2005年04月21日

続・mixiと2ちゃんの比較論

しまった。私としたことが、前回のエントリーでは「相似と相違について考える」などと言っておきながら。「相似」というものについてまったく書いていなかった。不覚。

ということで、補論という程のもんではないが、追記としてもうちょっと考えてみよう。前のエントリーでは「トラブルに対する自己防衛法」という方面からしかこの二つを比較しなかったが、本エントリーでは共通項を中心に書いてみる。本来の順序と逆だがまあ気にしない。

明日システムリリースであんまり時間がないのでエッセンスだけ。補足はするかもしないかも。

まず、列挙。mixiと2ちゃんが似ているところ。


1.コミュニティー内が「話題」という区切りによって細分化されている。

2.上記と関連して、ある「話題」という区切りの中では中心人物が必須とされない。

3.新規参入者にとって、物理的・あるいは心理的な障壁が存在する。


では、ひとつひとつ追っかけてみよう。

1と2は関連した話である。まずは1番から。

mixiにせよ2ちゃんにせよ、住民がコミュニケーションを取る場は「話題単位で集まる場所」である。2ちゃんで言えばスレッドや板、mixiで言えばコミュニティーになるだろう。この「会話の場」とでもいうべき単位はかなり強力なもので、利用者が通常触れる場所は九割方これだ。あるスレッドやコミュニティーの「住人」という形で結束が強くなる例もままある。

反面、他のコミュニティーやスレッドと、「単位同士のお付き合い」というのは比較的少ない。つまり、単位がはっきりしている割に、個人HP同士なら一般的な、「コミュニティー同士の相互交流」の様なものがあんまりない。まあ、住人の行き来自体は幾らでもあるだろうが。

そして2番。上記の単位においては、仕切る人物が必須ではなく、基本的には参加者は皆平等である。スレあるいはコミュニティーを立てた人物が当初中心的な役割を求められることはあるが、大体の場合、ある程度以上盛り上がった場所では「中心人物」がいなくても会話が回る。これは個人のウェブページとははっきりと違うところだ。

以上の二つは、どちらかというと構造的な、「単純に」似ている部分である。mixiや2ちゃんをやっている人なら誰でも分かるし、スレッド式掲示板ならどこも同じ様なものではある。

問題は3番だ。

心理的だの物理的だの言うとめんどーくさいが、要は障壁というのは「入りにくい」ということを意味している。

mixiに関しては分かりやすい。mixiは、「既存のmixiユーザーに招待してもらえないと入れない」という物理的な障壁を有している。mixiファイアウォールという奴だ。勿論この障壁には抜け道はいくらでもあって、確固たる意志をもった人間を防ぐことはどうやっても不可能な訳だが、少なくとも「噂程度にしかmixiを知らない人」にとっては、次のステップに進む為の大きな壁である。

では2ちゃんねるはどうか。最近はどの程度のものなのか知らないが、少なくとも一昔前は、「2ちゃんねるを見る」ということにはある程度心理的な障壁があった。
原因は内的なものと外的なものの二種類がある。

・2ちゃんねるに対する負のイメージの存在(アングラ、便所の落書き、など)
・2ちゃんねるを嫌う人が多い、という伝聞

まあいちいちくだくだしく解説する様なことでもないだろうが、「アンダーグラウンドの象徴」の様に思われていた2ちゃんねるの残影が、随分長いことネット界には存在していたということだ。存在していたというか、むしろ最近はそういったイメージが強くなっているかも知れない。ネットをやっている人間には「2ちゃんって実際どーいうもん」というのは大分広まっている様にも思うが、ニュースなどで中途半端に2ちゃんねるの名を耳にした人にとっては、正体不明感は遥かに増している様な気もする。

2ちゃんねるもだいぶ人口に膾炙した感はあるが、決して良いパブリッシュイメージが出来たとは思われず、今でも公共の場では「2ちゃん見てます」とかいいにくいです、という様な人は案外多いのではあるまいか。

まあ、この「一昔前の喫茶店的なイメージ」が、2ちゃんに近づきにくい原因にも結果にもなっていた訳だ。


と、ここまでをつらつらと考えてみると、やはりmixiの今後がちょっとばかり心配される訳なのである。

どんなコミュニティーであれ、「正体不明感」というものは公的イメージに対する最大の敵である。中身がよくわからない団体程怪しげなものはない。

2ちゃんねるは、その心理的障壁の存在故に「正体不明」のままどんどん膨れ上がっていった様な感があり、その結果インターネットの様々な負の面に対する「受け皿」の様な役目を担うことになってしまった。何か少年犯罪が起きたらまず○○を疑え、という様な例のアレである。実際2ちゃんねる発祥の洒落にならない事件というものは結構色々ある訳で、イメージが出来てしまうのも仕方ない、とは言える。

2ちゃんの心配など今更しても何の意味もないが、mixiはちょっと事情が違う。mixiは、現在膨れ上がっていく途上にある。そして、物理的な障壁の故に、「正体不明感」というものは総量として増えている。mixiという名前を聞く機会は増え続けているが、中身は見てみるまで分からない。mixiユーザーには実感出来ないことかも知れないが、mixiって最近よく聞くけど実際なんなのかよー分からん、という人は意外な程多い。

前回mixiの内部で起きているらしき詐欺事件やネット軟派などについてちらっと触れたが、mixiの人口は48万人を超えている。48万人というのは「どんな奴がいるのか分からない」という言葉を使うに十分な人数であり、社会問題を引き起こすにも十分過ぎる人数でもあり、要するに今後は詐欺や軟派どころでは話が済まない事件が起こる可能性も十分ある。というか、多分あまり遠くない内に「mixi発祥の洒落にならない事件」というものは出てくるだろうと私は思う。実際、海外ではSNSを原因とする洒落にならない事件は割りと遠慮会釈なく増えているという話も聞く。

その時にmixiの中の人々が対応を誤ったとしたら、mixiがその正体不明感故に、社会から「2ちゃんねるの眷属」的な見方をされる様になりはせんか、と。ひいてはSNSというこれからのサービス自体が社会から怪しげな視線を向けられることになりはせんかと、私はその辺を心配しているのである。

-----------------------------------------------------------
(05/04/24 追記)
ところで、奥様から指摘を受けたのでちょっと追記。

mixiの主たる防御策は無論のこと「誰かに紹介してもらえないと入れない」ということである。これがある限りmixiに入って来るのは知り合い同士ばっかりなのだから、集団自殺だのなんだの人死にが絡む「洒落にならない事件」というのはおきないんではないか、という話があった。

これなしではSNSとして成立しないので書かなかったが、mixiの防御策の最大の弱点は「入会の可否判断がユーザーの手にゆだねられている」という一点である。

現実問題「mixiやってます」とかWebページなどで書いている人がいたとして、そのページ上で多少仲良くなった程度の人に「mixi紹介してくれませんか?」といわれて断る人は少ないだろう。管理側が理想としているレベルの可否判断基準をあらゆるユーザーが持っているかというと、それはちょっとありえない。

また、多分日本人の特徴なのだと思うが、「人付き合いを前提とすると判断基準が甘くなる」という点が一つある。つまり、たとえ「ちょっとイヤな奴」などと思っていたとしても、面と向かって紹介を頼まれると拒否出来ない人はかなり多い。これも「日本人にSNSは向いていない」などと言われる理由の一つかと思う。

だからといって一定の可否判断基準で入会を縛る方が良いとも思わないが、こと「トラブルの可能性」という面から見ると、安全な知り合い同士ばかりがmixiに集まるということもないだろう。
posted by しんざき at 23:54 | Comment(12) | TrackBack(0) | ネットの話やブログ論 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
うーん。正体不明感っていう共通点ですか。

海外SNSでは、既に結構「2ちゃんねる的」に見られている例も出てきてるらしいですね。まあ、それが即SNS全体に対する不信感には結びついていないみたいですけど。

日本だとどうなのかな。
Posted by end at 2005年04月22日 10:19
共通点で一番の相違点だろうねぇ
2chは中を見学できる正体不明、mixiは中を見学できない正体不明。第三者を含めた議論の場の提供と第三者を含めない議論の場の提供、よく言う殺伐と馴れ合いの関係。

SNS発祥の犯罪に対する危惧は当然しなきゃいけないだろうし、悪い例えをしちゃうとそれぞれが秘密結社だから管理者の監視が一層大事になってきそう。もし1件でも事件がおきた場合、それ以降外からは正体不明なだけに運営による強い統制が絶対条件になるんじゃないかと

事件だと一番に心配なのは一昨年くらいから流行ってしまっている自殺系かな・・・・
Posted by 通りすがった at 2005年04月22日 23:27
>endさん
むう。そもそも日本人にはSNSっていうサービスは向いてない、とかどっかで論じてる人がいましたね。誰だっけかな。

>とおりすがった人
コメントどーもです。

>2chは中を見学できる正体不明、mixiは中を見学できない正体不明。

ですな。まあ、mixiの方には「特にはばかりなく話題にすることが出来る」っていう強みはありますが。

>事件だと一番に心配なのは一昨年くらいから流行ってしまっている自殺系かな・・・・

48万もいると、もうひとつひとつのコミュニティーの内容監視なんてそうそうできないでしょうしねえ。妙なコミュニティーがすぐ回りの人に分かればいいんですが。
Posted by しんざき at 2005年04月23日 18:54
長いことネトに繋がっておりますが
ここで見るまでmixiって知らんかったですよ
Posted by めあ2 at 2005年04月23日 19:50
初めまして。検索エンジンからです。

日本的云々の話で思うのですが、2chってかなり日本的なシステムだなと思っているのですよ。

村・家庭のユニットを基本にして社会が回されてきて、近代以降そこに個人主義が入ってきた後の現状では、「主義・主張はあるが、場の秩序は乱したくない」という気分の人は多いのではないかと思います。

そういう人達にとって「社会性を完全にすっ飛ばしてオピニオンが言える場」ってのはかなり心地よいんですよ。逆に社会性を維持しながら遠慮無く主張を出来るシステムが確立されていれば、あんなに2chは流行らなかった気はします。

上記の考えで行くとSNSが今後日本で根付くかは、微妙な気がしますね。そもそも「コミュニティ」というもの捉え方が西欧とはかなり違うでしょうし。

mixiの防御策ではこんな話を思い出しました。
「と学会」の本にあったのですが、ある「学会」の会員になるには、会員3名の推薦が必要だったのだそうです。
当初は折り目正しい学会として機能していたのですが、ある時期たまたま3名ほど疑似科学に嫌悪感の無い会員が揃ってしまい、疑似科学関連の在野学者が何人か入会してしまったそうです。
彼らが次の人たちを呼び込むので、現在その学会では全く防波堤は機能していない状態なのだそうです(笑)
Posted by さいとう7 at 2005年04月25日 09:02
>めあさん
>ここで見るまでmixiって知らんかったですよ

期せずしてmixiを広めるのに協力してしまった。ハマるとなかなか楽しい遊びの様ですよ。

>さいとう7さん
コメントありがとうございます。

>「主義・主張はあるが、場の秩序は乱したくない」という気分の人は多いのではないかと思います。

これは思いますねー。ブログにしても、これがなかったらこんなに流行らなかっただろうとも思うし。普段存在しない「議論の場」ってものをどっかに求めているところがあるというか。

結局、個人主義個人主義言われてますが、日本って徹頭徹尾個人主義を受け入れられない国なんじゃねえか、とは思います。

>上記の考えで行くとSNSが今後日本で根付くかは、微妙な気がしますね。そもそも「コミュニティ」というもの捉え方が西欧とはかなり違うでしょうし。

同感です。日本に輸入するとしたら、かなり「日本向け」にチューニングする必要があるんだろうなあと。今のmixiとかは、割とぎゃーこくのSNSをそのまま輸入してきてる感じですもんね。それで48万人まで大きくなったのは、やっぱり一番手の強さなのかなあとは思いますが。

>彼らが次の人たちを呼び込むので、現在その学会では全く防波堤は機能していない状態なのだそうです(笑)

あー。なんといいますか、ひさしを貸して何とかって状態ですね。
Posted by しんざき at 2005年04月25日 11:21
>同感です。日本に輸入するとしたら、かなり「日本向け」にチューニングする必要があるんだろうなあと。

あとは逆に日本特有の場を重んじる風潮に「なじみ過ぎて危険」という可能性もありますね。
人は人で自分は自分だから的な価値観が徹底してないと、結局システムに振り回されるだけというか。

現状のSNS各サイトが、そこのところを上手く捌かないと、爆発的ブームの後、すぐに下火になる可能性も大きいと思います。

その点では(全てに同意はしませんでしたが)以下のテキストが興味深かったです。
http://mimi33.exblog.jp/2445245/

前回のエントリーでのご指摘のように、2chはシステムが荒っぽいから、ユーザーが自己防衛力を強化せざるを得ないわけで、そこの部分は上手く出来てるなと。
あのシステム全てを肯定するわけではもちろんないですが。
Posted by さいとう7 at 2005年04月25日 12:17
>さいとう7さん
お返事遅れました、失礼しました。

>人は人で自分は自分だから的な価値観が徹底してないと、結局システムに振り回されるだけというか。

最近大航海時代Onlineってゲームをやっていてちょっと思ったんですが、ネットゲームでも似た様なことがいえそうです。なんとゆーか、べったりと友達になってしまったらなってしまっただけ、義務的に費やす時間が多くなっていく様な、そんな人が多そうに思います。

>前回のエントリーでのご指摘のように、2chはシステムが荒っぽいから、ユーザーが自己防衛力を強化せざるを得ないわけで、そこの部分は上手く出来てるなと。

システムといいますか、どうしてあーゆー場所が日本を基調とするネットに出現出来たのか、個人的には結構不思議に思います。
アレはまだ「ネットが怪しいシロモンであった時代」からあるものだからこそ出来た空間なのであって、今全く2ちゃんと無関係に同じ様な場所を作ろうとすると結構難しいかも知れないですね。
Posted by しんざき at 2005年04月27日 15:02
しんざき様
はじめまして。こちらへは「mixi」について調べていてたどり着きました♪

なぜかというと、ちょっとだけ仲良くなったサイトの管理人さんからお誘いのようなものを頂いたのですが、初耳なうえ「紹介されないと入れない」という、ちょっと私から考えると妙な感じの場なので「どのようなものなの?」と思ったからです。

お誘いを頂いた手前、「あ、やっぱりいいです」というわけにもいかず・・・
とても参考になりました!有り難うございました。


Posted by 大津絵 at 2005年05月21日 08:56
>大津絵さん
コメントありがとうございます。

>初耳なうえ「紹介されないと入れない」という、ちょっと私から考えると妙な感じの場なので「どのようなものなの?」と思ったからです。

中身が良く分からんから敷居が高い、って面は結構ありますよね。まあ、入ってみればそんなに大仰なものでもないと思うんですが。

Posted by しんざき at 2005年05月21日 20:29
mixiやってた人から聞いたんですが、その人は

・足跡(訪問履歴?)が残っちゃうのがイヤ
・あまり関わりたくないリアルの知り合いに見つかっちゃった

などがあって「性に会わない」って撤退しちゃったらしいです。
なんとなくわかる気がする。
Posted by Zhao at 2005年05月23日 11:04
>Zhaoさん
>なんとなくわかる気がする。

mixiってつないでる間中誰かから見られてる感じがする、ってことはほかの人からも聞いたことがあります。

っつーかオレ全然つないでないや。たまにはチェックせんと。
Posted by しんざき at 2005年05月23日 15:40
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック