お題:「あなたは悪の秘密結社のナンバー2です。最近いまいち覇気のない組織の活性化の為に、何か企画書を出そうと思います。どんなことを書きますか?」
お題は所詮トリガーなのであって、実際にはもう少し掘り下げてみないと見えるべきものが見えてこない。まずは思考を進めよう。
・どんなことでも、ゴール、目的を設定しなくては、道筋は浮かんでこない。
・組織自体が有する目的と、自分の中長期的な目的と、自分の短期的な目的は、別々に定義するべきである。それぞれ、同じである場合もあれば違う場合もある。
・複数の目的を一挙に解決出来ることが理想であるし、組織におけるアイディアとはそうあるべきだ。
上記を前提にしてみよう。
更に思考を進める。
1.悪の秘密結社は悪なので、組織としての目的は当然世界征服であろう。これは絶対の真理である。反論は許されない。
2.あなたはナンバー2であって、悪の組織の首領はあなたの上司として別にいるということになる。つまり、あなたは中間管理職である。とはいえ、ナンバー2ということは、ある程度の実権は握っていると判断して差し支えないだろう。
3.そして、組織に覇気がないということは、当該悪の組織の首領は、悪の癖にいまいち組織を有効な状態に保てていないようである。これは悪として風上にも置けない状況であるといえよう。理想の悪の組織を目指す為に、敏腕ナンバー2であるあなたは下刻上を検討しなくてはならない。これがあなた自身の中長期的な目的になる。
4.短期的な目的は組織の活性化である。活性化には色々な手法があるが、悪の組織として突き詰めると、アプローチはざっくり分けて二つくらいしかない。新戦力の導入か、敵愾心を煽るかである。戦力をてこ入れすることによって、全体の戦力が底上げされるのみならず、既存の戦力が「このままじゃやべえ」と感じてモチベーションを活性化させることは周知の通りであるし、組織として何よりも大切なものは「外部の敵」である。強力な外部の敵に対して組織が結束する際の力強さは、今更言及するまでもない。
5.つまり、「新しい戦力を入れて内部の競争を激化させる」か、「組織として新しい敵・目標を設定して、連帯の強化を狙う」かの二つの方向が考えられる。
ここまでをまとめると以下のようになる。
・組織としての目的:世界征服
・自分の中長期的な目的:下克上
・自分の短期的な目的:戦力の新規導入、あるいは新規目標の設定による組織の活性化
つまり、求められる最適解とは、「新しい目標の設定か、あるいは戦力の増強を図れて、かつ下克上を狙う為に自分の立場も強化出来て、最終的には世界征服の役に立っちゃうステキ企画」な訳である。嗚呼、なんという一石三鳥。敏腕ナンバー2は讃うべきかな。ここまでステキアイディアをぽんぽん出せてしまうナンバー2がいれば、世界があなたの悪の組織の前にひれ伏す日は全く遠くあるまい。多分再来月くらいには世界征服出来ちゃうと思う。
さあ、ここまで前提が固まってしまえば、もはや遠慮する必要はない。ただ、目的への最短ルートを進むのみ。レッツ下克上。レッツ世界征服。快適な悪の秘密結社ライフの為に、華麗なる第一歩を踏み出そうではないか。
--------------------------------------------------------------------------
後に、「ステキ改造人間計画」として、都内某悪の組織本拠跡から発見されることになる企画書の骨子は、大略以下のようなものである。
○本計画は、我が悪の組織活性化の為、戦力を増強することを第一目的としている。
○本計画は以下三段階に渡って実行に移されるべきである。
1.その辺から、なんか適当に能力がありそうな人間をさらってくる。
2.上記人間を改造して適当に洗脳し、我が組織の新戦力として活用する。
3.洗脳には万全を期すが、万一上記改造人間が逆らった場合は、組織全体をもってこの掃討にあたる。
○当該計画は組織副首領であるシソザキ博士の手によって実行されるものとする。
その前後のシソザキ博士の手記から、彼はこの「改造人間」を自らの私的戦力とすることを想定していたものと考えられる。
改造人間が改造する端から片っ端から逃走し、物好きにも揃いも揃って悪の秘密結社打倒の為に侵攻してくるというのが、彼の想定通りであったのかどうかは想像する他ない。
ただ、悪の組織本拠に大挙して侵攻した改造人間ズの皆さんが、勢いあまってシソザキ博士を含めた組織全体を撃砕してしまったことは周知の事実であり、上記のような思惑を考えれば皮肉極まる帰結であると言えよう。
この件に関する教訓は以下の一点に集約される。
悪の組織は改造人間を作るな。
以上、一般的悪の組織の皆様は重々ご承知おき頂きたい。
---------------------------------------------------------
この記事は、NoBorder第二回投稿記事です。
この場合に組織の目指す悪が過程での悪か結果での悪か判別する必要がある。大抵は体制に疑問を持つ者が組織の衰退を招くのだから疑問をいち早く解決できる状況を維持すべきです。
上司が部下を把握し、部下が組織を理解して初めて全体が機能します。
つまり、洗脳しちゃえばいいんですよね。