2005年05月23日

レトロゲーム万里を往く その31 〜ゲームブックの「ゲーム性」〜

ゲームブック話の続き。相変わらず知らない人には途轍もなくわかりにくい話なのだが、なんかいー加減今更な気がしてきたので気にしないことにした。開き直り度を増量してお届けしております。激しく長文ですのでお暇な時に。

ゲームブックとレトロゲームは、多くの点で相似している。当時の時代背景を反映したものもあるし、単純に「ゲーム」という共通点故のものもある。
ちょっといくつか順番に拾ってみよう。

バグがある。

コンピューターゲームにバグはつきものである。バグが一個もないゲームというものは多分この世に存在しない。

レトロゲームの場合、大体のタイトルにおいてバグは「裏技」という名に昇華された訳だが、同じ様なものがゲームブックにもある。

例えば、大きいものが「項目指定間違い」。ゲームブックは「○○するなら××項へ進む」という形でゲームが進行していくのだが、この××の部分が間違っていたりすると、ゲーム展開はてきめんにすっ転ぶ。そりゃもうすがすがしいくらいにクリア不能である。コンピューターゲームで言うと、「ある行動を行うと必ずフリーズする」というバグに等しい。創元社では、確かクトゥルー神話をネタにした「暗黒教団の陰謀」でこのバグがあって、シュリュズベリィ博士に絶対に会えず必ず海岸で撃ち殺される、みたいな状況になってたんじゃないかと記憶している。これは流石にまずかったらしく、確か何版かで修正された筈である。

他にも色々ある。例えば「フラグ漏れ」。幾つかのゲームブックでは、「ある行動を行うと、その行動を行った印としてなんらかのアイテムを持たせる」という様な、ゲームでいう所のフラグ処理を行う場合があった。

で、このフラグを渡し損ねると同じ場所で何度も同じ敵が出てきたりとか、いつまで経ってもあるイベントが起きなかったりする訳だ。元々書籍でやるには難しいシステムであった様で、このバグは結構色んなゲームブックに見られる。創元社で言うと、ドルアーガと同じ鈴木直人氏の「スーパーブラックオニキス」や「パンタクル」辺りでもそんな現象があった様な覚えがある。

別にあげつらう訳ではないが、まだまだある。例えば、「ステータスの設定ミス」。ゲームブックの場合、戦闘はサイコロを振って出た目の結果で戦う訳だが、「サイコロでどんな目を出しても計算してみると勝てないよ」とかいう敵や、「このときの体力値だと何をどう計算してもここで死んじゃうよ」という様な場面はままあった。これも詳細は覚えていないが、例えば名作「展覧会の絵」とか、デュマレストネタの「巨大コンピューターの謎」辺りでも似た様な現象があった気がする。

万事のゲームと同じく、システムが複雑になればなる程、デバッグの手間も増える。ゲームブックの場合、通常の本と同じ校正も同時にしなくてはいけない分、編集者さんも相当に大変だったのではないか。少なくとも私ならゲームブックの編集者はやりたくねえ。

ともあれ、どんなゲームにもバグはある。いってしまえばご愛嬌である。バグもゲームの文化の内、とでもいうべき、切っても切れない存在だった様にも思う。

話は逸れるが、当時こういったゲームブックのバグ群は、創元社で言うと「アドベンチャラーズイン」という添付の小冊子で補完されていた様に思う。ファンコーナーなどもあるおまけの小冊子で、なかなか面白い内容のものも多かったのだが、まあこれに関してはまた項を改める。


ストーリーとゲーム性のニ軸がある。

手前みそになってしまうが、以前「エンディングの呪縛」でこんなことを書いた。
「遊び」と「物語」の両立。SFC時代辺りから何度も何度も論じられ、そして結論が出ていないジレンマだ。

ゲームにおいて、「ストーリー性」と「ゲーム性」の二つの軸が存在して、基本的にはざっくり反比例の関係にある、という点に関して以前書いた。ゲームブックにおいても、面白さの尺度としてゲーム性(システムとかバランスとか)とストーリー性(物語や展開の面白さ)の二つは存在すると思う。

ただ、一般的なコンピューターゲームと異なり、ゲームブックにおいてはこの二つが反比例の関係にならない。

元々の媒体が書籍であるだけに、ゲームブックにおけるゲーム性はどちらかというとストーリーのおまけである。ストーリーは文章の形で幾らでも充実させることが可能であり、後はシステムをどういじるかがゲーム性のキモであった。勿論「ゲームとしても面白いし、物語としても申し分ない」と万人に思わせる様なゲームブックはあまり多くなかったのが現実ではあるのだが、ゲームとして野心的な作品は数多く生まれていた。

システム面から流れを見てみよう。

まず基本にあるのが、I.リビングストンとS.ジャクソンの手による「ファイティングファンタジー」を元にした、最もシンプルなシリーズ。この辺りは、プレイヤーが操るステータスには「体力」「持ち物」以下幾つかしかなく、必然的に戦闘などのゲーム性も割と単調ではある。ゲームブックとしては一番単純な形だろう。

シンプル故の強みというものがあり、創元社のタイトルでも「失われた魂の城」「吸血鬼の洞窟」「シャドー砦の魔王」「炎の神殿」辺りがそれなりに人気だった様に思う。これに「魔法」などのエッセンスが加わると、「ドラゴンの目」やいわずと知れた「ソーサリー」などの名作タイトルが並ぶ。

次に、プレイヤーが扱うステータスが色々工夫されているタイプ。まずは体の五箇所にわたる「防具」が設定されているドルアーガシリーズに始まり、敏捷・体力・知覚の三つに数字を割り振る「巨大コンピューターの謎」、独特な戦闘システムの「ウルフヘッドの誕生」シリーズ、TRPGをかなり意識した作りになっている「魔王の地下要塞 」シリーズなどなどなど。「戦闘」に直結する部分であるだけに結構いじりやすいらしく、こちらは千差万別である。無論変えりゃあいいってもんじゃない部分もあるにはあるのだが、色々なステータスをいじるという作業は、私としてはけっこー楽しかった。

最後に、その他ゲームに関わるシステムが工夫されているタイプ。当然のことながら、これは後期になればなる程多くなった。前述の「フラグ」システムを取り入れているタイトルだと、林友彦さんの「ネバーランドのリンゴ」シリーズや「パンタクル」シリーズなど。出発時の幾つかの選択によって途中のゲーム性を変える「紅蓮の騎士」や「ファイアーロードの砦」。戦闘の成功判定をマトリックスにしてプレイヤーの成長を演出した「ベルゼブルの竜」「夜の馬」などなど、創元社だけでも枚挙に暇がない。進化の過程をみる様でもあり、最後には複雑化し過ぎてついていけなくなった読者もいた様だが、私は複雑なシステムもなかなかキライではなかった。

では、ストーリーはどんな感じか。これもバリエーション豊かで、開始当初のD&D的な世界(いわゆる剣とか魔法とかお姫様とか)中心のものを基本として、様々な世界観のゲームブックが挙げられる。

一番やりやすいのは世界観をそのままSFに移植することであったらしく、社会思想社の方では「さまよえる宇宙船」「ロボットコマンドゥ(これ結構面白かったのだが、一部のロボットがまんま日本の某ロボットアニメだったらしい)」など、創元では先述の「巨大コンピューターの謎」などが比較的早期に発売されている。

少し変わった世界観のゲームブックでは、名作と誉れ高い「展覧会の絵」は勿論挙げられるだろう。記憶を失った吟遊詩人が、ムソルグスキーの「展覧会の絵」を元にした世界に紛れ込み旅をする話である。また、ケルトの世界を基調におとぎ話風の語り口で仕上げられたシリーズ「ネバーランドのリンゴ」「ニフルハイムのユリ」(共に林友彦氏著)が個人的には出色だった。私自身は林友彦さんのこの二作が一番好きだったりする。ああティルト。

少し話は変わるが、ゲームブックがある時期を境にほぼ完全に姿を消した理由として、こちらの「ストーリー」の問題があったのではないかと思う。ゲームとしてのゲームブックは、ファミコンの進化と共に押されっぱなしになることは分かりきっていた。としたら「本であること」を生かし、ストーリーを充実させるしかファミコンに勝つ道は無かった筈だ。

が、ファイティングファンタジーの呪縛が強すぎたのかどうか、ゲームブックの後期の後期に至るまで、「本」であることを生かしきったゲームブックはどこまでも少数派だった様に思う。システムは工夫に工夫を重ねられたが、言ってしまえばストーリーや語りがその工夫に追いつけなかった。仮に現在のゲームに「ストーリーや演出は進化を重ねたが、ゲーム性はそれ程でもない」という側面があるとしたら、丁度それと裏返しのことが起きていたと考えていい。

完全ストーリー型のゲームブック、「送り雛は瑠璃色の」が二年早く発売されていたら、状況は多少違ったかも知れない。惜しい文化だったとは言える。


・・・いかん、たった二項目書いただけで、とんでもねぇ長さになってしまった。しかもこれ、ゲームブックを知らない人が読んだら如何なる奇々怪々な文章になっているかと思うと、想像するだに恐ろしい。

ここまでで一旦区切る。次回はちょっと早めに、取り敢えずゲームブック話の最後。ゲームブックにおける「キャラゲー」要素をテーマにしてみたい。


posted by しんざき at 15:25 | Comment(3) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
おおおお!暗黒教団の陰謀って、、、そうだったのかぁ!!バグだったとはぁぁ!!
どうりでよく死ぬと。
Posted by にゃあ at 2005年05月27日 23:06
私も当時あのバグにはテッテー的にてこずりました。博士に会えねええええと。結局それらしい分岐点を探した様な覚えが。

博士に会う前に海岸に出たら終わりなんですよねーアレ。そこまで原作に忠実にせんでも。
Posted by しんざき at 2005年05月29日 02:04
暗黒教団、実は初版からバグはないんですよ。
あれ、かなり手前にフラグ分岐がありまして、そこをミスるとハマります。
普通なら、「○○に会ったことがあるか」で分岐させて済ませるところを、会った・会わなかったのポイントで、以降、(ほぼ)同じ内容の選択肢が2つずつ存在するので、フラグを立て忘れたルートだと、回避策が分からずに確実に死ぬため、バグに見えます。
Posted by ドロシー! at 2014年06月12日 11:38
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