世評系。靖国参拝がどうとかこうとかという話について。なにやら長文になってしまった。興味がない方はスルーを推奨します。★首相、靖国神社参拝「問題なし」と強調 衆院予算委
まあ、まだまだ「騒ぎ損」の問題ではあるのだが。っつーか例によって朝日。やっぱり朝日。既に清々しいレベルに達している。
ただ、靖国参拝のメリット・デメリットに関してはそろそろ再検討するべき時期になっているんではないかと思う。
予告しておきますが、今回なにやら長いんで、先に所感だけ書きます。
・以前までは単なる騒ぎ損の政争ツールだったけど、そろそろ風向きが変わってきた様だ。ちなみに、イデオロギーの話題はかなり前から主要性を失っている。
・現在は国内・国外向けの煽りが効力を失ってきているんで、「靖国問題」が取り沙汰されて日本が困ることってなくなりつつある様に思う。ということは、他国がわざわざ継続させてくれているこちら有利のゲームから降りる必要もないので、今まで通り当面は粛々と参拝継続させていればいいのではないかと。相手がそれ相応の対価を出せばやめてやってもいい、という段階にある気がする。
以下チラシの裏。
まず第一に、靖国問題の正当性に関する議論については、多分もうあんまり意味がない。A級戦犯の存在がどうとか、この問題に火をつけたのが国内の某マスコミであったこととか、まあ批判されるべきことは批判されるべきだろうとは思うが、ことは交渉技術の問題である。
日本からしてみれば、慰霊には正当性があるという議論に最終的に落ち着くだろうし、その根拠も出せるだろう。で、靖国参拝を非難する一部の国にとっては、そんな正当性を1ダース並べられたって知ったこっちゃないというか、いずれにせよ俎上に上げることはないのである。当たり前といえば当たり前のことで、自分が認めたくない事実に関する不利な根拠をいちいち拾い上げる訳がない。華麗にスルーされて終わりである。国内の一部マスコミにも同じことが言える。
ぶっちゃけた話、中国や朝日が靖国問題に関して「小泉首相の参拝は正しい」と言うことは何がどう転んでもあり得ない。多分今後20年くらいはムリだろう。
では、今まで「靖国の正当性」について議論することにはどんな意味があったかというと、多分国内向けの調整である。
靖国問題は、政治的には以下の様な役割を持つツールだった筈だ。
国内:国内世論の分断と、それを起こすマスコミの相対的影響力増加
国外:日本に対する影響力の保持と、それによる国内のガス抜き
後者はまあ見たまんまとして、前者はなにか。要はマスコミが「靖国問題!靖国問題!」と騒ぎ立てることによって生まれるありとあらゆる副産物である。「公的参拝・私的参拝」などという珍妙な言葉が生まれたのもアレだし、「靖国問題についてどう思いますか」などという不可思議な四択アンケートが施行されるのもソレだ。
遍くマスコミは、主義の別なく「影響力」を向上させることを狙っている。例外は無い。自分が報道した内容は話題になればなるほど良いし、話題は多ければ多い程都合が良い。マスコミの影響力の高さはマスコミの利益にも直結する。正当な企業努力でもある訳だ。
そして、国内の一部マスコミは、「靖国問題」を一つの大きなカテゴリーにすることに成功した。煽れば煽るだけ視聴率がとれ、世論が動く問題だったのだから、これは煽らないと損だ、という結論に落ち着くのは当然である。煽り方によっては政治的な影響力を発揮することすら可能だった。かくして靖国参拝狂騒曲が始まる。
と、ここまでが2、3年前までの流れだ。国内的にはマスコミの飯の種だし、国際的には日本批判の道具だった。靖国「問題」という言葉からして既にアレで、この参拝は問題になりうるのだよ、という話を継続させること自体が一部勢力の狙いではなかったかと思う。
一言で言ってしまうと、今までの「靖国問題」は、イデオロギーや宗教の問題ではなく、どちらかというと単なるツール、マスコミと一部近隣国にとってのお手軽な武器でしかなかった。日本にとっては騒いでもなんもいいことはない問題だったのである。
で。じゃあ今はどうなん、という話に戻る。
まずは国内向けの話から。もうあまりに長くなったので結論から先に言ってしまうと、こと国内に限った話においては、「騒ぎ損」という要素はかなり薄くなっているのではないかと思う。ここにさっきの「正当性の議論」も関係する訳だが、つまり「これって騒ぐことなん?」という意識が、そろそろ漂い始めている様な感がある。例えば朝日とか読売の世論調査の結果を見比べてみるとなかなか面白い。
では国外はどうか。お隣の大きな国の話をすると、まず大きな国の国内問題にとってみれば、靖国参拝が続いていいことは一つもない。
以前から言っていることだが、大きな国としては日本との関係が冷えると困る訳である。単純な理由から複雑な理由まであると思うが、対日貿易が黒字だから、という単純な事実一つとっても分かりやすい。財務省の貿易統計のページで調べるとすぐ分かるが、確か2004年度で20億くらいの黒字の筈である。
で、追い討ちというべきものに、この前のアジア・アフリカ首脳会議での首相演説がある。こともあろうに日本は、大きな国相手ではなくアジア全体に対して「謝罪」というアリバイを作ってしまったのである。大きな国がアジア全体を自分の味方に引き込む材料としての「歴史問題」「靖国問題」は、あれで明らかに攻撃力を劣化させてしまった。つまり、「日本政府は反省していない、靖国も行ってるし」とがなりたてても、「でもこの前皆に謝ってたじゃん」という話になる。もはや靖国問題は、外交の武器としての地位を失墜したと言ってしまってもいい。
つまり大きな国にとっては、武器としてはショートソードどころかダガー程度の攻撃力に成り下がったこの参拝問題は、国内の反日層は煽るだけ煽る厄介きわまる問題になってしまった、と私には見えるのだが、どんなもんだろう。
以上で話は最初の所感に戻る。あー長かった。
既出だったらどうかご勘弁ください。
ちなみに、靖国参拝に関する時系列は、以下のページが客観的にまとめてくださっていて興味深い。
戦後靖国問題の歩み
ウィキペディア
「賛成とか反対とか抜きにして、客観的に何があったのよ?」という靖国関連ページは、やはり少ない様だ。国際問題が絡むと話はつくづくややこしい。いきおい感情的にならない様気をつけないといかんだろう。
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(追記 05/05/18 17:54)
小泉首相批判を報じず 中国各紙
わはは、これはまた。火消しにかかったかな。
小泉首相って人も、まあ支持層にも非支持層にも色々と意見はあるだろうが、外交に関してはつくづく喧嘩上手だと思う。この手の戦略がとれる人っていうのは今までの首相にはなかなかいなかったんではないか。
2005年05月18日

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首相靖国参拝について愚痴をだらだらと・・・
Excerpt: 小泉総理靖国神社参拝・・・今日は朝からニュース系番組はそればっかりだった。マスコミによるとアジア諸国の外交問題に発展するらしい。→そんなに大げさな問題なの?ただ国家のために死んでいった人たちのために、..
Weblog: DI★ction★ARY
Tracked: 2005-10-20 19:08
なかなか納得した。
個人的には、コレを国民自我の喚起に使おうとする産経系より、正義の味方ぶる朝日系のほうが好みではあります。
っつーのは、60年経ってもケンカの元にするほどの価値は無いと思うんで、もう引き下がっちゃいましょうよ的なテンションなのです。
そもそも客観というか、事実を追うってことは非常に難しいかと思う。
日本の場合、軍部と国民感情を明確に分けられないし。
「死んだら靖国で会おう」って言葉が、果たして被征服者にどう聞こえるのか?といったら、そこに事実はあまり関係ないと思うしね。
事実が事実たる力をもてない以上、政治的要因は、きっと次に大きな戦争でも巻き込まれない限り完全にはなくならないんじゃないでしょーか。
>国内マスコミ向けの飯のタネって考えは面白いねぇ。
>なかなか納得した。
飯のタネっつーか、靖国問題をネタにして出世した記者さんとかライターさんとかってすげえ多いのよ。マスコミ限定の雇用問題っつーか、でかい政治問題が一つあれば一年飯が食える世界だからねえ。国がどうとか実はあんまり気にしてない人の方が多いんじゃねえかと思う。
>コレを国民自我の喚起に使おうとする産経系より、正義の味方ぶる朝日系のほうが好みではあります。
産経と朝日って凄い似ているとゆーか、テンション的には線対称の兄弟の様な気がする。問題は、読む側がそれぞれのスタンスを分かって読んでるかどうかですな。
>事実が事実たる力をもてない以上、政治的要因は、きっと次に大きな戦争でも巻き込まれない限り完全にはなくならないんじゃないでしょーか。
というか、外交とか国同士の問題が絡むと「事実」よりも「真実」の方がずーっと力を持つ様になってしまうということで。で、真実は国ごとに違うと。厄介な話。