今更感あふれる事案だが、「今更」で片づけていてはいけないような気もするので。
言うまでもなく、Webにおいて、「記事のタイトル」の重要性は物凄く高い。「ブログに人を呼ぶコツ」のかなりの部分を、タイトル付けの話が占めるくらいだ。
で、その重要性が悪い方向に利用されている例も枚挙に暇がないわけだが、直近の例を一つ挙げてみる。
【報道しない自由】京大教授「朝日と毎日の報道番組は、もはやただの思想誘導」
勿論、このタイトルは純然たる煽りタイトルであって、元ソースはおろか引用内容ですら、佐伯教授は朝日や毎日の話を出していない。「思想誘導」という言葉すら使っていない。「世論を誘導する」という言葉自体は使っているが、少なくとも報道局を限定した批判は一切ソースに含まれていないのであって、このスレタイは端的に言って「歪曲」だと言って差し支えないだろう(元記事自体ちょっと見方が一面的過ぎる気はするが、それは一旦置いておく)
ちなみに、元の2ちゃんねるのスレタイは、「京大教授「朝日と毎日の報道姿勢がタガが外れキチガイじみてきてる 報道番組はもはやただの思想誘導」」の様だ。これ自体ひどいもんだが、それに対して、文中から「報道しない自由」をいう言葉をくっつけて編集したのが冒頭まとめサイトのタイトルである。つまりタイトルの編集自体は行われている訳で、歪曲意図を全く修正していない点で、コピペサイト管理者も同罪とみる。
いや、確かに「今更」なのだ。2ちゃんねるや、そのソースを流用するコピペサイトのアレさは今更いちいち言う程の話ではないのかも知れないが、いみじくも
これまでマスメディアは一応、公平・中立という建前の旗印だけは降ろさずに来たが、最近その仮面もかなぐり捨てて、それぞれ思い思いの方向に突っ走り、タガが外れた印象がある。「議論を呼びそうだ」「問題となりそうだ」という表現を加えて世論を誘導することも簡単だ。そういった誘惑を報道人としての使命感と矜持(きょうじ)で自制してもらいたいのだが、自制より報道各社の政治方針に沿う事の方が(出世のためには?)重要と見える。という文章に対し、上記のようなタイトルをつけていることは皮肉という他ない。スレタイを適当に編集して(狭い範囲の)世論を誘導することは簡単だ。そういった誘惑をWeb住民としての使命感と矜持で自制してもらいたいのだが、自制よりアクセス数やアフィリエイトの方が重要と見える。
マスメディア批判はそれはそれで必要であるかも知れないが、その批判が、大抵の場合そっくりそのままコピペサイト界隈に当てはまる状況には、正直嘆息を禁じ得ない。
ちなみに、この件とは直接関係ないが、同様に「煽りタイトル」のひどい例としてこんなものもあった。
痛いニュース:【画像】 「同人マーク」が決定 このマークがない作品の二次創作は販売不可に?
勿論このスレタイは、記事の内容や同人マークの精神とはほぼ真逆のものであり、赤松先生が提唱しているこの同人マークとは、著作者が「同人可」という自分の意思を明示する為のもので、新たな強制力を発生させるようなものでは全くない。スレタイもひどいもんだが、脊髄反射で「利権」がどうとか「天下り」がどうとか言っている人々もひどいもんである。
繰り返すが、既存マスメディアに対する批判的な指摘は、必要に応じてしていくべきであり、それを否定するつもりはない。歪曲報道が行われたとすれば、それについて指摘することは重要だ。
ただ、既存マスメディアに対する批判を、Webに軸足を置くものが行うのであれば、それは既存マスメディアとはっきり一線を画したものでないと意味がない。「歪曲報道」を批判する人間が、その口で情報の歪曲を助長するというのは一体何のギャグなのだろうか。Webに軸足を置いた人間が、Webメディアの信頼性をわざわざ下げようとするのはコントの一種か。
結局のところ、情報を受け取る側としては、こまめに元ソースを確認しつつ、「そこに歪曲はないのか?」という疑問を持ち続ける他なく、既存マスメディアからの情報収集に気を使うのと同等以上に、Webのメディアから情報を得る時も気をつけないといけない、という他ない(それについては、当ブログも例外ではない)。脊髄反射は敵である。
こういうのを「今更だし」でいつもいつも片付けてしまうと、問題が埋もれてしまって色々よくない影響が出てしまったり、「マスコミはひどい、Webにこそ真実が」と信じ込んじゃうような人が増えてしまうかも知れないと思ったので、若干ながらカウンターを書いておきたくなった。時には釣られる必要もあると信じる。
今日考えたことはそれくらい。
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ただ2ちゃんは無記名なおかげでこういう部分を批判しようとしても全く届かないんですよね
もう自分はまとめブログとか見るのやめました これが唯一効果があると思ったので
でも1年前に、2ちゃんねるが悪質なまとめサイトへの転載禁止を行ってましたね。
まとめサイトへの批判も含め、ネット上にも情報処理への規範が浸透してきたんじゃないかと思います。ガイドライン等の形で規範が共有されればいいんですけど。。
釣られないための制度構築は進むのかと思いつつ、まとめサイトを見る日々です。
絶句
ただ「誰が悪い」というよりかは「どうしてこうなった」という切り口で解釈したほうが建設的だと思います。
マスコミ批判はまんま「誰が悪い」論を軸に展開されていて、悪の組織の悪の報道人が悪意を持って民衆に害を与えている。そういう世界観です。
しかしネットにもここまで「歪曲」がはびこるとなればそうでは無く、視聴率、PV、すなわち民衆から人気を集める競争原理が歪曲を生み出すと解釈したほうが妥当なのではないでしょうか。
この件でマスコミ批判と同じ手法で批判を試みる人もいます。すなわち悪のまとめサイト管理人と悪のスレ立て人が悪い事をしている、と。
そうして一企業一個人一団体を排斥しようと努めても競争原理が歪曲を生み出す構造を放置していれば何の解決にもならないし、またそうやって批判する人も競争原理に呑まれればその中から歪曲する人は必ず出てくるでしょう。
アレはメディアじゃありません。単なるグチり場、タレ込み場。
あそこは単なる匿名掲示板。昔っから信憑性なんかありません。何の推敲も検証もなく、その場の思いつきをサラッと載せられる場であります。ツイッターも類似の性質を持ちます。
推敲に推敲を重ねて、デスクに加えて校正担当まで専門職として存在する、立派な立派な大新聞社・大テレビ局とは、その品質・体制ともに訳が違います。
メディアとして、同じ土俵で語ることすらおこがましいわけであります。
そもそも2chは「端からウソを振りまいている」「すべてはネタである」ということを前提にした掲示板なんですから(だからこそ言いたい放題が許される)
あそこの情報は、信憑性を気にするのではなく、ネタを楽しむところです。
ネットにも、日経や東洋経済やら、/.とか@ITやらサイゾーとかサーチナみたいな、専任の体制を敷いた「メディア」はネット上にもあります。
素人の一般人が気軽にグチってる「ソーシャルネットワーク」と
玄人の専任の記者・編集者や校正を置いてる「ウェブメディア」
は、きちんと区別していただきたい。
そして、「マスメディア」と対抗すべきなのは「ウェブメディア」なのであって
素人軍団の「ソーシャルネットワーク」など門外漢に過ぎないのであるから、叩くものでもないと思いますね。
社会に於いて、ガス抜き機能は絶対必要です。
そういう捏造が2ちゃんは便所の落書きだネットを信じる方が悪いと当たり前のようにまかり通ってるのを批判してるわけで
「2chは「端からウソを振りまいている」「すべてはネタである」ということを前提にした掲示板なんです」。
そんな前提初めて聞きました。
多分デマでスレ立てしたら真っ先に「デマ」だってレスが付くんじゃないですか。匿名掲示板だからデマやステマはたくさんあると思いますが、そういうものが求められてるわけではないですよ。
「日経や東洋経済やら、/.とか@ITやらサイゾーとかサーチナみたいな」。
日経や東洋経済やサイゾーは紙メディアがネットメディアも運営してる感じで、上げるとしたらGIGAZINEみたいなのだけど、GIGAZINEって海外サイトをコピペしてるだけですからね。
「「マスメディア」と対抗すべきなのは「ウェブメディア」」。
ウェブメディアも大勢を相手として一方向的ならマスメディアと言えるのではないでしょうか。必ずしも対立する単語ではないです。
サイゾーがまともなメディアに見える人に何を言っても無駄だと思いますが。