2005年05月05日

レトロゲーム万里を往く その29 〜続・ドルアーガの塔〜

ドルアーガ話の続き。前回よりも「知らなきゃ分からねえ」度を更に40%程増量してお届けしております。忸怩たる思いがあります。

ドルアーガの塔の話をする時、私にとってはどうしても避けて通れない書籍が三冊ある。

前回のエントリーではストーリーについてさらっとしか触れなかったが、ドルアーガの塔は、FCゲームの中ではおそらく初めて「ストーリー」というものをゲーム中で演出し切ったゲームである。勿論限定された容量であるが故の限界というものはあるのだが、「さらわれた姫君」形式にバビロン神話の味付けをされた物語は、オープニング後の画面表示からゲーム中の展開から、すべてにおいて背景として描かれ切っている。


ドルアーガの塔を「達成感」「操作感」の二軸で評価するとしたら、多分「達成感」寄りのゲームだろう。

勿論操作感が悪い訳ではない。現れては消えるウィザードやソーサラーを上手く仕留めた時の感覚、鍵や宝を取った時の小気味良い効果音、そういったものを求めてこのゲームにハマっていった人も少なくはなかったろうと思う。ウィングブーツ無しだと多少のストレスは溜まるが。

だが、やはりドルアーガの塔の骨子は、難関を越えて一つ一つの階をクリアしていく時の達成感だと思うのだ。前回でも触れたアイテムの出現方法の難易度もあいまって、あるステージを「クリアする」ということ自体が、ドルアーガにおいては常に大きな課題としてプレイヤーに提示されていた。その課題一つ一つをねじ伏せるときの気持ちよさこそが、このゲームの魔的な魅力の核であったのではなかろうか。

そしてこの時、達成感に加えられるスパイスとしてこのゲーム中に存在しているのがストーリーである。「エンディングの呪縛」でも触れたが、このゲーム以前のゲームには「目的」が存在していなかったものが少なくない。しかし、ドルアーガにおいてはストーリーという骨組みで補強された「目的」が確実に存在した。さらわれた恋人であるカイを助ける為、三本のクリスタルロッドを取り戻し、女神イシターの助けを得てドルアーガとの死闘を演じる。

この背景となるストーリーがあるからこそ、最後の最後、60階でカイを石から戻し、三本のクリスタルロッドを各通路に立てた時のファンファーレを聴いた時の感慨というものがああも深いものになるのである。ドルアーガ独特の「ZAP(やってはいけないことをした時のペナルティ)」というシステムもこのストーリーあってのものであるし、グラフィック的には埴輪みたいに見えるカイに血道を上げたゲームファンも出てこようと言うものだ。

まあともかく、上の様な背景とファミコン黎明期の新鮮さが相まって、ドルアーガ以上に達成感を味わわせてくれるゲームというものには、そうそう出会えるものではないと私は今でも思っている。


で、ここで話は最初に戻る。件の「三冊の書籍」の話。

実はドルアーガの塔のストーリーは、私にとってはゲーム中だけで完結していないのである。これは全く個人的な趣味と経験の問題であって、あんまり人に共感を求められる様なことではないが、同じ様な経験をしている人も中にはいるかも知れない。

ゲームブック、という奇妙なジャンルの書籍がある。今となっては、このジャンルの位置づけをどの様に行えばいいのか、私にはさっぱり分からない。多分十数年前にかなりの隆盛を誇り、数年でパッタリと見なくなったが、飽くまでレトロ文化の一つとしてここ最近多少リバイバルされているとも聞く。

形式としては、「サウンドノベルを本の形にしたもの」と説明するのが多分一番分かりやすいだろう(実際の成り立ちは逆だが)。読者は本の中に一人のキャラクターを設定して、本の中で様々な選択肢を選んでストーリーを読み進めていく。「西に行くなら○○ページへ、東へ行くなら××ページへ」みたいなアレである。ゲーム式の本というよりは、本の中にゲーム性を取り入れたもの、といった方がいいだろう。

このゲームブック自体に関する話は項を改める。私自身そんなに詳しい訳でもない。ともかく、一時期流行したこのゲームブックという文化は、多数の出版社から多くのタイトルが発売され、最後には丁度アタリショックの様な「供給過多」を起こして消えていった。あんまり面白くない、というか明らかにトンデモなゲームブックもあれば、なかには非常に質の高いゲームブックもあった。

ファミコンのゲームはこの「ゲームブック」形式と連携するのにかなり適していたと見え、当時結構な数のゲームタイトルが本屋にも名を連ねていた覚えがある。もっとも、私自身は「創玄推理文庫」のシリーズ以外はあんまり知らない。唯一双葉社から出ていたゲームブックシリーズをちょっと手にとったことがあるが、私の好みにはあまり合わなかった記憶しかない。

で、この「創玄」のゲームブックに、タイトルを提供していたのがナムコだった。例えばゼビウスであるとか、ワルキューレであるとか、ドラゴンバスターであるとか。その辺がメディアを越えて「文庫化」されていた訳だが、その中の一つ、ひときわ異彩を放っていたのが「悪魔に魅せられし者」「魔宮の勇者たち」「魔界の滅亡」という三冊一シリーズのタイトル群だった。


この三冊こそが、言わずと知れた「ドルアーガの塔」のゲームブックなのである。


さて、またまたエラいこと長くなった。ネタが多いのは良いのだが、私自身材料が多すぎてどう料理すればいいか見当がつかない。読みにくくてすいませんすいません。

次回の「万里を往く」は、ドルアーガネタの三冊を中心に、ゲームブックというこの不可思議な文化についての話にシフトしてみたいと思う。

posted by しんざき at 22:45 | Comment(7) | TrackBack(2) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
>新崎さんへ

初めまして。えっけんさんのむだづかいにっき♂の
トラックバックより飛んできました。

こちらのブログ最高です!
ゲームブックも当時大変ハマリました。
ファミコン版のドルアーガもベーマガのアーケード版
攻略記事を片手に、徹夜で60階クリアしました。

もうすぐ三十路のファミコン世代としてはここは宝物庫ですよ!

私のブログのブックマークにこちらを加えさせてもらいたいのですが、
宜しいでしょうか。

宜しくお願い致します。
それでは、失礼しました。
Posted by USHIZO at 2005年05月06日 16:44
>USHIZOさん
コメントありがとうございます。

お褒め頂き、恐縮です。微妙系文字だけゲームブログですが、良かったら今後ともごひいきください。

>ファミコン版のドルアーガもベーマガのアーケード版攻略記事を片手に、

ベーマガもなつかしいですねえ。私にとってのベーマガは、「ファミリーベーシック」のサンプルプログラムの記憶と共にあるんですが。

ブックマークは何の問題もないです。良かったらこちらからも加えさせてください。
Posted by しんざき at 2005年05月06日 22:57
初めてまして。
懐かしいタイトルを見つけたので、書込ませていただきます。

東京創元社の「ドルアーガの塔3部作」私も大好きでした!
ページがボロボロになるまで遊び倒したものです。
まだ先の話ですが、創土社から復刊もされるとの事です。

しかし正直、当時ほどの興奮を感じないのは年をとったからなのでしょうか・・。

ファミコン世代と言えば、ゲームブックブームをリアルタイムで経験した世代でもありますし、
次回のお話を楽しみにしています。
Posted by 宗為 at 2005年05月07日 02:13
>しんざきさんへ

こんにちは。

ありがとうございます。ブックマークに加えさせてもらいます。

私の方は…カレー三昧なので正直微妙なのですが(^^;ゞ
しんざきさんの判断で全然構いませんので。

ゲームの記事も書いてはいますが量も質も少ないですし。

あ、以前の記事の「あなたがあげるファミコンゲーム3つ」
は私は「Wizardry」「デジタルデビル物語女神転生」「ディープダンジョン」
ですかね。

この3つに共通する事…。
メガヒットまでいかなかった事?
あいや、3DダンジョンRPGですね!
小学校の時点からこんなんにはまっていたから
3D酔いはした事ありません。

この手のをやったことないうちのヨメはドラクエ8ですら
激しく3D酔いするので、ゲーム脳とか批判するだけじゃなくて
こういう功罪の「功」も取り上げるべきですよね。

それでは、失礼しました。

Posted by USHIZO at 2005年05月07日 11:22
>宗為さん
コメントありがとうございます。

>まだ先の話ですが、創土社から復刊もされるとの事です。
創土社の復刊には私もかなり注目してますですよ。展覧会の絵とか。ドルアーガ以外では、「ネバーランドのリンゴ」とかの林さんの作品がすごく好きだったので、それも期待してはいるのですが。

興奮度が少ないのは、単純に当時遊び尽くしたからではないかなーとも思いますw

>USHIZOさん
>私は「Wizardry」「デジタルデビル物語女神転生」「ディープダンジョン」

おお。私もWizadryっ子でしたよ。メガテンもなかなか好きでした、というか初代しかむしろやってません。クリシュナ様が最強だった頃。

ファミコンの3DRPGというのも、今とは全く違った趣がありましたよね。枡目がなんとも。
Posted by しんざき at 2005年05月07日 21:42
「悪魔に魅せられし者」「魔宮の勇者たち」「魔界の滅亡」は私もやりました。
話の中でトカゲの肉を食べたりしたのを覚えています。
私にとってドルアーガの搭は初めてのゲームでした。当時小学校三年生だった私は、初めてファミコンを買ってもらうときに、当時大人気だったスーパーマリオでは無く、ドルアーガを選んだところから何か人生の方向性が難しくなったようなきさえします。
なんと、クリアーするまで二年間が必要でした。
上下右左下上右左左右下上右左上のコマンド入力後ワンコントローラーの下とABボタンツーコントローラーの右とBボタンを同時押ししスタートすることで面セレクトができます。・・・というように今でも覚えているんですこれが・・、懐かしいです。
Posted by 星野 at 2005年11月16日 02:23
>星野さん
コメントありがとうございます。

>話の中でトカゲの肉を食べたりしたのを覚えています。

ミツユビオニトカゲですね。鈴木さんはホント、あーゆー小道具を設定するのが上手かった。

>上下右左下上右左左右下上右左上のコマンド入力後ワンコントローラーの下とABボタンツーコントローラーの右とBボタンを同時押ししスタートすることで面セレクトができます。
流石にコマンドまでは暗記してませんでした。すばらしい。
バグ面を遊ぶのが楽しかったですね。

Posted by しんざき at 2005年11月17日 10:01
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