でもね、ムスカは頑張ったんだよ。自らの出自に気づき、必死にラピュタ語を勉強して、軍隊で出世してあの若さで大佐になって、頑張ったんだよ。それが、パズー1人に全部パア!
確かにそうだ。
思うに我々には、ムスカさんに対するリスペクトとか思いやりといったものが足りないのではないだろうか。
Webでは、ムスカさんをネタにすることこそあれ、軍人として、マネージャーとしてのムスカさんをきちんと評価しましょう、という動きは残念ながら主流とはいえない。
しかし、ムスカさんが「やられっぷりがいいだけの単なる悪役」ではないことは、ラピュタ本編を見ていれば明らかではないか。彼はただの目が目が星人ではないのだ。彼なりにいろいろな努力をして、いろいろな能力を身に着けて、劇中あのような活躍が出来るに至ったのだ。我々はムスカさんのヤバさをもっと知るべきだと思います。
そこで、本エントリーでは、劇中から看取出来る描写を通して、人間・ムスカさんの再評価を試みたいと思う。Wikipediaの内容なども参考にしている。
○ムスカさんの背景
ムスカさんの背景は、以下のような諸要素で表すことが出来る。
・特務士官たる大佐である。
・若い。(Wikipediaの記載によると28歳から32歳)
・旧約聖書などについての知識、またラピュタ語などについて特殊な知識を持っている。
ラピュタ世界の軍隊の階級形式がどうなっているのかはわからないが、一般的に考えると「30前後で大佐」というのは、恐ろしい出世スピードであると考えていい。(参考:階級)
また、劇中パズーの父親のエピソードなどを聞いていると、ムスカさんの目的である「ラピュタの探索」というのは、一般的には相当荒唐無稽な話であった筈だ。であるというのに、軍の上層部は「ラピュタ探索」という目的について、ムスカさんに多大な権限を与えている。たとえ軍内部にコネがあったのだとしても、ムスカさんの交渉能力・事前調整能力が異様なハイスペックであることは疑いないだろう。
軍の上層部を言いくるめられる程の交渉能力を手に入れるに際して、ムスカさんが物凄い人間関係上の苦労を強いられてきたであろうことは想像に難くない。嫌いな上司に頭を下げたこともあっただろうし、部下との板挟みになったこともあっただろうう。ああ中間管理職。ムスカさん大変です。
ムスカさんの頭髪が年齢にしてはいまひとつ薄い点については、この辺りの「若い頃色々苦労した説」を個人的には推したい。
○軍人としてのムスカさん
いくつかの描写から、われわれはムスカさんが軍人としてもハイスペックであることを知ることが出来る。
・オープニング/対空賊族戦において、部下に時間を稼がせて自身は応援を要請する信号を送っている
・ロボット兵に対し、周囲(特にシータ)に対する被害を食い止めつつ撃破する戦術指揮
・ゴリアテ搭乗後、雲に逃げ込んだタイガーモス号を「雲の中では無駄骨」と泳がせている
→戦術的な状況判断、戦況判断が的確であり、またトラブル時も冷静である
・終盤、光量不足の玉座の間で、シータのおさげを一発で撃ちぬいている
・弾倉交換の手際が非常に良い
→射撃に関する技量が非常に高い
・ロボット兵暴走時、通信回線を破壊させて指揮権を奪取している
・ラピュタ探索前、ゴリアテの通信機器を破壊して軍本体との連携を切り離している
→命令系統の勘所をわきまえており、通信系が重要であることをよく理解している
こうして考えると、「戦術指揮官としてのムスカさん」が非常に優秀であることが読み取れる。危機対処能力、明確なビジョン、状況を支配下に置く手際についてもいうことはなく、また個人としての射撃能力も一級品として差し支えないだろう。
およそ、ムスカさんが戦術的に不覚をとったのは三場面のみ。
シータに不意をつかれて後頭部を瓶で殴られた場面、同じくシータに不意をつかれて飛行石を奪われた場面、最後のバルスの時のみであり、いずれも相手は年端もいかない子供である。そう考えると、彼は「子供相手にだけ詰めが甘くなる」という傾向はあるのかもしれないが、軍人としてのスペックの高さにケチをつけるような要素ではないと考えられるだろう。
○ムスカさんの人格
ムスカさんが、Wikipediaで「冷酷非道な人格」などと称されている理由のほとんどは、彼のラピュタ入り後の行動に帰せられるだろう。これについて考えてみる。
・ラピュタの中枢に行く際、ついてきていた部下二人を置き去り→その後部下二人転落
・モウロ将軍とその部下を海に転落させ、その後ゴリアテとの戦闘で容赦なくゴリアテを掃討(ゴミ呼ばわり)
・ラピュタ内部の木や虫に対する神経質な反応
・シータ相手に油断した末、飛行石を奪われてパズーに渡されてしまう→最後に反撃を許す
この辺り、目的達成を目前にしたムスカさんが、ちょっと浮かれて弾けちゃった、という感は正直なところある。いわゆる最高にハイ状態というヤツである。とはいえ、ラピュタに到着して以降、彼の行動が軍人としてのものではなくなっていることについては、元来「軍を利用してラピュタに到着、王としての座を奪取」ということがムスカさんの目的である以上、それ程不合理なものであるとは言えない。ゴリアテに対する掃討にしても、攻撃を試みたのはゴリアテの方であり、それに対し無抵抗では指揮官としての器を問われる場面だ。
ムスカさんの最大の失点は、やはり「シータに不意を突かれて飛行石を奪われる」の一点に尽きるだろう。これがなければ最終的にバルされることもなかった訳であり、ムスカさんの目的は問題なく達成されていた筈である。
「ラピュタのコントロールを握って調子に乗ってたら足元すくわれました」という点がムスカさんの画竜点睛を欠いたところであり、彼が小学校の通信簿に「嬉しいことがあると注意力散漫になります」と書かれていたであろうことは想像に難くない。残心を心がけることをお勧めしたい。
ちなみに、一部でムスカさんがロリコンロリコンと呼ばれている件についてであるが、個人の嗜好については私が考慮しないところであり、彼がロリコンであるかどうかの議論については割愛する。
以上の話をまとめると、
・ムスカさんは非常に高い交渉能力をもっている
・ムスカさんは多分若いころの苦労もしている
・ムスカさんは軍人としても非常にハイスペックである
・目的を達成した直後に油断してしまう点がムスカさんの最大の欠点であるといえる
というどうでもいい結論が導かれるわけである。よかったですね。>私
今日はこの辺で。
ラピュタ到着前は非常に優秀で、着いたとたんに無能の極みという感じ?
精神的に弱いなら尚更
集団行動と初志貫徹が組織軍人の基本原理ですし
「目的を達成した直後に油断してしまう点がムスカさんの最大の欠点であるといえる」
という部分を考えれば分かる気もしますがね。
まあソレだと、有能ではなかったってことには変わりがありませんが。
あくまで”なかった”という点が重要。きっと普段は有能なんだ。
まあ軍人が軍人としてラピュタを求めたのであれば反論になろうが、彼はそうではなく、王になろうとしたのだ。最初からそれを念頭に置いた活動をしている。
そして、ラピュタを支配下に置いた彼は、もはや大佐ではない。
軍人を皆殺しにしたのはその象徴的行動なんだよ。
あそこで軍人たちを使役したのでは、どっちつかずの役割となり、ムスカの悲願達成がぼけてしまうよ。
狡猾で駆け引きも上手いことは間違いないので、手段を有効に使ったと考えるべきか。
軍用拳銃(堅牢で低精度 が普通)を片手保持しながらあの距離で、体の小さな子供を対象にして
「次は耳だ!」
実際、それだけの技術を持っているはず
普通なら身体のどこかににあたったら上出来、という条件です
ラストもパズーと打ち合いで勝負することも厭わない態度から射撃センスも相当自信があるんだろう。
ただやはり人をゴミ扱いするセンスはいただけないなあ。
出世にしても、あのキャラクタならば、人の揚げ足を取ったり弱みを握っての陥れなどでのし上がったと考えたほうが自然。
軍の上層部は、世間一般よりも格段に、
ラピュタに関心を寄せていたのではないか。
ムスカは、それを利用することにより、
あの地位を手に入れたのではないかとも推測できるかも。
もちろん、大いに有能ではあると思います。
これはやむを得ない措置
それを狂気の笑みで行う理由は不明
ひょっとすると、他に信用でいる部下がいて、彼らに対して厳しい面をみせて威圧しているのかも
私は、あの世界に世界大戦規模の戦争があったと思っています。あなたの考察は、とても良い裏付けになりました。ありがとうございます。
ムスカ大佐のスピード出世は、金で手に入れた地位との説もありますが、彼のスキルを考慮すれば、戦争があったと考えるのが自然です。
彼の行動からから、実戦経験があると想像するのは容易でしょう。
戦争は軍人の進級を加速させます。若くして大佐になるのは、金や功績だけでなく、欠員がなくてはなれません。戦時の若い司令官は、最前線に送られます。老人は誰もやりたがらないからです。
最前線でのムスカ大佐は、壮絶な苦労を強いられたのだと思います。
戦争で活躍する若きムスカの姿を映像で見てみたいものですね。