2013年06月12日

「被ダメ脱衣」を考えた人は天才だと思うんだ

タイトルを見て、脊髄反射で「お前は一体何を言っているんだ」という熱い思いで胸が一杯になった方も多かろうと思う。同感である。同感であるが、まあ聞いていただきたい。

ゲームにおける脱衣には二種類ある。つまり、「ご褒美としての脱衣」と「慰めとしての脱衣」である。獲得する脱衣と与えられる脱衣、あるいは達成することによって得られる脱衣と失敗することによって得られる脱衣、と言い換えてもよい。

前者は、要するに「勝つ・条件を達成すると脱衣シーンが見られる」という方向での脱衣。一部のパソコンゲームにルーツを持ち、脱衣麻雀を中核とした超強力な定番ジャンルを形作った、圧倒的な王道脱衣である。おそらく、ゲーセンでも最も集金力が高い力の一つだったのではないだろうか。

それに対する後者、「自分がダメージを受ける/敗北することによっても脱衣を見ることが出来る」というのが素晴らしい発明だったと私は思うのである。

被ダメ脱衣というものは、様々な脱衣麻雀(多くは、「仲間の女の子が脱ぐ」ないし「主人公が女の子」という設定で実現される)の他、一部のアクションゲーム(操作キャラクターが女の子である場合が多い)、一部の対戦格闘、パズルゲームなどでも観測できる。アクションゲームにおけるルーツは良く考えると魔界村になるのではないかという絶望的な可能性があるので取り敢えずおいておくが(魔界村を除くと、有名どころは黄金の城だろうか)、やはりある程度一般的になったのはパソコンゲームか脱衣麻雀からの流れなのだろうと思う。

ポイントは、「プレイヤーの動機付けをどうやって行うか」という話になる。

家庭用・業務用問わず、古今東西あらゆるゲームメーカーが、「どうやってプレイヤーに遊びたくなってもらうか」という命題を追求してきた。あるジャンルは爽快感で、あるジャンルは育成と集積の快感で、あるジャンルは他人との競争意識で、プレイヤーに「このゲームを遊びたい」と思わせようとしてきたのだ。「女の子の裸が見たい」というのは、そんな中でも最も基本的な欲求に近い強力な動機付けであって、多くの脱衣ゲーは「コインをいれて、ハードルを越えると裸が見られる」という、実にわかりやすい形でその欲求をプレイヤーの動機に変換していた。

ただ、この動機付けには、一つ大きな問題があった。つまり、「失敗に伴う失望」を昇華させることが出来なかったのだ。

手前味噌だが、以前私は、こんな記事を書いた。

「失望」のゲームデザイン

ゲームにおける「失敗」「失望」には、次につなげられるものと、そうでないものがある。失敗した時の悔しさを次へのモチベーションに繋げるよう誘導することは、どんなジャンルでも重要な話だ。

しかし、多くの脱衣ゲー、特に脱衣麻雀において、それは難しかった。一つの大きな理由は、動機が基本的欲求に根ざす単純なものであるが故に、向上心に転化しにくいから。脱衣麻雀に限っていえば、運の要素が強すぎて、技術向上の余地が小さいからということもあるだろう。開幕天和の理不尽さを恨む声こそあれ、「脱衣麻雀、もっともっと上手くなりたい」などという声を聞いたことがあるだろうか?

動機の強力さで下駄を履いていたとはいえ、「失敗時の納得感が少ない」というのは、多くの脱衣ゲーで共通の欠点であり続けたのではないだろうか。

それをカバーしたものこそ被ダメ脱衣である。

女の子の裸を見たいがためにゲームをプレイする。勝っても見られるが、負けても見られる。

「まあいいか」という納得感。これ程シンプルに、かつ強力に、失望感をフォローする手段が他にあるだろうか?いわゆる脱衣ゲーにおいて、「プレイヤーが負けても裸が見られる」というのは、まさしく革命的な発明だったのである。

この、「負けても裸が見られる」システムの正確なルーツにはどうも諸説があるようだが、最初に考えついた人は実際表彰されてもいいくらいだと思う(魔界村は除いて)

全然関係ないが、「やられアクション」の嚆矢は私の中では奇々怪界の小夜ちゃんということになっており、SFCの月夜草子では更に被ダメで巫女服がぼろぼろになるという脱衣要素まで含まれていておいおいナツメなかなかやるじゃねえか的な凄い感じなので、興味がある方は今からでもソフトを買うといいと思う。

もう一点なんにも関係ないことだが、近年ソーシャルゲームの課金形式について様々な問題が指摘されるようになって久しいが、一昔前の脱衣麻雀も相当悪辣な課金をやってたと言ってもいいんじゃねえか、という疑問を一応提示しておく。

ちなみに、対戦格闘における被ダメ脱衣は多分また色々事情が別だと思うので改めて書く。

今日はこの辺で。
posted by しんざき at 20:36 | Comment(10) | TrackBack(1) | 雑文 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
奥様はこのブログを見てらっしゃるのでしょうか
そんなことが気になってしまったのです
Posted by at 2013年06月12日 23:31
”「やられアクション」の嚆矢”に忍者ウォリアーズのクノイチは含まれませんか?
Posted by さるたに at 2013年06月13日 02:39
ゲーム開始早々に地和をあがられポルナレフ状態になったことがある>ゲーセンマージャン
Posted by at 2013年06月13日 08:05
負けて納得なんてされたら連コしてもらえなくなるじゃないですか
Posted by クロマル at 2013年06月13日 08:12
対COMではなく対人での被ダメ脱衣麻雀では、負けても欲求が満たされるという単純なものではなく、
パートナーが脱がされるという寝取られ感は半端なかったです。
まぁそれも大別すれば「欲求が満たされる」に分類されるのかもしれませんが。
Posted by at 2013年06月13日 13:47
「脱げば脱ぐほど強くなる!」と言う「バトルスキンパニック」も思い出してあげて下さい……。
Posted by 743 at 2013年06月15日 13:18
脱衣麻雀以外のあれの起源って何なんだろう…
個人的にはワンダーモモだと思ってる
ダメージ受ける→こけてパンチラ
Posted by at 2013年07月26日 09:25
脱衣マージャンで天和上がられたことありました
俺の50円返せ!と思った予備校横のゲーセン
Posted by at 2013年08月02日 14:07
リョナ好きだと負けた時の女の子の声が好きでわざと負けるとかもあるよん。
Posted by at 2013年08月15日 15:08
麻雀放浪記 掟 とかは勝っても負けてもなゲームだったよ
Posted by at 2013年10月04日 15:47
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