロが少ない(ない?))


この記事を見て自分なりに思ったことは
「どちらかがどちらかの「理想」なのではないか?」ということ
のびたの理想→「奇天烈大百科」
キテレツの理想→「ドラえもんの世界」
Posted by at 2011年06月18日 01:54
おもしろい記事だった
Posted by のびた at 2012年03月07日 10:34
私はキテレツの数々の発明などによりドラえもんの未来のような科学の進歩があったのではと思いました
Posted by 面白いですね at 2012年04月09日 17:17
二つの物語に関係を持たせるなら、むしろ、ドラえもんが、進化版キテレツで、機械に頼った挙句に、出来の悪いのび太や、いじめなどの人間関係のごたごたを生み出してしまった。とも見れますね!
おもしろいw
Posted by at 2012年12月08日 13:54
ドラはじめF作品の中核→宇宙や異世界、未来を目指す
キテレツ→日常と過去に重点を置いている
 
キテレツがこんなにも愛されたのは、日常の各家族(木手家、熊田家、トンガリ家、みよこ家)にキャラを作り、町内や商店街、近所のキャラ(ベンゾウさん等)、先生を味方にした点もあると思います。
「親も教師も近所の人も誰も悪い人は居ない。」
に尽きるでしょうか。
ブタゴリラの両親(肝っ玉母ちゃんとらっしゃい親父)、トンガリの両親(ざます口調ママと金持ちのパパ)
キテレツの両親(小太りの父とスマートな教育ママ)
に愛情がある。(みよこはじめヒロインの両親は通常通り)
七三の先生(佐々木先生?)ですらも、4人の味方になっている。

言い換えれば、異邦人(コロ助)サイドにキャラがいない。居ても故人のキテレツ斉様だけで、宇宙や異世界に引きずり込めない。
宇宙や異世界が良いのか悪いのかではなく、キテレツ達の日常こそに面白みを見つけたこの名作は言うまでもなく名作。
Posted by   at 2013年07月20日 01:46
Posted by at 2013年10月18日 20:23
キテレツはのびたと違っていざって時はへたれなきがする
Posted by at 2013年10月18日 20:25
リアルタイムでテレビを見てたけど、奇天烈はさっぱり面白いと思わなかったなあ。
仕方なしに時間つぶしに見てた思い出があります。
子供心ながらドラえもんと大差ない展開だと思い、
にもかかわらず妙に悟った感じのキテレツには感情移入できず、コロ助にはイライラさせられるばかり。
コロ助に関してはのび太的ポジとはいえロボットだけにやはり感情移入対象ではありませんでした。
ドラえもんに比べると、キャラが薄く感じられたかもしれませんね。
Posted by at 2014年03月07日 00:11
F世界における「唯一無二のキテレツの魅力」は
「不思議な道具を使って人を助ける」ことだと思います。
未来や宇宙に行くことでもなく、他人にイタズラや仕返しするわけでもなく(たまにあるけど)、人間4人の能力を上げるでもなく、異邦人(コロ助)が絶対的な力があるわけでもなく
「過去や近所の人を救って、自分ら4人も成長する」ことが一番面白いのだと思います。
というのも、
キテレツ=ドンくさいのを自覚してるが発明が出来ればいい、たまにみよちゃんに振り向いて欲しい
ブタゴリラ=自分の家の野菜が普及すればいい
トンガリ=ママがいればいい、ブタゴリラやキテレツと遊びたい
みよこ=キテレツの面白い発明が見たい
みたいな今の自分に満足している。それ以上の能力は求めてないから、他人を助けることができる。利害が一致しているからコロ助とキテレツと一緒にいられる。
そしてそれ以上の心情はOPやEDで歌われる(お嫁さんに〜とかボディーだけレディーとか噂のキッスとか)。そこが見てる側も納得させられる。

他の宇宙や異世界をめざすF作品が悪いのではなく、日常と過去で11歳の4人が成長できる題材があるからキテレツが魅力的なんだと思う。
Posted by rit at 2015年10月25日 00:18
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