2005年03月05日
レトロゲーム万里を往く その21 〜ボンバーマン〜
42面で誤って敵に突っ込んで、リモコンを失ったときのあの絶望感を、今でも私は忘れられない。
アクションゲームを「操作感」寄りのゲームと「達成感」寄りのゲームの二種類に分類したとする。
達成感寄りのゲームには、例えばドアドアがあり、ロックマンがあり、スペランカーがある。
操作感寄りのゲームには、例えばバルーンファイトがあり、イーアルカンフーがあり、マッピーがある。これらは、お互いに共通項がない訳ではないが、ある程度対比可能だ。
しかし、それぞれの分野に極端な例というものが存在する。例えば私が考える「達成感」寄りのアクションの極北は魔界村だ。私はこのゲームのことを、基本的に操作のしやすさ、気持ち良さとは無縁のゲームだと思っている。以前のエントリーでもこの話をした。
そして、もう絶望的に操作感寄り、ただひたすらに破壊の快感のみを追い求め、達成感とかそーゆー難しいことはあまり考えていないゲームの一つの究極の形が、この「ボンバーマン」ではないかと私は考えるのだ。
「ボンバーマン」。1985年12月19日、ハドソンより発売。現在でも新作が出続けている長寿シリーズだが、実際のところこのゲームは、もっともシンプルだった一作目でもういくところまで行ってしまっていたのではないかと思う。
ゲーム内容に関してはご存知の方も多いであろう。主人公のボンバーマンは、地底王国で作られたロボットであり、邪悪な目的の元に強制労働をさせられていた。しかし、ある日そんな生活からの脱出を求め、自分で製作をしていた爆弾だけを武器に地上を目指して進んで行く。その前にはかつての同僚であった無数のロボット達がわらわらと立ちふさがるのであった、と、まあ大体こんな感じのストーリーである。「バンゲリングベイ」やロードランナーと同じ世界の話、という説もあった。
このストーリーの通り、爆弾によって壊せるブロックと壊せないブロックによって構成された地下迷宮を、ボンバーマンはブロックを壊しながら進んで行く。各ステージ一つずつどこかに隠されたアイテムを入手しながら、モンスターを爆弾によって制限時間内に全て倒し、これまたブロックの中に隠された出口を抜けてステージクリア、というのが大体のこのゲームの進行である。
とにかく爆弾。ひたすらに破壊。取り敢えず爆風。そんなゲームだと思っておけばまあ間違いはない。
爆弾の爆風が届く範囲や爆弾を置ける数は、アイテム入手によってだんだん大きくなっていくのだが、この爆風にあたるとボンバーマンも当然死んでしまう。よって、ある意味、アイテムによるパワーアップは諸刃の剣でもあるといえる。
このゲームの楽しさは、この「アイテム」に集約される。
はっきり言ってこのゲーム、アイテムが出てこなければ全然面白くはないのだ。しかし、アイテムによって主人公がパワーアップしていくことで、どんどんゲームの爽快感が増していくのである。火力が増えれば迷宮を炎の渦が埋めつくし、置ける爆弾の数が増えればぼこぼこと連鎖的に爆弾を配置して一瞬にして迷宮を破壊しつくすことが出来る。
アイテムの種類は以下の通りである。
・火力アップ
・セット数アップ(爆弾を置ける数が増える)
・スピードアップ
・リモコン(爆弾を好きなタイミングで爆発させることが出来る)
・壁通過
・爆弾通過(本来上を通れない爆弾の上を通ることが出来る)
・一定時間無敵
・ファイアーマン(自分の爆弾の爆風にあたっても死ななくなる)
以上8つ。この中で最重要なのは、間違いなく「リモコン」である。
このゲームにおいて、爆弾は置いてから爆発するまである程度タイムラグがある。このタイムラグは重要だ。敵もさるもの、特に最初の内は、敵の近くに爆弾を置いてもすぐに逃げてしまい、なかなか爆風に巻き込むことは出来ない。故に、慎重にタイミングを測って敵を待ち伏せすることが、このゲームの序盤のゲーム性の中核である。
ところで、そのゲーム性はリモコンをとった瞬間にあっさりと崩壊する。
なにせ好きな時に爆弾を爆発させることが出来るのだ。どんな動きの速い敵も、プレイヤーがボタンを押すだけであっさりと全滅である。爆弾の配置を少し考えれば倒せない敵など存在せず、ゲームは唐突に冗談の様な勢いで簡単になる。リモコンをとってからその他のアイテムを集めていくところまでが、このゲームの馬鹿馬鹿しい程の破壊っぷりの真骨頂と言えるだろう。
しかし、上に挙げたアイテムのうち、最初の三つ以外は全て一回死ぬと消えてしまう。後半面でタコミスでもやってしまうと、スピードが速い敵をどうにか倒す為に、なみなみならぬ苦労をすることになってしまう訳だ。
このゲーム、面をクリアするたびに自機が増えるのだが、残りボンバーマンが何十人残っていようが、40面辺りで調子に乗って自爆してしまうと途端に地獄が見える。源平討魔伝以上の諸行無常っぷりを、ハドソンは既にこの時点で実現していたのだ。これは驚くべき事実ではないだろうか。
他のパワーアップも、リモコンに負けず劣らずあると便利なのだが、「揃っていくごとにプレイヤーの注意力を削っていく」という恐ろしい副作用を有している。特に爆風に対して無敵になるファイアーマン。爆弾を連続しておいていくことで、途切れなく爆風を辺りに撒き散らすいわゆる「火炎放射」による破壊の感覚に酔いしれ、いきなり出てきた出口に爆風をあててしまって中から押し寄せたコイン(敵キャラの一種。超高速)にあえなく散ったボンバーマンが、当時何人いただろうか。
そう、実はこのゲーム、極端な話リモコンと慎重ささえあれば死ぬ要素は殆ど無くなるのだ。が、他のアイテムが揃って効率が良くなるごとに、プレイヤーの破壊欲はどんどん満たされ、反対にタコミス度は増えていくという、なかなか人間衝動に対する警告的な要素が盛り込まれているのである。プレイしている間は、自分の頭がかなり悪くなった様な感覚が楽しめる。現代でも遊べる、シンプルにして奥はそれ程深くない、ハドソン往年の名作だといっていいだろう。
音楽も、これまた耳に残る名曲だ。タイトル画面の音楽もいいが、個人的には通常迷宮内のどこか素朴な感じの音楽が、アイテムをとることによって変化するのが非常に好きであった。通常と同じメロディの中に、どこか遠くから不思議な音が響いてくる様な、素朴ながら印象的なメロディ。いずれも、単調な中にどこか懐かしさを感じる名曲である。

この記事へのトラックバック
ちょとツッコミ入れていいデスか?
>ここを読むだけだとリモコンが序盤では出ない印象があるデスよ。
あれ、そですか。確か最初は3面に出ますよね。
では、「リモコンを持ってる状態と持ってない状態で」って風に読み替えていただけると一つ。
時にしんざきさん、キテレツTシャツって御存じですか?
ココとかが有名ですが、ファミコンのTシャツとかたくさんあります。
http://www.h009.com/
私は前にココでボンバーマンTシャツを買いました。
あとはスターソルジャーやチャレンジャーがハドソンとの
コラボで作られています。
…って久々に見てきたら迷宮組曲とナッツ&ミルクTが
出てますよ!
これは買いで。
それでは、失礼しました。
ファミコンTシャツを作ってくれるページの存在は知ってましたが、キテレツTシャツという名前は存じませんでした。あれ、「ボコスカウォーズ」のTシャツは違うところでしたっけ?
迷宮組曲がいいですなあ。あと、忍者君Tシャツとか。真っ赤な。
30面ぐらいで「ファイアーマン」を取ってからは「オレ無敵」という感じでどんどん進んでいくんですよね、確かに。注意力が途切れる40面ぐらいで出口に爆風を当ててコイン(ボンタンでしたっけ?)と対決して、負け、後は地獄…
火力アップもしすぎると諸刃の剣、で。画面外から火が飛んできて死ぬことがありました…
なんか記事を読んでいたらもう一回やりたくなりました。
コメントありがとうございます。ボンバーマンは、なんといいますか、途中から「自分との戦い」にシフトしますよね。いや、面白いんですが。
テキトーレトロゲームブログですが、ごひいき頂けると幸いです。