2010年11月05日

レトロゲーム万里を往く その98 ロイヤルブラッド

初期光栄SLGの文法、みたいなものがあると思う。


今更いちいち言うまでもなく、今はコーエーであるところの光栄は、SLGのリーディングメーカーである。「三國志」や「信長の野望」のような歴史SLGを始め、特に80年代中期から90年代に至るまで、コンシューマーにおける「歴史シミュレーションゲーム」というシーンは光栄を中心に回っていた、というのは決して言い過ぎではないだろう。光栄のSLGを遊びたいが為に高いPCに手を出した人も、光栄のSLGをきっかけに歴史に興味を持ち出した人も、当時のゲーム好き青少年の中には山のようにいた筈だ。その傍らエロゲーの始祖を出していたりもしたが。

で、光栄の歴代SLGを見ていると、提督の決断やジンギスカン、ランペルールから項劉記に至るまで、殆どは現実の歴史や実際の文献を下敷きにしたものであって、架空の世界を舞台にしたものというのは殆どない。

おそらく1990年当時の光栄には、「客層を広げる」という意図は間違いなくあった筈だ。1980年代を通じて、史実を元にした戦略シミュレーションの客層は十分裾野を広げることが出来た。歴史もの好きなファン、割とガチなシミュレーション好きなファン、そういった客層の獲得については、十分な成果を挙げることが出来た。


で、これは単なる私の想像なのだが、「三國志や信長はあの路線でいいとして、新たなファン層を獲得する為にはどうすればいいか」という話が出た時、DQやFFが完全にメジャーシーンに立っていたあの時代に、「じゃあファンタジーRPGファンにアピールできる、シミュレーションとしてはライトなもの作ればいいんじゃね?」という意図の下、ロイヤルブラッドが作られたのではないかと、私はそんな風に思うわけである。


ロイヤルブラッド。ウォーシミュレーションゲーム。PC版を端緒に、1991年8月29日、光栄よりファミコン版発売。翌1992年にはメガドライブ、スーパーファミコンにも移植されている。光栄、あるいはシブサワコウ氏は、このゲームに「イマジネーションゲーム」というジャンル名を冠として持たせていた。


恐らく舞台となる「イシュメリア」のモデルは、サクソン人支配時代のイングランドの筈だ。ケルト神話のエッセンスを絡めつつ、そこに展開されているのはごくオーソドックスな「剣と魔法とモンスター」の世界観であり、ドラゴンも出ればワイバーンも出るオークも出る、魔法も飛ぶが弓や大砲も飛ぶ。素晴らしいBGMを背景にゲームを彩るのは、信長や三國志と同様多彩な武官・文官達だ。


ゲーム的には「ファンタジー世界を舞台にした三國志」と説明するのが一番てっとり早いだろう。とはいえ、この当時の三国志(89年にIIが出ている)や信長の野望(90年に武将風雲録が出ている)と比べても、そのゲーム性は相当シンプルであり、難易度的にもかなりライトであることから、「あまり戦略シミュレーションに慣れていないゲームファン」が対象であることを窺わせる。


先に参照URLをあげておこう。

WikipediaのURLはこちらになる。

Wikipedia:ロイヤルブラッド

ほぼそのまま説明書の内容が参照出来るページはこちら。グラフィックもある程度閲覧出来る。

げーむのせつめいしょ:ロイヤルブラッド


さて、ゲームの話をしよう。


・ファンタジー版「三國志」の出来栄えは?

SLGとしてのロイヤルブラッドの特徴は、幾つかの項目で言い表せると思う。

1.簡素化された戦略コマンドや武将のステータス
2.軍師にかわる、「相談役」の存在
3.ファンタジー色を前面に押し出されたストーリー・グッドイベント・バッドイベントの存在
4.難易度が低いとはいえ、部隊の向きや間接攻撃などを考慮にいれる必要のある戦争シーン
5.宝石魔術師や第五部隊の存在


順番に見ていってみよう。

まず、1、2の要素は分かりやすい「ライトユーザーの取り込み」を狙った要素だ。

ロイヤルブラッドのコマンドや武将のステータスは、同時期の「武将風雲録」や「三國志2」などに比べると随分と簡素化されている。武将の能力は、基本的には政治力、軍事力、魅力のみ。戦略コマンドは軍事、民政、対外の三つに大別されており、軍事は戦争や戦力調達、民政は開発や施しと、その内容も実に単純だ。数年前の初代三國志で、コマンドが15もの小グループに分かれていたことを考えると、UIは非常に整理されているといっていい。

そして、三國志や信長ではある程度能力が高い武将を配下にしないと得られなかった「助言役」が、ロイヤルブラッドではゲームスタート時から標準装備である。

この相談役も、「民政家の女性」「初老の軍人」「老人」「道化師」の4人から選べるのだが、それぞれ同じことを言うにも全然内容が違っていてなかなか面白い。軍人は二言目には「○○を攻めるは今ぞ!」とかけしかけてくるし、道化師は「面白い傭兵をやとって民に見せてあげましょう」などと何がなんだかよくわからないし、なかなかにバリエーション豊かだ。まあ大体においてゲームの展開には役立つ、チュートリアル的な助言を出してくれる。

上記のバリエーションに加えて、3、ストーリーの見せ方や導入にもひと工夫されている。

ゲーム開始時に使用君主を選ぶと、その君主と部下、宝石魔術師たちの会話の形で状況を教えてくれたりとか。武将のグラフィックもエランやレッドワルトのような美形あり、女性あり、ショタあり、おっさんありと非常にバリエーション豊かで、プレイヤーの引き込みに一役買ってくれる。「頭でっかち」とか「武力一辺倒」とか「魅力で勝負!」とか、さまざまなタイプの武将がいて、プレイヤーの収集欲を刺激するのも光栄戦略シミュレーションの伝統といえるだろう。

三國志や信長でいう「豊作」とか「水害」といったイベントについても、ロイヤルブラッドでは例えば「レプラコーン」が現れて金貨をくれたり、「エルフ」が現れて民の忠誠度を上げてくれたり、逆にピクシーがいたずらをして土地の価値を下げてしまったりと、随所随所にファンタジー色が強い演出が施されている。

基本的には、民政に力を入れれば入れるほどグッドイベントがべきべき起こって、ゲームがどんどん楽になるというバランスで、これも戦略ゲームに不慣れな初心者に「取り敢えず開墾・施ししておきな?」という基本を学ばせるのに役立っていると思う。




・戦場の華、「第五部隊」の活躍。

さて、ロイヤルブラッドのもう一つの側面、戦争と傭兵の存在についてだが。

ロイヤルブラッドは当然ウォーシミュレーションなので、戦争をする。内政で整えた物資を使って兵士を雇い、隣国に攻め込んだり攻め込まれたり迎撃をしたりする。この辺も、流れは三國志や信長と一緒だ。


とはいえロイヤルブラッドの戦闘は、やはり三國志や信長に比べると単純だ。火計もなければ天候も風向きもない。ただ、「兵力は4+1個の部隊に分けられ、それぞれが向きを持っている」「後ろから攻撃されるとダメージが大きい」「一部の部隊は間接攻撃が出来たり、柵を作れたりする」といった要素が、戦術ゲーとしては大きいだろう。


そんな中でも異彩を放っているのが、「第5部隊」の存在である。

このゲームでは、通常の兵力の他に、「傭兵」を雇って戦わせることが出来る。傭兵はスケルトンやオーク、ガーゴイルといった小粒なモンスターであったり、サラマンダーやワイバーンといった大型モンスターであったり、ランツクネヒツやパイクスのような傭兵部隊であったりする。そういった面子に加えて、ゲームの中心でもある「宝石魔術師」やラスボス的存在「王冠のドラゴン」といった部隊が猛威を振るう。こういった、「通常の兵力外」の連中が第五部隊におさまるわけであり、この第五部隊の使い方こそがゲーム攻略の鍵だ。

兵力自体が少ない時でも、ある程度お金と名声があり、領地に傭兵が駐留しているときなら、プレイヤーは傭兵を雇うことが出来る。あるいは、手元に宝石魔術師がいるなら、第五部隊として戦争に参加させることが出来る。彼らの能力は強力だ。単純に攻撃力が高いだけでなく、間接攻撃が出来るファハンやガンナー、サンダラスやミーティアといった連中なら、離れたところから瞬時に相手戦力を壊滅させることすら出来る。また、ハイランダースのような一部のユニットは、雇うのにかなりの名声が必要とはいえ、王冠ドラゴンすら圧倒するほどの戦力を有している。

こういった傭兵を手元において運用し、戦闘をうまい具合に運ぶのも、ウォーシミュレーションに入り始めたばかりのプレイヤーをSLGゲーマーに仕立て上げる役にたっていたといえるだろう。実際のところ戦闘バランス自体は割りとぬるいのだが、それでも強大な王の軍勢と戦うには一工夫が必要だった。この辺の奥深さは流石光栄というべきだろう。



・想像を絶する程の良BGM。

さて。なによりかにより、私の中のロイヤルブラッドといえば「凄まじい良BGM」がその最大の特色である。

ファミコン時代、初めてこのゲームを立ち上げた人は、その圧倒的なオープニングBGMの格好よさに度肝を抜かれたであろう。全体としての味付けは、一言でいってしまうと「神話風」ではないかと思う。

戦略画面のBGM、戦闘画面のBGM、パスハ出現のBGMからオープニング、エンディングにいたるまで、このゲームのBGMは頭の先から足爪の先まで全身くまなく一級品揃いであり、聴いていて飽きのくるBGMは一曲たりともない。サントラは三國志3とセットだが、CDを購入してでも一聴の価値がある、とここで断言してしまおう。特にオープニングは、途中で入るエフェクトが心底邪魔に感じられる程の名曲である。テンポだけから言えば私はファミコン版のオープニングが一番好きだ。

その他にも、季節ごとに変わる戦略画面のBGMやら、どことなく東洋を思わせる一部マップの戦闘BGMとか、どれをとっても聴き応え満点の名曲ばかりである。菅野よう子氏が手かげている大航海時代や一部信長の素晴らしいBGMと比べても遜色ない、と私はこのゲームのBGMを評価している。

ちなみに、ニコニコ動画のIDをお持ちであれば、以下のURLからファミコン版オープニングは視聴が可能である。よろしければ。

ロイヤルブラッド オープニング


と、長々と語ってきたが。実際のところ、このゲームでどれだけライトユーザーが増えたのかはいまひとつわからないが、ロイヤルブラッドが光栄の名作群の一角であることは間違いないだろう。今遊んでも遊び応えのある、ファンタジーSLGの佳作である。


取り敢えず今日はこの辺で。
posted by しんざき at 23:47 | Comment(4) | TrackBack(1) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
とにかく柵。柵、柵。
Posted by at 2010年11月08日 10:42
宝石魔術師って王のドラゴンを封じるために出てきたのに、
支援してる貴族が王家に潰されると普通に寝返っちゃうのよね

早いシナリオのほうが歯ごたえがあるのは案外珍しいかも?
Posted by at 2010年11月09日 01:00
押入れの中に未だ眠ってたり……。


柵作って壊されて、柵作って壊されて……。
重装歩兵隊の兵力がそこそこあると、延々この繰り返しになる事もしばしば。

宝石魔術師最強と言われてるミーティアは、移動力不足(とは言え標準の2は有るが)で側面や背面が取り辛かった。
寧ろ次席のサンダラスの方が、遠距離攻撃(ミーティアと同じ範囲)+高移動力で、群を抜いて使い勝手が良かったのは覚えてる。

シナリオ1とか2の方が戦略を練る余地が有るのは同意かな。
3や4は力押しでも何とかなるし。
Posted by crow at 2010年11月09日 08:56
素晴らしいレビュー。
また二十数年ぶりにやりたくなりました。
Posted by at 2014年12月19日 10:29
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