2012年11月29日

見下さない交渉術と、見下す交渉術。



よく言われることなのかも知れないが、意見を広める・賛同者を獲得しようとする際の手法には、凄く大雑把にいって

・持ち上げる・フォローすることによって賛同者を獲得する
・見下す・こき下ろすことによって賛同者を獲得する


という二つの方向性がある、と思う。


上のような話を始めるには、経緯がある。元々私は、「意見を広める」という目的の為には、自分の意見に同調しない相手を見下すのは悪手だ、と考えていた。

宗教家だろうが詐欺師だろうが、相手を取り込む為にまずすることは、相手の懐に入りこむことである。その為には、まずは相手を肯定しなくてはいけない。肯定し、フォローすることでガードを緩くさせ、緩くなったガードに自分の意思を侵入させる。この時「肯定する」のは必ずしも相手自身についてとは限らず、相手が既に信じている考え方でも、相手が信じたいと思っている知識でも、まあ相手が帰属するものであれば何でもいい。交渉術の基礎のキだと思う。

「相手を見下す」ことは、基本的には相手のガードを上げさせるだけである。だから私は、議論において「相手を見下す」言動をするのは、どうも筋悪だなあと思っていた。



ただ、「特定の相手を説得する」ではなく、単に「賛同者を獲得する」ということであれば、「攻撃する、こき下ろす」ことによって賛同者を得ている、あるいは得ようとしている人はたくさんいるなあと、ここ数年で思い直した。


つまり、Aという対象を徹底的に攻撃することによって、

・元々Aに悪感情を抱いていた人
・Aのことは良く知らないが、攻撃されている内容を見て「Aはダメなのか」と素直に考える人
・一緒に攻撃した気分になって自分も優越感を得たい人


といった、Aとはまた別のフォロワーを得られる場合があるなあ、と思った訳なのである。これはこれで、もしかすると一般的な手法なのかも知れない。

思うに、いわゆるデマゴーグ(扇動家)と呼ばれる人が使う手法は、多くの場合これだ。彼らは、誰かと議論をする際、「相手を自分に賛同させよう」とは考えない。ただ、「相手を徹底的に見下し、攻撃することによって、他の誰かに自分を正しいと思わせよう・自分に賛同させよう」と考える。この「誰か他の人に見せる為の議論」をする場としては、Webというインフラは非常に有力だ。

その上で、自分の側に立った人に対しては、「肯定する交渉」を行うことで、自分への賛同を固定化させようとすることは多分あるのだろう。他人に攻撃が為される中、自分はちゃんとフォローしてもらえた、と思うことによって、熱心なフォロワーになる人もいると思う。

これはこれで、倫理的なことを考えなければ有力な手法だ。

勿論これは計算ずくでやるからこそ有効なのであって、「単に優越感を得る為に自分の意見に賛同しない人を見下す人」もいるのだろうと思うし、それが筋悪なことに違いはない。ただ、もめ事が人目を惹きつけることは事実だし、そのもめ事の後、もめ事の当事者の支持者が増えていることがある、というのも単純な事実である。



私は、上のような交渉法については、否定も肯定もしない。ただ、「扇動され得る側」として、「何かを否定することによって、他の人の意見を誘導する」という手法があることについては、頭に入れておいた方がいいといいなあと思った次第である。


以下は関連エントリー。

実践扇動屋入門・扇動屋になる為のたった二つのTIPS


posted by しんざき at 14:36 | Comment(0) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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