2013年02月12日

一部マスメディアの報道姿勢は何故改善されないのか。

最初に、何が書きたいのかを明示しておく。

・一部の新聞社やテレビ局の報道姿勢が問われる案件が多発している。
・報道姿勢を批判することは必要だが、実際のところ、それら批判に応じて、マスメディア総体としての報道姿勢が改善される可能性は極めて薄いと思う。
・何故なら、改善することによるメリット・改善しないことによるデメリットが薄いから。
・報道姿勢を批判するだけではなく、それらメリット・デメリットを大きくする為の、体制的な部分を考えた方が建設的ではなかろうか。
・けどまあ、実際のところそういう体制の見直しが入る可能性も薄いよね。髪の毛で言うとほぼハゲてるよね。


以上である。それ程建設的な結論には着地しないことを事前に申し上げておきたい。



以下、本論。

近頃また、一部の新聞社や一部のテレビ局(以下、面倒なので一部メディアと呼称する)の報道姿勢・取材姿勢が問われる案件が多発している。例えば、アルジェリアの事件における実名報道に関するアレであったり、ウィルス事件におけるソレである。

具体的に各案件に触れていると長くなるので言及を避けるが、批判されている内容は大方においてもっともだと思うし、倫理的に改善されるべきところは多いなあ、とも思う。

ただ、起きていること自体はずーーっと昔から起きていたことだし、ずーーーっと昔から批判されていたことでもある。

これらの姿勢が改善されることはあり得るのだろうか?というと、端的に言って「ない」と思う。尻尾切り的に一部が切り捨てられたり小さく謝罪が出ることは今後もあるかも知れないが、総体としての既存マスメディアの姿勢が変わることは、今までなかったし、多分これからもないだろう。


何故かというと簡単な話で、改善してもメリットが薄いから。もうちょっと具体的に言うと、一部メディアの収益のボトルネックは、コンテンツの内容や報道姿勢の公正さには依存していないから。


今更言うまでもないことだが、大多数のマスメディアはれっきとした民間企業であって、収益を追求する義務を負っており、その為に色んなことを最適化しようとしている。

普通の企業なら、悪いことをすれば評判が落ちて売上が下がるし、場合によっては当局からメスが入ることもあるので、悪いことの改善に努力する。しかし既存マスメディアの場合、当局からのメスは形骸化しているし、売上に対する影響も実は限定されている。つまり、悪いことをしても余程のことでもなければ罰せられないし、悪いことをしなかったとしても売上は上がらない。


ちょっと分かり易い話題に絞るが、報道姿勢やコンテンツが公正になったからといって、例えば新聞の売り上げは増えない。


「朝日新聞が公正なコンテンツを載せるようになったとして、あなた朝日新聞買いますか?」というのは、分かり易い、しかも根本的な問いである。

これは別にアンケートをとった訳ではないが、多分、今買ってない人は皆買わない。

実際のところ、今、コンテンツの偏向や報道姿勢を理由に朝日新聞を買っていない人は、コンテンツや報道姿勢が公正になっても買いはしないだろう。今新聞をとっていない人は、要するに情報摂取量的に「間に合っている」人だから。また、「公正なコンテンツ」というのは、イコール「あんまり面白くないコンテンツ」でもあるから。

今、世界中で新聞の売上が下がりつつあるのは、新たなメディアの出現や、新聞というメディアの様式自体が持つ問題が原因であって、別段「マスコミの報道姿勢に対して国民が愛想をつかせたから」ではない(全く影響がない、と言うつもりはないが)。

例えば、「新聞社は公平な報道をしている振りをやめて、自分のオピニオンを鮮明にせよ」というのはよく言われる話である。じゃあ、各紙がオピニオンを明示しているアメリカの新聞の売上がどうなっているかというと、

アメリカの新聞広告の売上推移をグラフ化してみる(2012年3Qまで・四半期単位版)

ご覧の通りである。


これについては以前も似たようなことを書いた。

新聞社の赤字が勘違いを呼んでいる様な気がする


早い話、既存マスメディアの売り上げにおいて、「報道姿勢が公正かどうか」とか「コンテンツが公正かどうか」というのは、全然クリティカルな問題じゃないのである。収益構造であるとかメディアの多様化であるとか、報道姿勢云々の以前の話で、でかい問題が多過ぎる。そして、これを既存マスメディアの中の人も認識している。一方で、日本の新聞の場合、いわゆる押し紙のような諸制度のおかげで、売上が一気に下がるということもない。


つまるところ、私が考える「一部マスメディアの報道姿勢が改善されない理由」は、以下二点である。


・今のままの報道姿勢を維持したところで、法的に罰せられる(ないし、体制的なデメリットを受ける)可能性は極めて低いから。
・今のままの報道姿勢を改善したところで、(他の要因がデカ過ぎる為)売上が好転することは望めないから。


メリットが薄く、デメリットもない。そりゃあ改善されないわ、という話である。


じゃあどうすりゃいいの、という話は、大体二点くらいのポイントに絞られると思う。

・ルールや体制を整備し、倫理に基づかない報道にきちんと罰則が付与される体制を作る。
・収益構造を転換して、売上の好転を見込んだ上で、きちんと顧客(読者)の評価が売上に反映されるような体制を作る。


メリットを大きくするか、デメリットを大きくするか。まあ、言うは易しの典型のような話であって、これが実現する可能性はかなり薄いと思うけれど。薄過ぎる。その薄さは磯野波平の髪の毛のそれに匹敵する。


私個人の所感としては、既存の一部マスメディアの報道姿勢は今後も改善することはなく、それ以外の様々な問題にも対応出来ず、このままずるずると行くのではないかなーと思いはするのだが、まあ、余談。


今日考えたことはそれくらい。
posted by しんざき at 19:31 | Comment(7) | TrackBack(0) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
黒船
Posted by at 2013年02月13日 02:10
思考・思想が一本の流れに逆らえなくなることはヒトの思考が停止することと同義だと思います。

ちょっとわかりにくいたとえで申し訳ないのですが
こんなことを考える人がいます。『なぜ犯罪はなくならないのか』『なぜ人は人を殺すのか』と。確かに難しい問題だと思います。
しかし、そう考える殆どの人が『犯罪がなくなった後』『人が人を害しなくなった後』のことを考えていないのです。
現実的な話ではありませんが、仮に犯罪がなくなったとしたら対応すべき立場である警察が不用との指摘を受け弱体化します。
そして法に関係する人々は経験が不足したり、実績や経験のある人も年齢を重ねれば退職もします。これは長い目で見れば法の衰退です。

こういった事態を避けるためにも多少の問題は残しておいた方が全体のためになるのです。


話を戻します。朝日の報道姿勢に問題がある。これは大いに結構だと思います。行き過ぎなら法による処罰もあるでしょうし、朝日以外の新聞社が『あれは問題なんだ』『自社は問題視されないようにしよう』と考えるようになれば良いことだと思います。


タイトルは忘れましたがドラえもんの映画で、楽で快適な生活のために便利な機械に慣れすぎるとやがては自分の力だけでは動けなくなる、というものがありましたね。誰かがイートーマキマキとか言ってたと思います。

今ある問題を全て消化することが最善策とは限らない、ということです
Posted by クロマル at 2013年02月13日 04:12
> クロマル
それ余りにも主題と関係ないですし、そんな自明な事わざわざここに書く必要ないでしょう・・
Posted by s at 2013年02月13日 07:04
ここでは触れられていませんが、業界内に自浄能力が無いというのも問題かと。
Posted by at 2013年02月13日 14:47
>>sさん

関係は大いにありますよ。体制の改善を求めるのは無意味ですからね。
蟻のヒエラルキーの割合は忘れましたが要は怠ける蟻に働けと言うようなもの。

対応や処分を考えるならともかく相手に改善(改変・改悪を含む)を強制できるのなら日本国民には自由意思が認められないということにもつながってくる。

具体的に何がどう違うと指摘してもらえれば助かります
Posted by クロマル at 2013年02月14日 15:21
>>思考・思想が一本の流れに逆らえなくなることはヒトの思考が停止することと同義だと思います。

今回のテーマは「マスコミの考え方が利益を重視したバイアスに依り過ぎているのは何故か」という話であって、公平にすべきかどうかの議論ではありません。

それに「公平」という状態にしても思想や価値感が一意的に統一された世界と言い切るのも無理があります。それぞれの考える公平の意味があっていいはずです。

そういう意味で今ここでそれを話題にするは若干ズレていると思いますね。
Posted by タルタル at 2013年02月14日 16:53
つまり、「面白さが足りない」ということですね。
テレビだって、「一昔前はもっと無茶してて面白かった」と言われるぐらいですし。
そういう意味では東スポは安定だなぁ…
Posted by at 2013年02月27日 04:08
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