週末恐ろしい勢いで飲みや花見が立て込んでいたこともあり、今日は一日寝ていました。すいませんごめんなさい(私信懺悔)
ゴーストライター話。閑話休題である。
情報の出力というものは、入力の性質と量によるものだとつくづく思う。
人間の脳は、様々な情報を取り入れないと出力するだけの体勢を整えられない。これは別に「ある話題を聞けば、その話題に関連したことが思いつく」というものだけではなく、ある話題を取り入れた時、出力する用意が出来る情報はまた全然別のものだったりする。とにかく情報の出入りがあるということが重要で、少なくとも私に関する限り、何か別のものに耳を傾けないと何を書くことも出来ないということが良く分かる。
という様な言葉を、昔ゴーストライターをやっていた頃とある作家さんから聞いたことがある。
カンヅメ、という言葉はご存知の方もあろう。締め切り間際になっても原稿が上がらない作家さんを、現実逃避のテレビ鑑賞だのネットサーフィンだのドラクエだの風俗だのの誘惑から引き離す為、なーんもない様わざわざセッティングされたホテルの一室に閉じ込める制度である。この「カンヅメ」という手法、割とどこの出版社も日常的に用いるものであるらしい。大体の出版社はカンヅメ用に簡単に話をつけられるホテルを用意してあるというし、出版社によってやり方が違うという話も聞いたことがない。
冒頭の言葉を話した人は「カンヅメ」という状態を凄く嫌う作家さんで、どんなに追い詰められてもあの手この手で用意されたホテルの部屋から逃げ出そうとする。この逃げようとする手段がつくづくバラエティに富んだもので、それだけいろいろ思いつくならば脱獄もの小説の一本や二本書けそうなもんだが、と当時も思ったものだ。ちなみにこの人、編集者泣かせの遅筆作家であった。
少なくとも、私が知る限り「6階のホテルの窓から、道具の持ち込みなしで外まで脱出するにはどうすればいいのか」というテーマを真剣に実践するつもりで考え、実行しようとした人間はこの人だけである。ホテルのシーツを裂いてロープにしたとして、地上にたどり着くに十分な長さにおけるシーツの強度はどの程度か、ということを散々研究し、しまいにはフリークライミングのジムに通い始めた、とかいう話を知人の編集者さんから聞いた。いいから通ってる間に原稿書け、とか思わないでもない。
飲みの席で「ベッドの上に載った状態で下に飛び降りたとして、何階くらいからなら打撲程度で無事着地出来るか」という話を1時間くらい聞かされたこともある。私にはよー分からなかったというか、ベッドつきなんてむしろ3階から飛び降りても死ぬんではないかと思わないではなかったのだが、ベッドの材質によっては理論上6階から落ちても大丈夫なのだそうだ。っつか、窓の下の惨状とかそーゆーものは考えないのだろうか。
ちなみにこの話、後ろでまったく別の会話をしている振りをしていた編集者にしっかりと聞かれており、以後この作家さんが放り込まれる部屋は十一階になった。
まあ、確かにホテルの一室にテレビも本も無しに放り込まれるというのいはひっじょーーーに気詰まりな状態であり、思いつくもんも思いつかないというのは分からないではない。私にしても休日ぐでぐでとしている状態からは、たとえいろいろ書く題材があったとしても書く気力が沸いてこない。情報の出入りが重要だ、ということは実に実に納得がいく。
ただし、この台詞が遅い作家さんの現実逃避の言い訳に使われることも物凄く頻繁にあるのであって、上記の作家さんなどは脳みそと情報の動きを云々言いながら信長の野望をやっているのである。
結局のところ編集者の方は「あーはいはい」とか言いながら何の情け容赦もなくチェックインの手続きを済ませるのが通常だ。やはり怠惰な人程色々な理屈をこねるのが上手ですね、という好例であると言えよう。
ということで、実は以上の話はすべて「今日は寝てたんで何も書くこと思いつきません」というテーマに流れこむ内容なのだが、このテーマでこれ以上くだくだしく話をもたせた人はいるだろうか。他のブログでご存知の方、よかったら教えてください。もっとこのネタで長引かせますので。
2005年04月10日

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