下記の騒ぎをみて思ったり、ちょっとTwitterにつぶやいてみたりしたこと。Twitterで頂いたご意見も参考にしている。
東京ゲームショウでの発表以後のアイマス組の反発まとめ
もっとも、アイマス騒ぎは思考のトリガーになっただけで、私はアイマスに関して全く知識がないので、これに当てはまることなのかどうかはよく分からない。一応ゲームに限らず、もうちょっと広いスコープの話のつもりで。
企業にとって、顧客には二種類のカテゴリーがある。まだお客さんになってくれていない見込み顧客・新規顧客と、既存の顧客である。
「新規顧客の獲得」と「既存顧客のメンテナンス」は、勿論両方大事なのだが、時折方向性が偏ることがある。なかなか同時には出来ない。
そんなにたくさんのケースを知っているわけではないから一般化するつもりはないんだけど、企業のディレクションを行う層に時折見られる傾向として、「既存顧客離れ」よりも「新規の客が来ない」ことを恐れる、というものがある気がする。
理由は推測しか出来ないけれど。ある程度一般的なケースで、
・パイを広げなくてはならない、という固定観念
・株主に対するアピールの必要性
・閉塞感に対する焦り
・元々企業の経営層に開拓者的気質がある
・既存顧客からの売り上げは限界が見えているが、新規顧客の売り上げはまだ可視化されていない→限界が見えない
などの要因が想定出来ると思う。
新規開拓は勿論重要だけど、問題は時として新規開拓という方向性自体が既客のメンテナンスと相反することだ。こうした場合、結構多くのケースで、ディレクターは新規顧客獲得の側に舵を取る。つまり、「新規フィールド獲得の為の新機軸」にコストを振り向ける。ただ、この際舵取りがイコール既客の切捨てと見なされてしまうと、エラいことになる場合がある。既存顧客が離れるのは早いし、残った手で新規顧客の獲得に失敗したりすると顧客メンテナンスは覿面にスッ転ぶ。今まで、数知れぬ商品がそういった「路線変更」で大失敗してきたと思う(勿論路線変更で成功した商品も数知れないだろうが)。
じゃあどうすればいいのかというと。まあ分野によって色々だし、一概にいえるもんでもないと思うが、基本的にはアピールと変化幅の問題だと思う。既存顧客に繋がるチャネルで、既存顧客に対して媚をうっておく必要がある。
本来、既存顧客は特定商品を好んでついてくれている客なので、メンテナンスのコストは新規顧客獲得程は高くない筈なのだ。「あなたたちも重視していますよ」という姿勢を適切にアピールできれば、大抵の場合はそれで済む。そのコストを主張出来る人、既存顧客の視点を把握している人を、きちんと意思決定の場に据えておかなくてはいけない(勿論この「既存顧客の視点を把握する」というのは簡単なことではないが、ここでは置く)。
上のアイマス騒動の場合は、わざわざ既存顧客の総本山みたいな場で、明らかに新規顧客獲得する気満々の舵取りをぱかすか打ち出した為に騒動を招いてしまったんじゃないかなあとか。費やせるコストが限られているのはよく分かるので、見せ方や見せる順番をもうちょっと工夫すればよかったんじゃないかなあとか思ったのだが、まあアイマスに関わる事情をあまり知らないので、この辺は放言。
取りあえずこの辺で。
2010年09月23日

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「ファンは少ないが、投資額はデカい」というコンテンツだったようです。
ファンが少ないなら新規顧客を得ようとするのは当然ですが、今回ばかりは損失が大きすぎるんじゃ・・
日本のゲーム業界の経営者は傲慢な人が多いような気がします。
本当に新規開拓なら、よく言われてる通り、女性の多いプラットフォームでガールズサイドを出せばいいだけなので。
ちなみに実験的に男性を加える話であれば、DS版で男性を加えていましたね。
結果売り上げは過去最悪レベルです。ましてや今作が女性層の少ないxbox360で発売という点からも
新規開拓の為のジュピター追加という思い込みは不適切かつ不自然と思われます。
アイマスは儲かってなかったと仮定するとまた初期条件が変わってくるのではないか
前作のキャラクターのうち、何人かをリストラしたのがきっかけです。
既客の購買理由を削除したわけです。
その「理由の説明なし」に。
直接ではないですがプロモーションに関わっていたもので
個人的には既客へのプロモーション手法が根本的におかしいと感じました。
削除理由自体も、そもそも商品としてパイを減らすこと前提だけに、ものすごく疑問ではあります。
本文中の引用と同じところの2008年の記事です
http://d.hatena.ne.jp/hajic/20080118/p6
>DLC売上3億円突破 世界第3位
>市場規模はゲームと関連商品を合わせて約60億円
そもそも男だらけで女性がほとんどいないプラットフォームで「男性キャラを追加」したことで、
「一体これはだれが得をするというのだ、前作で出来た事が出来なくなっただけではないか」
という感想をほとんど全員が持ってしまったのが今回の騒動の原因であると認識しています。
私自身はアイマスはアーケード版を脇から見ていた程度ですが、現実の人物で言えば「ドヤ顔で嵐から2人辞めさせ、代わりに新人グラビアアイドルを2人入れた」ようなもんです。
これはもう怒らない方がおかしいかと…。
http://anond.hatelabo.jp/20100922153904
http://anond.hatelabo.jp/20100919213304
要するに、XBOX360ユーザがこれ以上増える可能性がほぼゼロな現状で、既存キャラをNPC化して既存ファンを切り捨てた理由が「女性層の獲得」とはとても考えられない、という事です。
おそらくメーカーの目論見は別の所にあるか、ブランド価値崩壊を覚悟してでも「そうせざるを得ない事情」があったか、どちらかだと思います。
もし前者だとすれば、全キャラ攻略(プロデュース)可能な「完全版」でしょう。ハードもより普及台数の多いものへと乗り換える可能性もあり得ます。
男キャラが増える分には良いけど、女キャラを減らすなと。
毎晩スカイプで何時間も愚痴聞くの大変でw
彼は相当ぶっ壊れた論調も交えて説明をしてくれましたけど、要するに「バンナムが俺達を捨てた……」という認識だそうです。
アイマス制作の上の人達がどういう意図で男キャラを増やしたのかは定かではありませんが、既存のユーザがしんざきさんの言うような顧客切捨て感を感じて、フォローもしてくれなかったという受け取りをしているのは間違いないようです。
私自身は、過去の作品で一度最悪の結果を見ています。
アイマスと同じようにコアなファン層を抱えていた「カルドセプト」シリーズ。私もその一人でした。
もともとセガが販売していましたが、バンダイナムコから発売された際、明らかな調整不足で無理やり発売した挙句、シリーズそのものが未だ破綻状態になっています。
今回もそういう流れになってしまうのでしょうか、それだけが心配です。