2005年01月30日

レトロゲーム万里を往く その17 〜バンゲリングベイ〜

Seesaaでブログを作っていない方には全く分からない話であろう為申し訳ないのだが、先日のメンテでseesaaのブログ編集画面が大幅に変わった。

インターフェイスに関してはそれ程こだわりがなく、まあちょっとばかし使い辛くなったかな、という程度の感想しか持っていないのだが、問題は新しく追加された「ジャンル」機能である。

「ゲーム」カテゴリの中に「レトロゲーム」がない。「シューティングゲーム」もない。あまつさえ「ファミコン」の五文字すらどこにも見られない。一体これはどういうことなのだ。

これはアレか、私の様な零細ブログのレトロゲームコーナーなど「ゲーム機」の項目にでも押し込めておくがいいけけけけ、というseesaaの陰惨かつ悪辣な陰謀なのか。おのれseesaa。早急なレトロゲームジャンルの創設を熱望したい。

それはそうと、今回のテーマは「バンゲリングベイ」である。1985年2月、ハドソンより発売。開発元はどこといったか、ちょっと名前を度忘れしたが、確か北米のメーカーさんの筈である。

不遇の名作、というべきだろう。このゲーム以上に「発売時期を間違えた」と呼べるゲームが他にあるだろうか。

バンゲリングベイは、攻撃ヘリ「シーアパッチ」を駆り、弾薬や燃料を補給しつつ、バンゲリング帝国の秘密工場を爆撃して破壊する、というのが目的のシューティングゲームである。

十字キーの前でスピードアップ、後ろでスピードダウン、左右のキーの機能は旋回のみと、実際のヘリコプターの動作をかなり意識して作られた操作方法が特徴の一つである。時代を遥か先取りした、フライトシミュレーションゲームの走りといってもいいであろう。

初期の遍くファミコンゲームの中で、このゲーム程不当に評価されていたゲームを私は他に知らない。最近こそかなり再評価されている感があるが、かつては「クソゲーの元祖」だの、「クソゲーという言葉が生まれたのはこのゲームが元」だの、まあ言われたい放題であった。

何故この様な評価が定着したかに関しては、まあ様々な要因があるのだろうが、一番の理由は「ハドソンだったから」ではなかったかと私は考えている。

まず先に断言してしまうが、このゲームは面白い。操作性やゲームバランスに多少の難こそあるが、斬新なゲーム性にせよ、根拠を明確にもったアルゴリズムにせよ、防御と攻撃を使い分けなくてはならない展開にせよ、どれをとっても光るものを秘めている。純粋にゲーム性の話をすれば、現代にもってきてリメイクしてもこのゲームは十分に勝負し得る筈だ。

そう、このゲームは些か斬新に過ぎた。この時期、ファミコンで他にどんなタイトルが発売されていたかを何本か見てみよう。前月、一月には任天堂から「バルーンファイト」や「アイスクライマー」。ジャレコからは「エクセリオン」ナムコからは「ギャラガ」が姿をみせており、4月にはタイトーから満を持して「スペースインベーダー」が発売されている。どれもこれも極めて直感的な操作方法、わかりやすいレスポンスとゲーム性が売りの佳作ばかりで、この中にあってバンゲリングベイはいかにも浮いてしまっている。

ハドソンの作品のみを見ても、この前に出ているのは「ナッツ&ミルク」と「ロードランナー」という、実にシンプルなゲーム性で若年ユーザーを得たソフトである。これに続くソフトとして「バンゲリングベイ」を持ってきた時点で、既にハドソンは明らかな判断ミスをしていたといえるだろう。遊び易いソフトを求めてこのゲームを手にとれば、面食らうのは当然のことだ。

さらに問題なのは、以前「〜ハドソン帝国の陰謀〜」でも触れた、ハドソンの販促体制だ。
この時点で既にコロコロコミックと提携していたかどうかは記憶が定かでないのだが、「ロードランナー」や「ナッツ&ミルク」に関しては、既に「漫画による広告」という手法をハドソンは確立していた。ナッツやミルクがそのままの等身で殴りあいながらヨーグルを奪い合っていた漫画が、当時は実際に存在していたのである。当然のことながら、そういった広告は若年ユーザー、もっと言ってしまえば小学生低学年かそれ以下のユーザーに対し強い影響力をもつことになる。そして、バンゲリングベイもその路線を踏襲し、様々な紙面に「ヘリに乗って敵の工場をやっつけるヒーロー」の漫画が姿を見せることになったのだ。

今でこそコントローラーには十個以上ボタンがあることが珍しくないが、当時のファミコンには僅か2つしかボタンはなかった。Aボタンはジャンプ、Bボタンで攻撃という認識でゲームを遊んでいた少年達は、当時バンゲリングベイの「ヘリの操作」に対し成す術を持たなかった。着陸も出来なければ爆弾も落とせず、やっと前進できたと思っても旋回は出来ず、あれよあれよという間に空母は爆撃機の襲撃を受けて沈んでいく。結果、「このゲームわけわかんねえ」という哀しい評価が小学校において定着していく。

つまりこの「バンゲリングベイ」というゲームの最大の失敗は、「広告すべきユーザー層を間違えた」というその一点にあったのではないかと思うのである。後のウィザードリィシリーズの様に、「13歳以上推奨」とでも表示をうっておけば、案外このゲームは一定の評価を勝ち得たのではないか。売上はあからさまに落ちただろうから、正直どちらがいいのかは良く分からないが。

ところで、この「バンゲリングベイ」には物凄く壮大なストーリーが存在する。今に至ってもおそらく最長の部類に入るゲームストーリーではないかと思われるが、僅か256Kの容量のゲームにここまでの物語を作り上げるハドソンの努力には頭が下がる。以下に引用させて頂こう。

http://fu-min.vis.ne.jp/bunstory.htm


また、バンゲリングベイといえば「ボンバーマン」や「ロードランナー」と世界観が同じ、という話が有名である。出所などは私は知らなかったのだが、ねじれ帝国 in blog様で分かり易くまとめていただいている。こちらも紹介させて頂きたい。なるほど、ハドソンの後付といわれれば納得がいく。

http://blog.so-net.ne.jp/nonoosan/2005-01-19


そして、バンゲリングベイの関連ページを挙げるなら次のページを外す訳にはいくまい。圧巻の情報量もさることながら、プレイ日記を読むと人間の限界点は一体どこにあるのか、というテーマに関して深く考えさせられる。

「バンゲリング帝国復興計画」
http://www.geocities.co.jp/Playtown/3006/index.html
posted by しんざき at 23:16 | Comment(4) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
はじめまして。
ねじれ帝国の、ののおです。
記事読ませてもらいました。
確かにハドソンはこのゲームのマーケティングに
失敗してますね。
でもファミコン黎明期にこのタイトルをもってきた度胸は買いますけど。

あと聞くところによると、開発元のブローダーバンド社は日本では自社ブランドでリリースをおこなっていないようです。
もしかしたらその辺、モロモロの大人の事情ってやつがハドソンとの間にあったのかもしれません。

とりあえずバンゲリングベイは、
大人になってから楽しむゲームだと思ってます。
ファミコンだとUコンのマイク必須ですが。

失礼しました。

あとTBどうもです。
Posted by ののお at 2005年01月31日 03:28
>>ののおさん
おいで頂きありがとうございます。ウィル・ライトのお話、参考になりました。がっでむオンラインゲーム。

マーケティングといいますか、当時のファミコンゲームは飽くまで「おもちゃ」というカテゴリーに入っていた筈なので、そもそも大きいお友達はあまり販促の対象に入っていなかったってこともあるんでしょうね。そういう意味ではまあ、そもそも1985年にこのゲームを出した時点で失敗なんでしょうが。

>ブローダーバンド社
むう、なるほど。当時のFC業界の裏側を垣間見た気分です。アイレムとも取引があったんでしょうか。
Posted by しんざき at 2005年01月31日 09:46
面白そうなもの見つけたので。
わしの思いでぶかいゲームといえば信長の野望(not全国版
小学生にはとても無理な内容でしたw

http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050210/toy172.htm
Posted by mono at 2005年02月12日 22:16
>monoさん
おーーこれはなんか、往年のカセットビジョンを思わせるいい感じの雰囲気ですね。やってみてえ。ミサイルコマンドがきちんと入ってるあたりがステキ。

信長は17国版ですか?あれは確かに、なんつーか、強い武将でやればやるほど辛いというスパルタンなゲームでしたね。武田とか結構詰んでるんだけど。
Posted by しんざき at 2005年02月13日 00:45
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