2013年12月04日
レトロゲーム万里を往く その120 サンサーラ・ナーガ2
ファミコンオリジナルのRPGを三作、完全に自分の好みで選ぶとする。
一本目にはメタルマックスを選ぶ。これに議論の余地は全くなく、異論・反論の入り込む隙もない。どうしようもないことも世の中にはある。
二本目は、数秒の思考時間の後、ミネルバトンサーガを選ぶ。これについても、私の中での立ち位置というのはほぼ固まっているので、結果的には余り紛れがないだろう。
三本目で、私は多分、しばし考え込むだろう。最初にラグランジュポイントを手に取るか?だが、その下に転がっているマザーやじゅうべえくえすとを放置することも出来ない。あるいはドラクエIIかIIIか?FF3だって大本命といっていい。桃太郎伝説?あるな、大いにある。しかし、ヘラクレスの栄光やがんばれゴエモン外伝を考慮外にしていいのか?
大体において、何かを選ぶには「3」という数字は少なすぎる。本来挙がるべきタイトルもまだまだ山ほど漏れているだろうし、完全なアクションRPG、移植ものRPGまで入れると更に訳が分からないことになるだろう。この辺入れると取り敢えずWizardryとゼルダとイースが物凄い勢いで上位に踊り込んでくるし。
ただ、最初に書いた通り、「客観的に考えて面白いかどうか」ではなく、本当に単純に「自分の好み」で選ぶとすると、私はなんだかんだで「サンサーラ・ナーガ」を選ぶと思う。
サンサーラ・ナーガは、1990年3月、ビクター音楽産業から発売された、一言で言えば「独特なRPG」だ。万人受けするゲームでは決してなく、アラも多ければ情報量が少なくって不親切でもあったが、私は「主人公ではなく竜を育てる」というそのコンセプトと独特なシステム、そして苦労の末に辿っていったシナリオと世界観に魅せられた。
とはいえ、実は今回取り上げるタイトルは、「サンサーラ・ナーガ」それ自体ではない。その「独特な味わい」を見事に継承した、SFC時代の「2代目サンサーラ・ナーガ」の話である。
それは、竜と、人と、竜使いと、立ち食い蕎麦屋の物語。
サンサーラ・ナーガ2。RPG。1994年、SFCにてビクターエンタテインメントより発売。前作サンサーラ・ナーガと同じく、監修・シナリオを押井守氏・伊藤和則氏が、音楽を川井憲次氏が、キャラクターデザインを桜玉吉氏が担当という、ゲーム畑とはかなり毛色の違ったスタッフの豪華さで話題を博した。まるで映画の予告のようなPVアニメがつけられ、特典として配布されるなど、様々な点で「ゲーム離れ」した展開をされたことが記憶に新しい。後、ゲームボーイアドバンスで、1と2がカップリングされた「サンサーラナーガ1×2」が発売されている。
まずは参照URLを挙げておく。
ゲーム自体については、例によってWikipediaにサマリーされている。あまり情報量がないが。
Wikipedia:サンサーラ・ナーガ2
こちらの攻略ページでは、フローチャートなども参照することが出来る。
サンサーラ・ナーガ2
では、ゲームの話をしよう。
○徹底的にとんがった初代「1」と、多少丸くなった二代目「2」。
サンサーラ・ナーガとはどんなゲームか?一言で言うと、「竜を育てるゲーム」である。そして、もう一言付け加えるなら、「決して万人受けはしないゲーム」ともいえるだろう。
サンサーラ・ナーガ1及び2において、主人公は「竜使い」であり、お供の竜と共に冒険をすることになる。プレイヤーは、敵を倒し、時には「獲物」にしてうっぱらうことでお金を稼ぎ、時には「エサ」としてお供の竜に与えることで竜を育てる。
特筆すべきは、「主人公は、基本的にはステータスが成長しない」ということだろう(2では、階層が進むごとに一部のステータスのみは上がったりするが、レベルという概念はない)。人間は、武器や装備を整えなければ、そう簡単に強くならない。しかし、竜は食べれば食べる程もりもり強くなる。
戦闘バランス的にも、多くの場合において主戦力はあくまで「竜」であって、人間である主人公は基本サブ戦力、後半においてはお荷物である。
竜の為に全てがあり、竜を強くするために体を張る。この辺り、「戦車を強化する為に全てをつぎ込むゲーム」であるメタルマックスと通じるものがある。
その結果、1だろうが2だろうが、プレイヤーは「竜を育てる父親的ポジション」として、様々な苦労や愛情を背負い込んでいくことになる訳である。
子育てないし「竜育て」の要素はこれまたなかなか深くなっており、例えば多少情操教育をしてあげないと戦闘中言うことを聞かなくなったり、食べさせる物によって能力が変わってきたり、とにかく色々工夫がいる。特に1では、この辺の苦労が直接的な「竜に対する愛着」としてプレイヤーに浸透していた、と思う。
ちなみに、1では終始一貫してパートナーである竜は一匹だけだったが、2では重要なポジションを担う「白竜」の他、赤竜、緑竜、蒼竜の三匹の中から二匹、合計三匹がプレイヤーのパーティーに加わることになり、戦闘バランスは1よりも多少丸くなっている感はある。竜を育てる過程にしても、いちいち「獲物」を厳選しなくてはいけなかった1に比べれば、2は若干丸くなってはいる。
これら以外にも、サンサーラ・ナーガ1が徹底的にとんがっていた部分というのは多々あって、
・序盤でもちょっとフィールドを外れると激強い敵と遭遇していた
・誰とでも戦闘することが出来た
・メーザーほうという最強の武器が中盤で店売り
・ゲーム開始直後、殆どの地域に歩いていくことが可能
などなど様々、普通のRPGではなかなか見られない要素てんこもりであった。そこから比べると、2はかなりの部分「遊びやすく」なったとは言えるだろう。全ての装備に耐久度がついて壊れるようになっていたりなど、却ってキツくなっている点もなくはないが。
○その独特過ぎる「味」と、突拍子もない展開。
ただ「竜を育てる」だけでは、それはサンサーラ・ナーガではない。我々はそこに、「独特過ぎる世界観」というエッセンスを加えなくてはならない。
ヒンズー教の世界観をベースに、20%の見た目上のかわいらしさと、10%の見た目上の毒と、25%の理不尽さと、15%の末世感と、10%のすべり気味のギャグと、15%のシリアスさと、5%の立ち食い蕎麦屋を投入すると、そこにサンサーラ・ナーガ2の世界観が出来上がる。
ちょっと箇条書きで、その特徴を書いていってみよう。
・舞台は、8階層に分かれた世界であるカーラチャクラ。次の階層に進むと、二度と元の階層には戻れない
・割と悲壮感のある舞台設定である割に、最終ゾーンまで含めて計64箇所の立ち食いそば屋「はらたま」があり、しかも割と重要な情報を仕入れることが出来る
・全体として、主人公の姉、ないし恋人のような立場である「アムリタ」を追うことを主軸として話が進む
・しかし、完全シリアスなキャラクターはほぼアムリタ一人であり、あとは主人公の師匠であるアル・シンハを始め、玉吉先生画のキャラクターが割りと突拍子のないノリで話を推し進める
・男主人公は完全に「おまえ」であり女主人公は完全に「べるの」(注:「しあわせのかたち」参照)
・女主人公かわいい
・悪徳商人に話しかけると問答無用でガラクタを押し売りされる
・ところが、ガラクタは悪徳商人に売りつけられた値段より高く売れる
・子竜の登録を行う役所は、まさにお役所仕事という他ないたらい回し具合
・「空中庭園」では、ハーレムのような幻想境のような、訳の分からない展開がプレイヤーの眼前で繰り広げられる
・何の前触れもなく、ショップの店主が主人公と立場を交代し、主人公が店番をするハメになったりする
・しかし、空中庭園のBGMはゲーム中屈指、問答無用の名曲
・というか、BGMは全体的に問答無用の名曲
・「言葉を話せる竜」である、主人公のパートナーである白竜が、全編を通して主人公のパートナーとなる
・ただ、白竜は割と脱力ノリで話をするのが常であり、敵と戦う時の共通メッセージの関係上、アムリタ相手に「はっきり言ってザコです」とか言う
・けど、最後の最後、「あなたに、かんしゃします。」は泣ける
・町民が貧乏生活とか財テク失敗についてとか良く分からない愚痴を延々プレイヤーに垂れ流す
・しかし、全体を通して、上の層に進めば進む程竜使いギルドの影響力が弱まり、竜使いの立場が弱くなるなど、全体を通してみればかなり考えられた構成をしている
・で、結局ばらもんうみぼうずってなんなん?
・立ち食いそば屋「はらたま」のメニューがやたら凝っている
・公式ガイドブックの5分の1程のページを、写真つきの「はらたま」蕎麦メニューが占めている
・先の層に進んで往くにしたがって、段々と衝撃の事実が明らかになっていく
・ただ、どんな重たい話をした後でも、「はらたま」の店主は律儀にスタンプカードにスタンプを押す
・恐怖感と悲哀が完全に融合した最終戦
・ただ、どんなにシリアスな展開になっても行く先々に立ち食い蕎麦屋「はらたま」があり、主人公は金粉そばを食べると喜ぶ
なんというべきか。私の言語能力は、どうも「サンサーラ・ナーガ」の世界を描写するには貧弱過ぎるようだ。
端的に言って、RPGとしてみれば基本的に展開が理不尽であり、プレイヤー置いてけぼりな展開になることも一再ではないのだが、それでも全編を通してみれば極めてシリアスであり深いストーリーが展開されており、特に第7層〜第8層のシナリオ展開は必見といって良い。
アムリタは、何故竜使いギルドに反旗を翻したのか?アムリタの旅の行く先には何があるのか?プレイヤーは、知らず知らずの内に理不尽展開の中に隠されたそのシナリオに引き込まれていく。
おちゃらけた世界観に隠された、独特の奥深いテーマ。脱力ノリのようで、考えつくされているようで、やっぱり脱力ノリのようなその世界観が、他に類を見ないものであることは間違いない。
○問答無用、疾風怒涛の名曲の数々
なんか、オリジナルサントラにプレミアがついてるらしいですが。
これは断言してしまっていいと思うのだが、サンサーラ・ナーガ2の曲は、数あるSFCRPGの中でも屈指の名曲揃いであり、聴き応えのない曲は一曲たりともない。
重厚・荘厳なオープニングの曲に始まり、寂漠としたフィールド曲、素晴らしいベースラインに支えられたメロディラインである「遊泳」、タイトルそのままに軽妙な「飛行」、穏やかな村のBGM、悲壮感の権化「アムリタ」から、言うまでもないピアノソロ「空中庭園」に至るまで、頭の先からつま先まで超完成度のBGMばかりである。
幸いにして私はオリジナルサントラを所持しているのだが、特に水路のBGM「遊泳」のピアノソロについては、とてもSFCのソロ曲がアレンジ元になっているとは思えない素晴らしい一曲である。機会があれば是非聴いてみていただきたい。
一方、セーブデータ選択画面のBGM「サブメニュー」は、軽妙なパーカッションとストリングスが入り混じった超名曲だと思うのだが、どういう訳かオリジナルサントラに収録されていない。ここだけは残念なところである。
ところで宣伝になってしまうのだが、2013年12/14「ゲー音部」のustライブでは、竜を育てるゲーム2の中でも屈指の名曲であるフィールド曲を演奏するようである。ケーナも参加するので、お時間あればお聴き頂ければ幸い。
参照URLは以下になる。
【演奏告知】12月14日、ゲー音部でUstライブやります
ということで、大概長くなった。
一言でまとめると、「サンサーラ・ナーガは、1・2とも大変なポテンシャルを秘めた名作だが、正直万人にお勧めすることは難易度高いという言葉になるのではないかと思う。
まだプレイしたことがない人で、上記の紹介を読んで興味が出た人は、是非触ってみて欲しい。あなたがサンサーラ適性を持った人であれば知らず知らずの内にアムリタの影を追いかけ続け、エンディングで涙腺を決壊させること請け合いである。
ただし、悪いことは言わないので、セーブデータについてはクリア前にコピーを取っておくことをお勧めする。
今日書きたいこと、以上。

この記事へのトラックバック
ダンジョンに閉じ込められるイベント中に願い事を叶えるツボを使用し「ここから脱出したい」を選ぶとゲームが進行できなくなるというバグがあり、
サポートに電話をかけてきた困っている子供に対して「ごめん、それはどうしようもないんだ…」と答えるのが辛かった記憶があります。
GBAの1・2同梱版が未だ手元に有ったりしますが……。
手元にはないですが。
そうそう、装備の耐久度、オリジナルの方にもあったハズですよ。
戦闘中にメーサー砲が壊れて途方にくれた記憶ありますもんw
でもそれは虹のシルクロードじゃないすかね。同じビクター音産の。
愛してやまないゲームでしたわ。
スーファミ互換機買おうかと検討中
好きなゲームがかぶりまくりです。
ミネルバトンサーガの名が出た時は、、、
なんかとても嬉しい。