ブログブームってなんじゃ
最初コメント欄に書かせて頂こうと思ったのだが、こねくり回してる内に「これどー考えても人様のコメント欄に放り込んでいい長さじゃねえだろ」という内容になってしまったので、粛然と独自エントリ。この長文癖はどうにかするべきなんではないかとちょっと自分でも思う。
ブログを一過性のブームと考えている所は、とても冷静だと思うし、そのブームを終わらせたくないと言う気持ちは正直だと思う。
えっけんさんのおっしゃることは全体としてもっともだと思うのだが、何故だか、前提部分であるところの「ブログブーム」という言葉に妙なひっかかりを感じた。違和感というか疑念というか、何かがどーももやもやとしていて気持ちが悪い。取り敢えず、この違和感を整理をしてみることにする。
私の脳をちょっとひっかきまわしてみたところ、どうも下記の様な内容の違和感を感じている様だ。
・この「ブログブーム」というものは、そもそもホントーにブームなんだろうかという語義的な違和感
・ブームだとしたらなんか普通のブームと違うな、という内容的な違和感
順番に考えてみよう。
まず、ブログはメディアである。訳すと情報媒体である。テレビやラジオやウェブページや携帯電話と同じく、誰かが他の誰かに対して情報を伝達する為に用いるツールだ。
一方ブームというものは、一般的には「一時的な大流行、狂熱」という様な意味になると思う。何らかのトリガーによって一気にわーっと盛り上がり、ある時期を過ぎるとすとんと盛り下がる、というのが普通に言うところの「ブーム」だろう。この「盛り下がり」具合は様々で、まるっきり廃れて綺麗になくなってしまうこともあれば、ブームが落ち着いてしまった後も日常的に定着する場合もある。上で上げたテレビだのラジオだの携帯電話だのは、全てが後者の「日常的に定着する」道を辿った。今が携帯電話ブームだなどとは誰も言わないが、携帯電話は誰でももっている。
つまり、ブームの着陸先として理想的なのはこの後者の道であり、「誰でも普通に利用している」という道具としてブログが用いられる様になる、というのが最も望ましい訳だ。
さて。ここからが違和感の話。
まず最初に前提に戻ってみよう。私が上で書いた、「ブログは情報媒体である」という話。
情報媒体には当然のことながら二つの側面がある。受信と送信だ。ブログで言うと、「読む」と「書く」の二つに分類される訳で、もうちょっともって回った言い方をすると、ブログは「読む対象としてのブログ」「書く対象としてのブログ」の二つに分けられる、という言い方が出来るだろう。
さて、世の中でブログブームが起きているとか起きていたとかもうしぼんだとかまだしぼんでねえとか色々言われている。無論私は統計データなんぞ全くもっちゃあいないのだが、個人的な所感としては「ブログの数自体はまだまだ増え続けている」という認識をもっている。つまり、ブログを始めてみようという人はまだまだ増加傾向にある様な気がしており、その点でブームと言えばまだブームなのかな、とは思っていた。
で、えっけんさんのお言葉を引用してみる。
ところがこのブログのメリットを、実際に享受している人がどのくらいいるかというと、物凄く少ないような気がします。特に最近の新規開設者は、「ブログ始めたけれども、なかなかコメントがつかない」と思っている人が多いんじゃないかな。
ブログユーザーの多くは、自分のブログを見てもらう事には一生懸命だけど、他人のブログにはあまり関心が無いように思えます。
この辺だ。私も思うことなのだが、書く人が増えているのが事実だとして、読む人もそれに見合うペースで増えているかというと、どうもそう上手くは行っていない様に思えるのである。ブログの認知度自体は上がっている筈なのだが、読者数が書き手の増加に追いついていない。情報媒体としては実に実に微妙な状態である。メディアというのは「右から左に情報を回す」というのがその役目である筈なのに、全体としてそれが上手くいっていない。
ここまで書いて来てやっと分かった。つまりこういうことだ。
・しんざき、ブログブームという言葉を聞いて「読む対象としてのブログ」の方を意識する
・読まれる対象としてはそこまで盛り上がっていない、という話を読む
・あれ、それってホントに「ブログブーム」なんですか?という違和感
公開で脳内作業を行うな、という向きもあろうがまあ勘弁して頂きたい。要は、ブログの機能を「読む対象」「書く対象」という二つに分けた時、ブームが起きているとしたら「書く対象」としてのブログだけなんじゃねえの、というこの妙な構図が私に違和感をもたらしていた、ということになる。あーすっきりした。
こう考えると後ろの一つ、「ブームにしても妙なブームだな」の意味もわかる。つまり、ブログブームというものが本当に存在したとしたら、それは極めて「バランスの悪い」ブームだということが出来る。「書く」人は増え続けているのに、「読む」人の数がそれに追いついていない。あるいは、「読む」人の訪問先は一定しており供給が偏る。ブーム自体が書き手の供給過剰を起こしているという訳だ。
つまり、重要なのは「書く対象としてのブログブーム」と「読む対象としてのブログブーム」のバランスであって、これがいびつなままだと「日常的に定着」という方向でのブームの決着は難しいんじゃないかな、というのが私の所感である。
どーも、様々なブログの運営を見ていると、「書き手を増やす(ユーザーを増やす)」為のアピールは凄く凄く良く観るのだが、それ以外での「読み手を増やす」為のアピールというものを余り見かけない。あるいは、ブログのユーザーだけがブログの読み手として意識されており、それ以外の「ブログとかそもそもあんまり知らないよ」という人に対するアピールが少ない。ネットのユーザーはブロガーばかりではなく、yahoo!やMSNからしかネットを見ない人だってまだまだ山ほどいるのだ。この辺りに対する努力も必要なんではないかなーと思う。
---------------------------------------------------
(05/05/12 13:27 追記)
補足。
上で述べている様な「読む側のブーム」あるいは読者の総量増加を実現する為には、RSSリーダーの更なる普及がまず必要というか、むしろ絶対条件になるのではないかと思う。
私自身は
「FireFox + Sage」という構成で、多分50件くらいのブログを巡回しているが、「っていうかこれがないとブログの巡回とかいって普通にムリ」というレベルまで依存してしまっている。
RSSリーダーが標準的なツールになれば、読者が増えるばかりか「客を放さない為に毎日更新しなきゃ」とか「更新を知らせる為に無意味大量トラックバック」とかもなくなって、多分一石十三鳥くらいの効果はあると思うのだが、何で運営側はもっと積極的に普及を進めないのだろうか。単純に不思議だ。
実に見事な考察ですね。目からウロコでした。
確かに自分に対して考えると書くのにいっぱいいっぱいで
あまり読む事に時間を割いていない
(割いても定期的に巡回するところだけで新規開拓はあまり…)
という感じです。
あと、日記として自分の為だけに書いて使っている人が
多いのも書き手が偏る理由の一つだと思います。
それでは、失礼しました。
コメントありがとうございます。恐縮です。この内容をえっけんさんのコメント欄に乗せたらさすがにシバかれるだろうなーと思って自分とこ書きました。
>(割いても定期的に巡回するところだけで新規開拓はあまり…)
そうですね。新規に知らないブログに行く、という機会というか積極的な移動がけっこー少ないんじゃないかと思います。本来TBがその役目を担う筈なのに、あんまり有効に働いていないってこともあるんでしょうね。
>あと、日記として自分の為だけに書いて使っている人が多いのも書き手が偏る理由の一つだと思います。
うーん、どうなんでしょうか。純粋に「自分ひとりの日記だから誰もこなくてもいいや」と思ってる人って結構少ない気がするんですが。
それが、コメントを1日ごとに書けるような形式をブログって名前を付けてるだけで実質は変わって無いんじゃないかと思ってるんですが。
すこしまえに、ちゆ12歳が流行ったとき似たような形式のサイトがいっぱい出てきたような感じかもしれませんが。
>コメントを1日ごとに書けるような形式をブログって名前を付けてるだけで実質は変わって無いんじゃないかと思ってるんですが。
変わってないといいますか、多分日記サイトとは大分違うことが出来る潜在力ってものをブログはもっていると思うんですが、それが生かされてる事例が少ないってことはあると思います。うちだって人のこたあいえないですが。
ブログについての興味深いお話、とても参考になりました。ブログを始めるというと、まず自分が記事を書くことばかりに目が行きがちですけども、もっと読む対象としてブログを楽しみたいと思います。
記事を引用させていただいたのでTBさせて頂きました。
TBありがとうございます。
>ブログを始めるというと、まず自分が記事を書くことばかりに目が行きがちですけども、もっと読む対象としてブログを楽しみたいと思います。
そうですね、少なくとも私に関していうと、「そもそも読まないと書けない」ってことは結構あります。別に自分に興味がないことでも、なにか情報の入力がないと出力が出来ないと。ブロガーにとっての「読む」動機では、それが結構大きいんじゃないですかね。
あとの問題はブログやってない人にどうブログを読んでもらうか、でしょうか。
私はブログをやっておりません。
ニュースや書籍など、ある事象について「他の人はどう思ってるんだろう」
と思ったとき、2chよりも真面目に長文で考察している場所はないだろうかとブログに探しに来ます。
(それで見ているうちに他のエントリも気になってしまってこんな昔のエントリにコメる羽目になるのですが…)
そんな立場としては、ニュースに一行コメントだけのblogがちょっとうっとおしく思ったり。
(ニュースを見てblogへ辿り着いたら、blogがまたニュースを紹介している。なんという徒労)
特定のテーマを網羅したり、選択にセンスがあったりすれば良いのですが。
ですので、長文で(長さというより、中身のある話ということで)自分の意見をしっかり書いているblogを応援しております。
できたらニュースの記事から直で、そのニュースに関する話題を取り扱ってるblogへ飛べたら便利なんですけどね…。
長文失礼いたしました。
コメントありがとうございます。大変反応が遅れてすいませんすいません。
>(それで見ているうちに他のエントリも気になってしまってこんな昔のエントリにコメる羽目になるのですが…)
ブログ主としては、昔のエントリも読んで頂けているんだと思うと大変励みになります。
>(ニュースを見てblogへ辿り着いたら、blogがまたニュースを紹介している。なんという徒労)
んー、そうですね。ニュースサイト論というとまたちょっと考察が厄介そうですが、ニュースサイトが別のニュース紹介へリンクする、というのにはちょっと疑問を感じます。
また、何かの機会に書いてみます。
しんざきさんの考察から4年たってるので、状況は違うかもしれませんが。
「読むブログ」というのは、ある意味情報源として非常にありがたかったりします。
レビュー系であれば、一見含めてけっこう見ているし、その中で気に入ればブックマークしておく。
ただ、それ以上に多いのが「ソースまる写し」「アフィ目的のメーカーサイトまんま」なブログな気がしてます。
カメラが好きで、レンズのレビュー見たさに検索かけると、通販サイトとメーカーサイトのまる写し(&アフィリエイト)が相当数ひっかかってげんなりします。
それでも良質なレビューをする方はいらっしゃるので、こまめに情報収集するのですが。
ネットでの情報収集の面白さ、というのはニッチな情報の豊富さにあると思います。
(これはニッチであるものの豊富さであり、ニッチなとある対象の情報の豊富さという意味ではないつもりです)
そういう意味では個人ブログには期待してるし、いろいろな人が情報を公開してくれることを願ってやまないのですが。
コメントありがとうございます。いや、古い記事でも掘り起こして頂けるのは大変ありがたいです。
>ただ、それ以上に多いのが「ソースまる写し」「アフィ目的のメーカーサイトまんま」なブログな気がしてます。
多いですね。しかも、ブログサービスによっては結構そういうのを助長していたりとか。
ただ、玉石混淆はネットの宿命ですので、なんとか玉をより分けるしかないんだろうなあとか思っています。
究極的にネットは私に興味を示して欲しいと言うメディアなんではなかろうかと思いました。
もしも情報収集だけに重きを置くのであれば、
そもそもブログを作る必要がありませんし。