2005年02月22日

「ゲーム脳」などの報道に関して・雑感

「たけくまブログ」様より。かのたけくま氏に絡ませて頂くのは大変に恐れ多いが、丁度考察してみたい欲求に駆られたので、雑感として。

>犯人をある一定の傾向でくくって、それをもって犯罪の原因とするような報道も、たぶん太古の昔からある。
>多少なりとも反社会的なものならなんだっていいわけです。
>報道というのは「事実」をいかに目新しく面白い物語にするかが鍵ですからね。

全くもっておっしゃる通りである。まあマスコミの立場からすると、話題やブームが作れないと商売にならないのであって、分かり易い単語と事実を結びつけて読者の納得を集めようとするのは、全く不思議なことではない。むしろ一般的な報道姿勢である。レッテリングというのは一般的な用語なのかどうか知らぬが、まあそんな類の技術だと思う。

ただ、たけくま氏は「反社会的」という言葉を使っておられるが、私ならここに「社会的未知」という言葉をあてはめたい。とっくの昔に誰かが言っている言葉・議論であったら恥ずかしいが、まあ気にしていても始まらない。思いつくままに書く。
ニートが社会の道に反したことをしている訳では別にない。単に社会の道に乗っていないだけのことである。ゲームやアニメにしても、別段社会に反する意図はないであろう。彼らが何故レッテリングに扱われ易いかというと、それは大体以下の二点に原因がある様に思われる。

1.社会の多数派から見てマイナーであり、理解を得られていない。或いは、理解しにくい、するのに抵抗がある。
2.害悪であるとした場合に、マスコミに対する負の影響が少ない。

たけくま氏は、文中でこうおっしゃっている。

>たとえばこれが野球少年とかサッカー少年の犯罪だと、原因をスポーツに求める報道がないのはおかしいですよね。

これ自体は全くその通りだし、たけくま氏は承知の上で書かれていると思うのだが、スポーツが犯罪と結びつく形でレッテリングされることは基本的に有りえない。
理由は二つある。

・スポーツ=健全なもの、というレッテリングが既になされており、社会にスポーツの肯定的意味が知れ渡っているから。また、社会におけるスポーツ自体の知名度が非常に高いから。
・あらゆるマスコミ関係各社が何らかの形でスポーツに関わっており、そこから利益を得ているから。

実に分かり易い話で、前者は「スポーツを悪者にしても視聴者に受けない」ということの要因であり、後者は「スポーツが悪者になるとマスコミ自身が被害を蒙る」ということの要因である。この二つが揃っている限り、スポーツが悪者になることはまず考えられない。ダルヴィッシュが何本タバコを吸おうが、「野球脳」という言葉は生まれない。野村克也辺りが別の意味で言っているかも知れないが。同じ理由で、報道が悪者になることもまあ考えられない。

で、これをたけくま氏がおっしゃっている「ニート」や「オタク」などに当てはめると、更に分かり易い構図が出来上がる。

・「ニート」=理解しにくいもの、不健全なものとしての印象が一般に定着している。あるいは、実態がどんなものなのか殆ど知られていない。ただし、単語自体は誰でも知っている。
「ニート」=害悪、としてもマスコミ関係者は誰も困らない。

上記二点の「ニート」部分は、アニメ、ゲーム、オタクなどともそれ程問題なく置換することが可能だろう。言うまでもなく、ここに当てはまるべき単語は時代時代によって変わる(普遍的なものもあるが)

良く理解出来ない、あるいは理解したくないもの=犯人、という構図は、視聴者に非常に受け入れられやすい。この理由は社会心理学に詳しい方にお聞きするべきだとは思うが、まあ対岸の火事にしておけるという心理もあるのだろうし、自分とは関係ない世界を低く見ることが出来るという心理もあるのだろう。この辺りに関しては良く分からぬ。

つまり、何故「ゲーム脳」といった報道が広範にされるのかというのは、純粋にマスコミ側の都合なのであって、十分にマイナーでありマスコミにスポンサードされていなければ、ゲームの代わりに何が入っても構わない訳だ。
例えばの話、ある日突然筆者を始めとするケーナ(南米の縦笛)吹きが悪逆非道な犯罪の限りを尽くし出したら、即座に「ケーナ脳」などという言葉が生まれて全国のケーナ吹きが一斉迫害されても何ら不思議はない。多分その場合、「酸欠が脳に及ぼす反社会的影響」などが真面目に論ぜられるのであろう。

あるいは、筆者を始めとするレトロゲーム好き達が悪逆非道な犯罪の限りを尽くしても同じことが起きるであろう。その場合、「ザッパーの連射が脳に及ぼす悪影響」や、「2コンのマイクに「ドラミちゃーん」と叫ぶことによる性的欲求の増大」などが議論されるに違いない。ああ、そもそも普通のゲームと区別してもらえないか。無念である。

結論として、ゲームが「ゲーム脳」といった都合のいいレッテリングから抜け出す為には、三つくらいの方法しかない。

・日本人口の80%程度がコナミコマンドを暗記する程度にゲームが社会的認知を受ける。
・ナムコかタイトー辺りが読売新聞社や朝日新聞社を買収する。
・マスコミがゲーム関連の話題に飽きる。

コナミコマンドって現代のコナミゲームには出てこなかっただろうか。ゼビウスの無敵コマンドでもいいや別に。
まあ私自身の所感からすると、「ゲーム脳」という聞こえのいい言葉は少々定着し過ぎてしまった。こうなると、ゲームやアニメ以上の「社会的未知物件」が発生しない限り、この手の報道は尽きないのではないかと思う。つまりは気長に三つ目を待つ以外にない。ああ、各マスコミの上層部の方々をゲームにハめるという手もないではないな。マスコミ回春祭りということで、コナミの恋愛ゲームでも布教してみるのもいい手かも知れない。現実的かどうかは知らぬが。

報道と「ゲーム脳」などの関連についての雑感、ひとまず以上。
posted by しんざき at 01:21 | Comment(6) | TrackBack(0) | 無謀的世評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
一方でフィクションによって起こされた犯罪とし
一方でフィクションだから犯罪ではないとする
両者の違いはなんでしょうね
Posted by めあ2 at 2005年02月22日 21:19
>「2コンのマイクに「ドラミちゃーん」と叫ぶことによる性的欲求の増大」

Σ(・口・)
Posted by End at 2005年02月23日 01:32
>めあさん
むむ?えーと、「フィクションだから犯罪ではない」というのはどんな場合でしょうか?

>Endさん
別に私のことではないです。
Posted by しんざき at 2005年02月23日 19:27
「ゲーム脳」なんて一時的な流行っぽく感じてる人間な訳ですが
時代が時代ならTVが一般的になってきてる頃
TVばかり見てる人が犯罪を犯してたら
「TV脳」なんてのもあったかもしれないし。
(映画のバットマンフォーエヴァーでもあったなぁ・・・そんな台詞)
(脳に影響があるのではというのに対して「TVが世に出た時にも言われていた事」ってのが)

まぁ、騒いながら
漫画やアニメで殺人事件を推理するもの(コナンとか)や
ドラマでなんかの殺人ものをバッシングして
時代劇で人を斬るのに対して何も話を聞かないのも
おかしいと思うんですけどねぇ・・・。
Posted by もとひろ at 2005年02月23日 19:36
主に芸能人が集団強盗したとき等でしょうか

パラドクスのようですがゲーム脳について番組を見て
犯罪に走ると何脳なんだろう
Posted by めあ2 at 2005年02月23日 20:42
>もとひろさん
>「ゲーム脳」なんて一時的な流行っぽく感じてる人間な訳ですが
そうですね。ただ、一時的な流行に商品価値がある間は、それを煽るのがマスコミの仕事ですので、まだしばらくは普通に使われる言葉かと思います。

>時代劇で人を斬るのに対して何も話を聞かないのも
あんま受けないんでしょうね。

>めあさん
あー、どっかの女性タレントの話ですか。あれは単にバカだったというか、テレビに映っている中で社会と色々ズレているということを露呈した話みたいですね。
Posted by しんざき at 2005年02月24日 01:13
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