2006年05月23日

レトロゲーム万里を往く その54 ファンタジーゾーン

その日。8回目にコバビーチのレーザーに突っ込んだ時、彼は私を一瞥して一言。静かにこう言った。

「しんざき、まずはロケットエンジンに金をつぎこむのをやめろ。話はそれからだ」


思い通りに動かせる楽しみと、思い通りに動かせない楽しみ、というものがあると思う。

操作性の良さ、というものは、決して「操作し易い」ということとイコールではない、と私は思っている。操作性がいいゲームとはつまり「動かしていて面白い」ゲームのことだ。「動かしていて面白い」と「操作が楽」の間には、多分かなりの分厚さの壁がある。

「操作がし易い」を「動かしていて面白い」に直結させることが出来たのは多分ナムコや任天堂だが、その一方で、「微妙に操作がし辛い」を「動かしていて面白い」に昇華させることが出来たメーカーが幾つかあった。私が思うに、それがかつてのタイトーであり、カプコンであり、そしてセガではなかったか。

ファンタジーゾーン。横方向任意スクロールシューティングゲーム。1986年、セガからアーケード版発売。慣性をシューティングに取り入れた点、パワーアップアイテムをショップで買う点や、非常にポップで耳に残るBGM、パステルカラーを基調にした新鮮な敵デザインなどなど、様々な斬新さで人気を博し、多くのハードに移植された。

セガマークIIIに始まり、MSXからPCエンジンやX68000、果ては携帯機のゲームギアやシャープのMZ-700にまで移植されていることからも、根強い人気が窺える。

ちなみにFC版は1987年7月、サン電子から発売している。流石にアーケード版には敵わないが、かなりの「遊べる」移植度でこちらも人気タイトルとなった。

まずは操作の話からいこう。


・オパオパと慣性の法則について。

まず最初に言うと、このゲーム、動かしづれぇ。

それまでの多くの横スクロールシューと異なり、ファンタジーゾーンは任意スクロール+自機への慣性という珍しいシステムを採用していた。これはどーゆーことかというと、画面はオパオパが進むに応じてその方向にスクロールし、動き方には一癖あるし、同時にオパオパは急には止まれない、ということを意味する。

技術的に様々な工夫が凝らされていたものの、細かい操作が要求される横シューとしては、難易度をかなり高くする要素だったことは疑いないだろう。当時一体幾人のオパオパが、浮遊基地をツインボムで爆撃しようとしてそのまま基地に突っ込んだことだろうか(私とか)。

可愛げのあるキャラクターとは対照的な情け容赦ない難易度もあいまって、このギャップはなかなかのものだ。「見た目で入った」人にとっては、ファンタジーゾーンにはまず「操作」という一番最初の場面での結構分厚い壁があったことになる。

そして、この「壁」がマイナス要素にならなかったところにセガの底力があった。

このゲームの特徴の一つとして、敵の耐久力にエラくバラつきがある、というものがある。大体の敵は「固いヤツ」と「ショット一発で死ぬヤツ」の二種に分類され、例えば浮遊基地とかボスはいくら撃ってもなかなか死なないし、すぐ死ぬヤツはちょっとショットを連射してれば蹴散らせる。

お金集めの問題もあって、普通にゲームを遊んでいると、「一箇所に留まって硬い敵を倒している時間」が頻繁に発生することになる。ゲームの展開に凄く明快なメリハリがあった訳だ。

で、先ほどの「操作のしにくさ」は、この「一箇所に留まる時間」で強制的にプレイヤーに習熟を強いる。ちまちま近づいてはボムを撃ち、また離脱、というプロセスをプレイヤーは繰り返すことになり、ごく自然に独特な操作感に慣れることになる。

ここで、「硬い敵を倒した時は大金が手に入る」という報酬効果も話に加わり、通常の横シューにはないちまちまとした操作による楽しみというものがゲームの中核を成していった訳だ。

・ショップの存在とお金稼ぎ
・一箇所に留まって硬い敵を倒す時間の存在
・独特の操作のし辛さ


こうしてみると、どの一つが抜けてもこのゲームの楽しさは成り立たないことが分かる。

このバランスのどこまでがセガ開発者の狙いだったのかは知る由もないが、ファンタジーゾーンが画期的な作品だった所以の一つはここにある。「操作しにくい」ことは、このゲームにおいてはコア部分の一要素だったのである。


・7wayショットの凶悪さについて。

で、ショップはショップで、このゲームにおける中核要素の一つであったりする。

このゲームにおいて、基本的に攻撃は最大の防御である。

大体のシューティングにおいて、自機の初期状態は弱いものだ。初期状態が弱ければ弱い程、パワーアップした後のカタルシスが大きくなる。これは、グラディウスやツインビーによって「パワーアップ」という要素がSTGに定着して以来、開発者達にとって共通の方法論である。オパオパも例にもれず、初期状態じゃ足は遅いわボムは貧弱だわショットは弱いわ(これはずっとだが)、はっきり言ってストレスはたまる。

とはいえ、ファンタジーゾーンにおいては、どんだけパワーアップしたところでオパオパは割と一瞬で散る。グラフィック的にも文字通り散る。自機の当たり判定はでかく敵の弾は見難いという環境にあって、オパオパの生存率を高める方法はただ一つ、「やられる前にやれ」のみである。

この為かどうか、ショップで買える武器というのはどれもこれも割合い強力で、一種無敵モードの様な趣があった。7wayショットを撒き散らしつつ浮遊砲台を瞬殺し、破壊の快感に酔ったオパオパも当時無数に存在した筈だ。

ここには当然罠があり、ショップで買った装備は二回目・三回目に買おうとするにつれガンガンインフレし、前半で強い武器を買った人は後半地獄を見たりすることもある。武器をいかにやりくりするか、という辺りもこのゲームの面白いところで、どのボスにどの武器が有効かというのを探るのも楽しいものがあった。地獄の沙汰も金次第であったのである。

どうでもいいが、ロケットエンジンだけはどこをどう考えても罠装備というか、アレは一体どんな人種の為に設定されたスピードなのか私には今もって分からない。アレか、セガのテストプレイヤーはマグネットコーティングでも実装してるのか。



・グラブンガーだけはガチ。

一方、ステージごとに巨大ボスの出現→最終面でボス連戦、という形式も、このゲームのメリハリの一つだろう。グラディウスにもツインビーにもボス戦はあるが、このゲームにおけるボス戦比重はかなり大きい。

どのボスもこのボスも、奇抜で愛嬌のあるデザインとは裏腹に殺る気満々の大攻勢を繰り広げ、準備なしだと結構さくさくとオパオパは瞬殺される。

この準備というのは文字通りの意味で、ボスによってはショップでなにかしら装備を買ってくると楽だったりもするし(コバビーチに16tとか)、その為に道中で装備を使わない様クリアするというのも熱い要素だったりする。当時の横シューとしては、かなり濃い部類の戦略的要素だったろう。

ボスの個人的思い出としては、何故かボランダ(2面ボス)の周囲の花弁を私は「うめぼし」と認識し、以来10年近く友人間で「うめぼしのボス」という通称で通っていたことや、FC版のグラブンガーに百回近く負けてキレそうになったこと、初めてスマートボムによる瞬殺を経験して愕然としたことなどなど、数々の思い出が今も脳裏をよぎる。

ゲームのボスとしては、それ以前の数々のシューティングに勝る「存在感」を放っていたボス群だったことは議論を俟たないだろう。


・さっきから一面BGMが耳から離れないんですけど。

「YA-DA-YO」ってどんな曲だっけ。

BGMの話にちょっとだけ触れると、「かっこよさ」が全く狙いに含まれていなかったこと、という一点において出色のBGMだったといえるんではなかろうか。

特に一面フィールドやショップの音楽、人によっては相当長い時間聞くことになることもあってか、おっそろしい程耳に残る。自然にリズムがとれる曲というか、飛び跳ねる様なテンポと印象的なメロディが全編を彩っており、BGMとしての完成度も極めて高かったと言うべきだろう。


という辺りで、大概長くなったので今回はこれくらいで締める。
最後に参照URLを載せておこう。

ファンタジーゾーン

攻略ページとしての品質もさることながら、各ステージの画面が見られることも嬉しい。


posted by しんざき at 20:22 | Comment(9) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
懐かしいわー。これ不思議な存在感を残してるソフトですよね。RPGで言うなれば続編の出てないMOTHERみたいな感じ。
Posted by 木戸孝紀 at 2006年05月23日 20:58
あなたはSHOPのどの棚からでも思いのまま買ってよい。
ただし、ロケットエンジンは取ってはならない。
それを取って使うその時、あなたは必ず死ぬ。

ウィンクロンで特攻ばかりかましてたのはこれが原因かな。
ところでスマートボムでグラブンガーを瞬殺できるんですか。そうですか。
Posted by めあ2 at 2006年05月23日 21:26
FC版の4BOSSはスマートボム耐性があって
3発では死なんかったのぅ
Posted by おさかな at 2006年05月23日 21:57
こんばんは。
うぁ、懐かしい。
あのパステルカラーが大好きでした。
じゃがいもみたいな敵とかも。

今は携帯電話にまで移植されてますからね。
すごい世の中ですよ。

そういえばスペースファンタジーゾーンって
どうなったんですかね(死)

それでは、失礼しました。
Posted by USHIZO at 2006年05月23日 23:50
めちゃムズなのについついやってしまうアーケードゲームだったよ、これは。
他人のプレー見ていても楽しかったし。
7Wayが切れた瞬間、一気に心細くなるし。
2面ボスは100tで殺すと爽快だよね!
Posted by GOTY at 2006年05月24日 01:11
自機の移動慣性と云うよりは、自機の位置を調整するスクロールシステムですね。

ロケットエンジンは結構使っている上級者が多かったと思います。
8面ボスのすり抜けが開発されるまでは、これでツインボムと云うのがノーミスの定番でした。

と思って遊んで見たら、とてもじゃないけど速すぎる……
Posted by バブシカ at 2006年05月24日 08:54

>木戸さん
>これ不思議な存在感を残してるソフトですよね。RPGで言うなれば続編の出てないMOTHERみたいな感じ。

ああいうふわふわした世界観のSTGって当時なかったですよね。インセクターXとか微妙だし。


>めあさん
>ところでスマートボムでグラブンガーを瞬殺できるんですか。そうですか。

初めてゲーセンで目撃した時、呆然とする余り食っていたうまい棒を床に取り落としました。確か。

>おさかなさん
>FC版の4BOSSはスマートボム耐性があって
>3発では死なんかったのぅ

あれ、そうでしたっけ。まあ、そもそもFCでよくグラブンガーを素で移植した、とか思いましたが。
なんかPS2版でもそんな現象があったとか聞きました。


>USHIZOさん
>そういえばスペースファンタジーゾーンってどうなったんですかね(死)

「レトロゲーム百の禁忌(民明書房刊)」に怖いことが書いてあったので私の口からはとても。
発売されてたらどうなってたことやら、と思います。


>GOTYさん
>7Wayが切れた瞬間、一気に心細くなるし。

脳汁全開無敵モードで進んでいるだけに、突如弾切れを起こしたミッキー・サイモンの気分が味わえる秀逸なギミックだと思います。

>バブシカさん
>自機の移動慣性と云うよりは、自機の位置を調整するスクロールシステムですね。

おっしゃる通りであります。セガの技術者魂でしたね。

>と思って遊んで見たら、とてもじゃないけど速すぎる……

いや、なんていうか、無理です。あれは無理です。
ひょっとしてFC版とAC版だと自機のスピード違うんでしょか。今思いついただけですが。
Posted by しんざき at 2006年05月29日 15:15
なんだかんだいって斜下掌PPGだよね
Posted by HUJIGYO at 2007年10月13日 20:04
>HUJIGYOさん
私ラウ使いじゃないんでよく知らないんですが、投げにつなぐコンボってあるんですか?
Posted by しんざき at 2007年10月15日 20:40
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