2005年05月07日

JR西日本にまつわる報道と善悪二元論について


JR社員の不適切行動12件、延べ185人
尼崎脱線事故 ボウリング 疑問の社員「言いづらかった」


妙な違和感がある。


先に断っておくが、結論のない所感である。くだくだしかったら申し訳ない。

一口に違和感といっても色々ある。上の違和感というのは、理解と事実の齟齬という意味の違和感ではなく、どちらかというと単純に「なんだかイヤな感じー」という類のちょっと頭が悪目の違和感である。

違和感の要因自体は分かりきっている。一連の事件に関連して、JR西日本内の不祥事が次から次へとほじくり返されていく、まるで手品の様なこの報道だ。どっからリークされているのか知らないが、この手際の良さはある意味笑える。まるで報道陣の為に数々の不祥事が予め用意されていたかの様な陣容である。

JR西日本が完全に悪役にされているなー、と思う。そして、それはまあしょうがない、という思いもある。ここら辺りが問題と言えば問題で、メディアの姿勢は道義的には完全に正しいのだ。危機管理とか危機意識というお題目がある以上、「有事の際にふらふらとゴルフなどしているとは」とか、「事故の一報が入っているのにボーリングとは何事だ」といった言葉を前に、見る側は「ああ、ごもっとも」と頷く他は無い。反論の余地がない。この大事故を十字架に背負ったJR西日本に対する、ある種当然のペナルティであるのかも知れない。

かくして、この数々の報道に対して違和感を持つ側の言い分は、「ちょっとあら捜し報道をし過ぎではないか」とか、「JRを悪役にし過ぎではないか」といった、せいぜい「程度の問題」という反論でしかなくなっていく。道義問題を持ち出されれば口をつぐまざるを得ない内容である。一言で言えば弁護のしようがない。


ありとあらゆる報道が、JR西日本を「悪役」にする為の川に流れ込んでいる、という構図に見える人はいるだろうか。もう何十年も前から繰り返されている構図だ。大事件が起きると、メディアは可能な限りシンプルに悪役を作る。正義の味方も作る。事件報道を行うメディアは、善悪二元論の世界を創造する。

そして、善悪二元論はその分かりやすさ故に、極めて視聴者に受け入れられやすい。視聴率がとれる。メディアにとっては視聴率こそが正義だ。これもまあしょうがないといえばしょうがない。どうにかならんか、とも思うが。

少し話がわき道にそれるが、この前静岡で県警ヘリが墜落した事件があった。アレも、なんつーか、当初悪役を探す報道に見えた、とか言ったら私はパラノイアだろうか。確たる根拠はないのだが。ただ、一見して悪役が見つからなさそうな事件だったので、まあこの報道は長続きしないだろうな、とは思った。ついでに、もしこれに関連してなんらかの不祥事とか見つかったら、また事件そのものとは無関係に報道が盛り上がるんだろうな、とも思った。


少なくとも私個人に関する限り、この二十何年の間に学んできた数少ない経験の中で、「世の中が二元論でシンプルに割り切れることは基本的にあり得ない」という原則を後生大事に抱えている。違和感の要因はつまりこれだ。報道の流れが余りに道義道義としていると、私の中の物分りの悪い部分(青臭い部分といってしまってもいい)が顔をしかめるのである。世の中そんな単純でもないんではないか、と。

一言で言ってしまうと、どーにもこーにもメディアの報道が分かり易過ぎて気持ち悪い。誰かにドッキリでもかまされているのではないかという気すらしてくる。

この「善悪二元論」的報道が変わる日はその内くるんだろうか、と頭を傾ける。結論はまだ空から降って来ない。

posted by しんざき at 00:13 | Comment(13) | TrackBack(2) | 無謀的世評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
多分今のメディアは
今まで罪を犯した事の無いものは
この女に石をぶつけなさい って言われたら
全力で投げつづけるでしょうなあ
Posted by めあ2 at 2005年05月07日 00:35
こんにちは。

道義問題の前ではごもっとも。なのですが、
私は連日の報道で「世の中汚いことやってんのはゴマンといるのになぁ」
と思ってしまいました。
Posted by USHIZO at 2005年05月07日 11:10
きのう某BARのカウンターでこの話がでてね。
JRがどうとかということより、「マスコミのありかたにがっかりする」という人多数。
不祥事を暴いたからといって、「あなたがたが正義なわけじゃないのに」というシーンがいくつもあったからねえ。今は、「亡くなった人がどんなにいい人だったか(それがJRのせいで!)」という路線に変更のようだけど。
もっと遺族の人なり、地域の人なりに役にたつとか、報道としてどういうことを伝えていきたいのかとか、ちゃんと考えて仕事したほうがいいよね。
Posted by 頃 at 2005年05月07日 15:35
「事故列車に乗っていたJR西日本の若手職員が、上司の命令で乗客の救助をせずに出勤した。」って報道があったじゃないですか。
「救助を命じないような社風が良くない!」っていうことはもちろん分かるんです。
でも、「若手職員が遅刻することで、事故列車以外の運行が乱れる。すると他のお客様に迷惑をかけてしまう」っていう考えもあったと思うんですよね・・・。

詳しい状況について知らないので、何が正しい、とか全く言えませんが。

事故の犠牲者の方の悲しみが、少しでも和らぐことを祈るばかりです。
Posted by だむ at 2005年05月07日 17:40
>めあさん
笑いましたが、あんまり笑い事ごとでもないですね。聖書ですか。まあなんつーか、実際同じ様なことをやってるんですが。

>USHIZOさん
>「世の中汚いことやってんのはゴマンといるのになぁ」と思ってしまいました。
そうですね。それに関しては、私が気に入らないことは以下の二点にまとまります。

・汚いことをやっている件に関する取捨選択権がマスコミにしかないこと
・汚いことを報道した際の姿勢が二元化されていること

まあ、観る側が受け入れる限りしょうがないっちゃしょうがないんですが。
Posted by しんざき at 2005年05月07日 21:56
>頃さん
>もっと遺族の人なり、地域の人なりに役にたつとか、報道としてどういうことを伝えていきたいのかとか、ちゃんと考えて仕事したほうがいいよね。

おっしゃる通りでございます。ただ、今のところそーゆー「本来あるべき報道の仕事」では「お金を取れない」という、どーしようもないというか、ある種悲劇的な現実があったりします。

正直私も元マスコミっぽい仕事の関係者だったんで、その辺の空気がちょっと分かっちゃうんですよね。歯切れが悪い話なんですが。

>だむさん
>でも、「若手職員が遅刻することで、事故列車以外の運行が乱れる。すると他のお客様に迷惑をかけてしまう」っていう考えもあったと思うんですよね・・・。

そうですね。思うに、そーゆー色々な方向から考えた内容が、全く視聴者側には見えない報道しかされていないことが問題ではないかと。
現状、取り敢えずJRを悪者にする内容ならそれいけ、って感じですからね。ちょっと釈然としない。
Posted by しんざき at 2005年05月07日 22:03
ある民放のニュースで、事件から数日後に「新たに入手した事故の瞬間の車内映像」とやらを流していましたが、アレは嫌だったなぁ。
事故原因の調査結果や遺族に必要な情報を流すのならいいのですけど、数日後にそんな映像流して「何の役にたつ」んだよ?って。

「役に立つ」情報より、「ウケる」情報が流したいんだろうなと思ってます。私自身も出歯亀根性で報道を見ているのは否定しないですが、それにしてもあまりにもユーザーをナメて制作してないかい?と思います。俺たちそこまでバカじゃないぞって。

ニュース番組の視聴率が重視される理由も良くわからんです。伝達性の量だけが重視される情報でもないと思うのだけど。伝達の質を誇るニュース番組があってもいいはずでね。
「数字低くても気にしない。大事なのは名誉」ってスポンサーを探してくるべきだと思うんですけどね。

件の事故映像は、流れるやいなや、一緒に見ていた私のガールフレンドが無言でチャンネルをグイっと変更して見れなくしてしまいました。
不愉快過ぎて、文句も言いたくなかったみたい。まぁ、僕も同感でした。
Posted by さいとう7 at 2005年05月08日 09:40
向上心がない(あるいは無気力)

他人を蹴落とす(ストレスのはけ口)

他が下がったことで自分上がったような気分になる
といったところでしょうか。
安倍なつみさんの盗作問題とかも過剰に攻撃されていて不快に思いましたね。
ゲーム脳の件も同様の理由かもしれません。
殺すまで殴らなくていいじゃない。
殺すより活かす方がいいじゃない。
Posted by にゃあ at 2005年05月08日 23:13
一応、報道メディアの最底辺にいる人間ですけど
毎回大きな事件・事故を見ていても
悪い面ばかり流して良い所は切り捨ててるような気がしてますしね。

昔から言われている事ですけど情報を受け取る我々の方も
メディアに振り回されない様にすれば
多少は過剰反応もしない気も・・・
Posted by もとひろ at 2005年05月09日 06:31
>さいとう7さん
>ニュース番組の視聴率が重視される理由も良くわからんです。伝達性の量だけが重視される情報でもないと思うのだけど。伝達の質を誇るニュース番組があってもいいはずでね。

おっしゃる通りです、が、つまりは伝統というもんです。
報道体制も「アクセス数重視」なんですね。何を言おうが読んでもらって、観てもらってなんぼと。その現れの一つが視聴率っていう基準であって、スポンサー代金が視聴率の試算で大体決まるという体質がある以上、「ウケ重視」の体質は変わりにくいと思います。

で、そこの解決の糸口にネットがなってくれんかなーと期待はしているんですが、ネットはひじょーーにお金になりにくい媒体ですしね。厳しいでしょうか。
Posted by しんざき at 2005年05月09日 17:59
>にゃあさん
>他が下がったことで自分上がったような気分になる
といったところでしょうか。

どうなんでしょう。何で激しい報道をすると視聴率が上がるのか、というのは、つまりは荒れた方が野次馬をする分には面白いということで、その理由は良く分かりません。おっしゃる理由もあるかと思います。

個人的には、「「悪役」がやっつけられる時に感じるカタルシス」と同質のモンなのかなー、と思っています。

>もとひろさん
>昔から言われている事ですけど情報を受け取る我々の方もメディアに振り回されない様にすれば多少は過剰反応もしない気も・・・

そうですね。私はそもそも情報収集自体が今はネット主体で、テレビも新聞も観てないんですが全然困りません。

ただ、世の中ネットユーザーばっかじゃない訳で、放送メディアの存在ってのはやっぱりまだまだ大きいですね。
Posted by しんざき at 2005年05月09日 18:05
亡くなられた犠牲者を責めているわけではわりません。
近い将来、民営化が行きづまり正体が全て暴露された場合、当時、マスコミに煽られて国鉄職員を悪者にして民営化を支持したのは国民だった事になるかもしれない。そうなるとJR悪玉、犠牲者善玉論が破綻するかも。JRパッシングに走った人は頭を冷やして自分の事を考え直してほしい。もし内の家族が死んでいたらJRだけでなく民営化を強行した国やそれを煽ったマスコミ、それに騙されて黙認した自分の弱さを責めるだろう。
この文章に怒りや不快感、しらけを感じた人は自分達が被害者と加害者の両面を持っていることや自分らの未熟さに自覚がてきてないと思う。

Posted by   at 2008年10月05日 00:44
亡くなられた犠牲者を責めているわけではわりません。
近い将来、民営化が行きづまり正体が全て暴露された場合、当時、マスコミに煽られて国鉄職員を悪者にして民営化を支持したのは国民だった事になるかもしれない。そうなるとJR悪玉、犠牲者善玉論が破綻するかも。JRパッシングに走った人は頭を冷やして自分の事を考え直してほしい。もし内の家族が死んでいたらJRだけでなく民営化を強行した国やそれを煽ったマスコミ、それに騙されて黙認した自分の弱さを責めるだろう。
この文章に怒りや不快感、しらけを感じた人は自分達が被害者と加害者の両面を持っていることや自分らの未熟さに自覚がてきてないと思う。

Posted by も at 2008年10月05日 00:44
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ココフラッシュにマスコミ批評カテゴリーがついに登場。
Excerpt:  みなさんご協力ありがとうございました。10サイトを突破しついに「マスコミ批評」
Weblog: 雑談日記 <font size="3">(徒然なるままに、、。)</font>
Tracked: 2005-05-12 06:22

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