おさるのジョージについての話題を拝見しました。おさるのジョージは、土曜朝8:35からNHK教育で放映されている、おさるが主人公のアニメです。
やまもといちろうBLOG:『おさるのジョージ』の黄色い帽子のおじさんの心の広さは異常
NHK:おさるのジョージ
おさるのジョージ、面白いですよね。うちの息子も、土曜午前に用事がない時は欠かさず見てます。まあ、その後大体9時半からのぶらり途中下車の旅まで観たがるんで、どっかを犠牲にして朝ごはん食べさせるんですけど。
ところで、おさるのジョージの直後の9:00から、もう一つ、クレイアニメ風の番組が放映されています。「ひつじのショーン」です。息子はそこまでテレビ好きではないのですが、こちらも好きでよく観ています。
ひつじのショーン
このひつじのショーンも、おさるのジョージと同様、「動物とその飼い主である大人が主軸のコメディ」なんですけど、この対称性が物凄いんですよ。
おさるのジョージに出てくる黄色い帽子のおじさんと似たポジションとして、ひつじのショーンには「牧場主のおじさん」が登場します。ひつじのショーンに出てくるキャラクターの大部分は、この「牧場主のおじさん」の管理する牧場の動物たちです。まあ、たまに宇宙人とかも出てくるんですが。
まず、この牧場主のおじさんの立ち位置が黄色い帽子のおじさんと真逆。黄色い帽子のおじさんが大人であるのに対して、もう物凄い子ども。飽きっぽく、なんか新しいものに手をつけてもすぐ投げ出し、ショーンたちのいたずらには気付かず、何かいいことがあるとすぐ上機嫌になる反面、上手くいかないことがあると徹底的に不機嫌になり、牧羊犬のピッツァ―がとばっちりを受けます。あと眼鏡がすぐぶっ壊れて何も見えなくなります。
というかこのアニメ、基本は「ショーンたちが色々ないたずらをして、そのいたずらで大混乱する大人(=牧場主のおじさん)を見て笑う」という内容のコメディなんですね。
ショーンは単なる牧羊なんですが、アニメの立ち位置的には、ショーンの立場の方が牧場主のおじさんより完全に上です。体格は小さくても、牧羊の群れの中でガキ大将的な立ち位置を占めて、いたずらを指揮したりしておじさんをおちょくるのがショーン。終始一貫してピエロ的立ち位置に徹するのが牧場主のおじさん。
これが、「ジョージが色々な遊びをして、それが結果的に周囲の大人の役に立ち、周囲の大人から認められ、黄色い帽子のおじさんはいつも包容力を発揮してくれる」おさるのジョージと完っ全に逆です。もう180度逆。バイナリィランドかよってくらいの物凄い対称性だと思います。
おさるのジョージの直後に、対照的なひつじのショーンが来る。私の勝手な想像なんですが、これ、ある程度意識してこういうセットにされてるんじゃないのかなあ、と。
「おさるのジョージ」において、子供は当然ジョージに感情移入します。好奇心いっぱいに色んなもので遊んで、時にはお手伝いもして、結果的には大人が褒めてくれるし、大人がフォローしてくれる。頼もしくて優しい大人達に目いっぱい甘えられる幼児としての、いってみれば被承認と安心感が得られるアニメ。
「ひつじのショーン」において、子供は勿論ショーンに感情移入します。リーダーシップを発揮して、機転を利かせて、時にはピンチを乗り切り、時には大人をおちょくり、視聴者に向かってウィンクする。大人より優位に立つスーパー子供として、いってみれば万能感と爽快感が得られるアニメ。
一方では大人の頼もしさを摂取して安心感を得ることが出来、一方ではいたずら小僧になり切って万能感を得ることが出来る。どちらも(フロイト的な意味での)カタルシスには違いないと思うんですが、この二つを続けて放映することは、NHK独特のバランス感覚の表れかも知れないと思いますし、そこが子供の心を捉えている部分でもあるのかも知れない、とか思うんですが、まあ考え過ぎである可能性は否定しません。
ちなみにうちの息子が一番気に入っているのは、ジョージでもショーンでもなく、どういう訳か9:30からのぶらり途中下車の旅です。彼のツボはたまによくわかりません。
一応まとめておくと、
・「おさるのジョージ」と「ひつじのショーン」は構成が対照的である
・前者は、頼もしい大人に認めてもらえるアニメ。後者は、情けない大人をいたずらでおちょくって笑うアニメ
・前者では子供は安心感を、後者では万能感を、代償行為として得られるのではあるまいか
・この二つをセットで放映しているのはNHKの巧みな技なのではないかと思うが気のせいかも知れない
・牧場主のおじさんは一体いくつスペアの眼鏡を持っているのか問い詰めたい
と言う感じのどうでもいい結論になるわけです。よかったですね。
今日思ったことはそれくらい。
2013年01月30日

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言われてみればそうかもしれません。
うちの子は、両方大好きです
でも、どちらも好きです。
知人のインド人の6歳児も大好きだそうですよ。
笑えました。愉快な考察ですね。
わたしの子どもも大好きなアニメです
何より、クレイの技術そのものが素晴らしいです。キャラデザも動きも、細かい表情づけも細部への行き届いた表現も。
その背景には、イギリスのお家芸的な面もあると思います。Mr.ビーンもそうでしたが、おばかな大人を嗤う、というコンセプトは英国の表現物だと頻出するテーマですし。
おさるのジョージ、は原作の絵本はアメリカでしたよね、確か。あの国の場合、大人が大人らしく振舞うことでカタルシスを得るという展開が多いですから。映画でも文学でも。そういった背景の違いなんかもあるんでしょう、きっと。(てきとー)
私もジョージの発想などが子どもみたいで可愛くて好きです。みんなハッピーな雰囲気も心が温まる感じでいいです。
ジョージの試行錯誤は教養番組だなと感心し,ショーンの,牧場主の帰宅間際に原状回復(復旧)を成し遂げるチームワークと技術力に感心してます。
子どもには,どちらも吸収してもらいたい。