「だからさ、上司が何でもやっちゃうのもアレかと思うわけよ。ゾーマとか上司だったらさ、スライムとか自分の存在意義に疑問抱かね?「マヒャドでも何でも唱えてろよ」とか思わね?」
「いやお前、実際仕事やってたら絶対そっちの方がマシだって。上司ゴーファーよ?マジ何もしねえよ?モアイでも下克上出来そうじゃん?」
「・・・お前ら、それ以前にゾーマやゴーファーが上司ってことに疑問は抱かんのか?」
呪いのゲーム、だと思う。
1990年過ぎくらいまでの横シューの歴史というものは、一言で言ってしまえば「グラディウス」との戦いの歴史だった。そう言い切ってしまっても多分あんまり問題はなかろう。
1985年というとんでもない早期にこのゲームが出てしまったが故に、その後生まれてきた横シューは「いかにグラディウスとの違いを作るか」「いかにグラディウスを超えるか」に腐心せざるを得なかった。そして、超克するにはこのご先祖様は余りに偉大過ぎた。いってみれば、グラディウスはシューティング業界に掛けられた呪いだ。
グラディウス。 横スクロールシューティング。1985年、コナミより業務用発売。翌86年にはファミコンに移植され、FC黄金期キラーソフトの一翼を担った。超弩級移植度のX68000を始め、ありとあらゆるハードで移植作が作られたことも挙げるべきだろう。
練りこまれたゲーム性、緻密なグラフィック、凄まじい質のBGMなど、あらゆる面で「別格」の存在感により当時大ヒットを記録し、現在でも続編が出続ける長寿シリーズの礎にもなった。「スクランブル」「ディフェンダー」「ヴォルガード」などの先達を考慮に入れても、現在の横スクロールシューティングゲームの直接の始祖といってしまって言い過ぎではないだろう。
歴史については、例によって例のごとくというか、Wikipediaを参照して頂きたい。
Wikipedia
こちらのページの一番下で画像を見つけた。X68000版だが、当時の業務用と遜色はないと思う。
X68000版 グラディウス
また、内容については思った通りというか、バブシカ様が詳説してくださっている。氏の精密なレビューにはいつもながら瞠目させられる。
グラディウス
さて、まずはジャンルの話から初めてみたい。
・伝説級の影響力。
業界を俯瞰すると縦シューよりも横シューのタイトルの方が遥かに少ないことが分かるが、その原因って要するにグラディウスなんだろうと私は思う。
あるジャンルの隆盛を知るには、シリーズものの数が一つの基準になる。メーカーにとっては、人気ジャンルのシリーズものの存在は一番の稼ぎ頭だし、「このジャンルのゲームを出せば売れる!」というタイミングもゲームにはままある。
例えばRPGには、FFだのドラクエだの女神転生だの幻想水滸伝だのテイルズだの、古今東西山程人気シリーズがある。格ゲーにはストIIや飢狼伝説やバーチャ鉄拳ワーヒーサムスピ他色々、縦シューのシリーズだってかつての雷電やレイフォース系列、ガレッガシリーズやツインビーや首領蜂やエスプ・彩京シリーズなどなど、両手の指に余裕で余る数が思いつく。
ところがこれらのジャンルに比して、横シューの長寿シリーズというのは驚く程少ない。ある程度以上メジャーなシリーズという話になると、ヘタすると「R-TYPE」「ダライアス」家庭用では「サンダーフォース」くらいになってくるのではあるまいか(コットンとかもあるにはあるが)。このいずれも、当時のゲーム雑誌では「グラディウスとはどこが違うか」という視点で多かれ少なかれ語られてきたゲームだ。勿論横シューというジャンルそのものに作りにくい部分もあったのだろうが(こちらのページが参考になる)、一つには余りにも偉大過ぎた始祖の存在も大きかったのだろうと思う。
グラディウスを超えようとして果たせず、発売までこぎつけることすら出来なかったタイトルが、当時どれだけ存在したか。あるゲームがヒットすると雨後のたけのこの様に後追いが大量発生するのはよくあること(インベーダーとかテトリスとかストIIとか)なのに、グラディウスはそれすら許さなかったのである。
生みの親のコナミすら、「沙羅曼蛇」やグラディウスIIにおいて、初代グラディウスと凄絶な戦いを繰り広げていた様な気がする。例えば沙羅曼蛇の縦横交互スクロールや、グラIIのパワーアップ形式や高難易度など、いかに「グラディウスのが面白いじゃん」と言われない様に作るかという工夫が随所に垣間見える(そして最終的に、コナミはパロディウスに辿り着く訳だ)。
横シューの「完成形」というものをいきなり提示してしまった、グラディウスのとんでもない完成度が、この状況の一因になったのだろうと私は思う。
・で、グラディウスはどこが凄かったのか。
オプションじゃね?(ぶっちゃけ過ぎ)
いや、ゲーム内容については上記参照リンクのバブシカさんに大体言われている感があるのだが、私はゲームとしてのグラディウスは大体三つの要素が絶大な強みになっていると思う。つまり、オプション、地形、復活である。
オプションはご存知の通り、パワーアップカプセルを集めてオプションを取得することで、自機と同じ弾が撃てるようになる無敵の「分身」である。グラフィック的にも、当時4つのオプションが同時にワインダーレーザーを放っている画像が、実に実に「絵になる」画面だったものだ(実はレーザーよりもダブルの方が強い気がしたが)。
このオプションを、自機とある程度離れた位置に「配置」することが出来るというのが、グラディウス独特の「地形」や「復活」と結びついて絶妙のゲームバランスを生んだ。
地形によって攻撃しにくい敵もオプションを使えば簡単に撃破することが出来たし、モアイ面や逆火山面ではオプションは重要極まる盾にもなった。面によっては外科医的に精密な配置が必要となる展開もあり、ここがグラディウスを「敵を撃破していけばクリア出来る」シューティングゲームでは無くしたポイントである。
その一方で、自機が撃墜されると裸の状態で一定距離戻されるという「復活」要素は、いかに敵の攻撃を凌いでオプションやダブルを取得し、元の状態にもっていくかというまた別の戦略性を生んだ。
こうして、開発者の意図したことなのかどうか、グラディウスはおそらく史上初の「戦略思考的」シューティングゲームとなっていった訳である。腕の他にパズル的な思考も必要、というシューティングゲームはおそらくそれまでにあまり存在しなかった筈で、後の横シューの多くにパズル的な要素が盛り込まれている所以でもあるだろう。
ちなみに、このどこまでが開発者の意図した設計によるものなのか、という話に関しては、ある程度議論の余地がありそうだ。バブシカさんの書かれている、
企画者は新しいバブルシステムと云うハード上で実現出来そうなアイディアを紙の上で羅列して行き、実際にプログラム化された事によって、初めてグラディウスと云う名作が偶然完成したように思えるのです。というのも説得力のある視点だと思う。
個人的な思い出としてグラディウスを語ると、やはり音楽、あるいは効果音。レーザーが発射される時の効果音、自機がやられた時の効果音、空中戦が始まる時のわくわくする様なメロディ、その辺りは私の脳みその奥に染み付いている様に思う(特に散々聞かされた自機の爆発音)。
また、スピードを無闇やたらに集めまくって物凄い速さで地形をかいくぐる、みたいな遊びも当時やっていた。何速だったっけ、多分5速くらいで2面の中盤までというのが私の限界だったかと思う。あれでモアイ面や細胞面を抜けられる人は多分普通の人とどこか脳構造が違う。
シューティングゲーム業界に突如投げ込まれた超新星、グラディウス。願わくば、同じ程のインパクトのあるゲームにまためぐり合ってみたいものだ。
高次面の復活パターンは芸術だなぁ
そういや弟が、ベーマガ見ながらグラディウスの音楽打ち込んでたなあ。モアイ面のBGMをループさせてるとかなりヤバい精神状態になりました。アレは怖い。
暫くサボっていたのですが、またゲーム記事の方で復活したいと思っておりますです。
>高次面の復活パターンは芸術だなぁ
ですねえ。個人的に復活の楽しさに目覚めたのはもう少し時代下って「R-TYPE」だったんですけど。あのマゾさがたまらねえ。
>おやじノ介さん
>そういや弟が、ベーマガ見ながらグラディウスの音楽打ち込んでたなあ。
ああベーマガ。何人のプログラマーの卵を産んだことか。
モアイ面の曲はけっこー好きです。
>バブシカさん
いつもお世話になっております。実は密かにMAMEキャラシリーズ欠かさず保存しておりましたw
こちらもぼちぼちやっております。またお邪魔させてください。