2006年06月07日

レトロゲーム万里を往く その55 メタルスレイダーグローリー

ダモン様:ところで私の出番は一体いつ来るのだ?
側近A:申し上げにくいことですが、二巻の音沙汰がないままもう十年経つところから考えると、続刊の見込みは少々・・・
ダモン様:な、なんだと・・・!で、ではE・Gコンバットの四巻はいつ出るのだ!?
側近B:それは秋山瑞人に言うべきかと。
キャティ:・・・私の生還は?

〜レトロゲーム断章「よしみる概論(漫画篇)」より抜粋〜



要するに、死ぬほど手間と金と時間がかかった同人ゲーム、という見方がある種正しいのかも知れない。

このゲームは、大体以下四つくらいの視点のどれかから語られる場合が多い。

・レトロゲームにおけるレア・プレミアムタイトルの代表格としての視点
・FC最後のSFAVGとしての視点
・FC最強のグラフィックゲームとしての視点
・FCでも数少ない開き直った系美少女ゲームとしての視点

この四つの内どれを重視するということでもないが、私が考える限り、「デッドゾーン」や「ジーザス」「水晶の竜」の路線が最後にたどりついた場所、としてこのゲームを捉えるのが妥当な様には思う。

多分、FCでアニメ要素が入ったSFアドベンチャーを製作していた開発者達は、皆が皆このゲームのグラフィックを仕上げたかったんじゃなかろうか。ドット絵にかける情熱というか「マクロス」に血道をあげたマニア心というか、アニメ系SFというものにはとかく製作者の趣味がストレートに反映される。製作者の趣味とハードのスペックの戦いが、ファミコンにおけるSFAVGの歴史であった、ともいえる様に思う。

つまりメタルスレイダーは、一言で言ってしまうと「ありとあらゆるファミコンタイトルの中で、最大級に開発者が趣味に走れたゲーム」として総括できるんではないかと私は思うのである。

メタルスレイダーグローリー。SFAVG。1991年8月30日、HAL研究所より発売。独立ソフトハウスとしてのHAL研が最後に送り出した作品でもある。当時は、説明書には「よしみる」氏書き下ろしの漫画、付録にポスターやステッカーなどのグッズがつくなど、異様なクオリティのおまけ群も一部で話題を呼んだ。

FC唯一にして最大の「8メガ」という大容量をもって作られたソフトであり、ハードの限界を極めたグラフィックと正気の沙汰ではないアニメーション、生産本数の少なさ、良質のストーリーなどなどの要因から、一時はFC業界最強のプレミアムソフトとして名を馳せた伝説の一本である。

ニンテンドーパワーでのリメイクなどなどの事情から、現在では一時期程のレア度はないかも知れないが、今でもちょっとぼったくる店だとフルセットで二万、三万などという値札を普通に見る。

まずはグラフィックの話からいこう。


・エリナやキャティさんの瞬きにこめられた執念について。

ネットは大したもので、メタルスレイダーの画像も探せば結構転がっている。ちょっと参照リンクを貼らせて頂こう。

探せ!レアゲーの星!!様
メタルスレイダーグローリー関連データベース様

リンク先をご覧頂ければと思う。

PCの美少女ゲームのようにも見えるし、今からみると流石に古いグラフィックの様に思えるかも知れないが、少なくとも当時の基準において、この絵がFCでがりがりアニメーションするというのは常識の埒外の出来事であった。浜辺を車が走るシーンや、シャトルの離陸シーンで当時驚愕したものだ。よしみる氏の絵柄をかなりの度合い再現しているキャラグラもそーーとーーなもんだった。

このグラフィックを作るのに当時どれだけ苦労をしたのか、と思うと、ちょっと空恐ろしい気もする。ネットでもあちらこちら、色んなエピソードを聞く。当時はディスクシステムでの開発を予定されていたとか、スプライトがどーとかパーツ数がどうとか。顔画像とは別に複数の顔パーツを作っておいて、それぞれを別個に動かしていた、などの話も著名だ。

なんかHAL研倒産の引き金になったゲーム、みたいな風評をたまに聞くが、この辺を読んでいると強ち無根拠でもない様な気がする。

「メタルスレイダーグローリー」開発スタッフインタビュー
何人くらいでしょうね? ファミコン版の最初の1年間は☆よしみるさんがひとりで作っていたんです。1年たったところでプロジェクトチームを結成し、僕がプログラムのまとめ役になりました

プログラムを理解していなくても絵やアニメーションが作成できるツールを制作しました。そのツールを改良していくのに1年くらいかかりましたけれど。それを渡して、☆よしみるさん自身がゲームを組みたてていけるようにしたんです

すぐにリトライができたし僕でも簡単にいじれたんです。それで、凝りに凝ってしまって、そのせいで制作期間がすごく長くなってしまったんです

誰か止める奴はいなかったのか? とか思ってしまうのは私がそれなりにシステム開発の人間になったということだろうか。

製作期間に足かけ四年、という話も聞いたが、つまり87年に出た企画がずーーっとぽしゃりもせずにファミコン末期まで生き残ったということか。なんというか、凄絶という以外の言葉がない。趣味に走った製作者を誰も止めないとこういうことが起きるのか、という一種の戦慄を覚える。

まあ何はともあれ、怨念じみたものさえ感じるこの開発期間を経て、メタルスレイダーはFCに並ぼうとするものとてない最強のグラフィックを有したゲームになった訳だ。その引き換えに生産費が追いつかなくなり、期せずしてレアゲームの称号まで得てしまったというのだから皮肉とも言える。


・謎解きのシーンの音楽が出色である件について。

ストーリーの話とか。

まず、あらすじについては例によって引用させて頂こう。
メタルスレイダーグローリーファンページ様

いや、だからゲンが何者なのか早く書いてくださいよしみるさん。

このゲーム、細かい設定の作りこみがよしみる氏の情熱過剰で凄いことになっているので、ゲーム内で描写がされ切れていない感こそあるが、雰囲気作りその他、SFAVGとしての質は相当なものだ。何よりかにより、キャラクター同士の「会話」の設定量が豊富なので(つまり、主人公以外のキャラクター同士の会話がかなりの分量ある)、それだけで世界観が確かなものになっているということもある。

例えば宇宙船内での会話。主人公の忠がエリナと会話していると、あずさが口を挟んできたりエンカイくんがあいの手を入れてきたりする。この辺りの「なんでもない」演出がプレイヤーの意識に及ぼす影響は大で、グラフィックやアニメーションの働きも絡み、ごくごく自然に感情移入をすることが出来る。当時は容量の問題もあり、簡単な様でなかなかほいほいとは出来ない演出だった様に思う。

基本的な展開自体はいわゆる「エイリアンもの」でそこまで真新しいものではないが、特にあずさがさらわれてからのハイテンポな展開・及び最後の謎解きから宇宙戦に至る展開なんかはそーとー燃える。物語の伏線も必要十分で、中盤以前に出てきていた人物が後になってみると実は、みたいな話も豊富である。香水の話とか。

あずさを探して三十五区をうろつく辺りなんかはちょっと「ジーザス」を思わせる部分もあり、FCのAVGの進化の過程に思いを馳せつつ、ポートピアの「ヤス」状態になっているエリナにひたすら壁を叩かせて回る訳である。いや、どうでもいいんだが、自分も少しは動けよ忠、と思わんでもない。空調を素手で叩き壊すエリナも大概だが。

細かいことだが、ゲームのパスワードが「エリナに話しかける言葉」になっているところも面白い点だろう。「めものばしょへ いくよ」とか「さんじゅうごくに もどるよ」とか、この内容はゲームの展開とほぼシンクロしており、覚え易いというメリットもある。というか未だに全パスワード覚えている私もちょっとどうかと思う。

そして最後の宇宙戦。最後に一つだけ残った問題、父の残した言葉とキーワード。これは燃える。燃える展開である。重厚な伏線あっての展開というか、この辺りの綿密さこそSFAVGの醍醐味の一つといえるだろう。


長くなったので取り敢えず今回はこの辺で。

最後に関連ページというか。

メタルスレイダーグローリーファンページ

興味がおありの方は一度こちらのページを訪れるべきだろう。

関係ないが、漫画版メタルスレイダー「エイミアの面影」は、ラストが物凄い引きで終わったまま、続刊が出るどころか絶版になってしまっている。キャティは生死不明だわ、エリナは地球にいきっぱなしだわ、ダモン様は見開きで登場したきり一言も喋っていない。ドラゴンボールで言えばフリーザ様初登場のシーンで打ち切りになってる様な状態である。

その内続きが読めんもんかなあと思っているのだが、よしみる氏って今なにやってるのかなあ。
posted by しんざき at 01:11 | Comment(6) | TrackBack(1) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
☆よしみるとは懐かしい。
昔コミックコンプに漫画を掲載してたよね?
Posted by N at 2006年06月07日 03:25
この項の冒頭部分を読んで「あれ、よしみるだっけ? 細野不二彦じゃなかったっけ?」と思ったらラグランジュポイントとごっちゃにしてました。なんでこの二つが同じ記憶の引き出しに入ってたんだろ。

しかし実際、ジーザスとかコレとか、ある種の甘やかな…ちょっと恥ずかしいような懐かしさが心地よいですねえ。リンク先の記事見るとプロップやメカのデザインはやっぱかっちょいいなあ。

にしても、2万3万は当たり前の世界か…。ファミコン出たての頃友人と「ファミコンにプレミアなんか付かないよ。だってデータはいくらでも複製できるからねえ」とか言ってました。ああ。
Posted by おやじノ介 at 2006年06月08日 01:22
懐かしい話題ですね。
ちなみに僕は今でもメタルスレイダーグローリーのFCとSFC版を持ってます。動くかな〜?。
当時新品では買えず中古で買ったのを覚えてます。それまではファンブック等で我慢してましたね。多分探せば一式出てくるのでは?(関連マンガとか)。
今思うと当時の開発スタッフって凄いですよね。まさにハードの限界を表現してますから。今の無制限とも言える容量を持ったハードの開発者にも見習ってほしいもんです。
Posted by ないない at 2006年06月08日 21:09
はじめまして♪
当方のブログを参考にしていただきありがとうございました!
こちらのほうの記事にも、不倒城さまをリンクさせていただきました。

ありがとうゴザイマス^^
Posted by ゆうきち at 2006年06月09日 00:07
>Nさん
GAOとかにも描いてたらしいけど、私当時の漫画は読んでおらなんだ。
どんなんでしたか。

>おやじの介さん
>ラグランジュポイントとごっちゃにしてました。
あーアレもありましたねー。ファミマガでアイディア募集してましたねえ。その内扱います。

>…。ファミコン出たての頃友人と「ファミコンにプレミアなんか付かないよ。だってデータはいくらでも複製できるからねえ」とか言ってました。ああ。
エミュがあろうがなかろうが、カートリッジのコレクターは不滅のようです。


Posted by しんざき at 2006年06月10日 14:10
>ないないさん
>それまではファンブック等で我慢してましたね。

ああ、あのファンブックも貴重らしいですね。というか私は読んだことありません。うらやましい。
説明書漫画もそーとー気合入ってましたけどね。

>今思うと当時の開発スタッフって凄いですよね。まさにハードの限界を表現してますから。

凄いというか怖いというか少しは手加減しろというか。異才だったことは確かだったと思います。

>ゆうきちさん

あ、こちらこそ勝手に使わせて頂いてすいません。 後ほどTB飛ばさせて頂きます。
Posted by しんざき at 2006年06月10日 14:13
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