2014年01月18日

6歳の長男とお風呂に入りながら話したこと、ないし「調べなければ分からないこと」と「考えれば分かること」


帰り際に次女が深く寝入ったので、奥様が次女を寝かしつけている間に、私が長男6歳・長女2歳をお風呂に入れた。わしゃわしゃと体を洗わせ、わしゃわしゃと頭を洗い、容赦なくざばーーっと流した後湯船に放り込むだけの簡単なお仕事である。

その時長男と話した内容が、妙に刺さったというか、えらく真剣に聞いていたので、割と適したたとえ話だったかなーと思い、記録代わりに会話のログを残しておく。

発端は、太陽や木星の大きさについて話していたことだった。

息子「ねーパパ、もくせいって一番大きいの?太陽より大きいの?」
私「地球よりずっと大きいけど、太陽程は大きくないよ。太陽は、太陽系で一番大きい」
息子「太陽は木星の何倍くらい大きいの?千倍くらい?」
私「んーー、球の大きさ(半径のつもりで言っている)だけなら10倍とかそれくらいじゃないのかな?重さはもっとずっと太陽の方が重いけど」
息子「大きいのと重いのは違うの?どれくらい重いの?」
私「ちゃんと覚えてないや。後で調べてあげる」
息子「えー、考えてよーー

ここで、私はちょっと口を止めた。一つには、息子さんがまだ「調べないと分からないこと」と「考えれば分かること」の区別が厳密についていないなあ、ということに気付いたからである。

言うまでもないが、「木星と太陽の重量比」というものは純然たる知識であって、知っているかどうかの問題であり、考えて分かるようなもんではない。ただ、「知識を得ること」「知識を元に考えること」は勿論重要であって、その大事さをついでに教えられないかなあ、とこの時思った。


私「んーー。太陽が木星よりどれくらい重いかは、調べないと分からない。考えれば分かることと、調べないと分からないことがあるんだよ」
息子「えー。どんなこと?」
私「さっき、(息子の名前)、二つのこと言ったよな。「大きいのと重いのは違うの?」と、「どれくらい重いの?」って」
息子「うん」
私「このスポンジ持ってごらん。軽いよな」
息子「うん」
私「(スポンジにお湯を吸わせる)大きさ変わんないけどさっきより重いよな」
息子「うん」
私「何でかな?」
息子「んー、スポンジの中にお湯がたくさん入ってるから」
私「うん、良く分かったな。そういうこと。「お湯を吸ったスポンジが重くなる」っていうのは、実際やってみないとわからないこと。これが、「調べないと分からないこと」。で、「何でそうなるのかな?」とか、「大きいのと重いのは違うの?」っていうのは、調べたことを元に、「考えれば分かること」」
息子「そっかあ」
私「この前さ、(息子の名前)、パパに教えてくれたよな?線路のレールって鉄で出来てるんだよな?」
息子「うん。本にそう書いてあったんだよ」
私「(まあ正確には鋼かも知らんが)「線路が何で出来てるか?」ってのは、本で調べないとわかんないことだよな?」
息子「うん」
私「じゃあ、線路は何で鉄で出来てるんだろ?」
息子「んんーー?」
私「鉄ってどんな?」
息子「んーー。黒くて、かたい。あっ。かたくて丈夫だから?」
私「うん、良く出来た。一番の理由は、硬くて頑丈で、傷つきにくいから。これは、「調べたことを元に、考えれば分かること」」
息子「うん、うん」
私「こうやって、「色んなことを調べて、調べたことを元に考える」ことが勉強っていうんだよ」
息子「そっかー」
私「ただ、調べたことを元に考えるのは凄く大事なんだけど、考えたことが間違ってたり、調べたことがちょっとおかしかったりすることもあるから、考えた後また調べることも大事。もっと色々分かって、考えも変わったりする」
息子「線路のことも?」
私「多分ね」

だいぶはしょっているが、大体の会話は上記のような感じだった。この後、息子さんがお風呂の中で、おもちゃの電車を喜々として走らせている横で、長女は魚のおもちゃをがじがじとかじっていた。

で、今私は、息子さんが寝付いた後線路について調べて、炭素鋼の圧延材について知ったりしている。日々勉強である。


私が教えたかったことは、三つだけ。

・世の中には、「調べないと分からないこと」と「調べたことを元に、考えれば分かること」がある。
・大事なのは、「調べる」と「考える」両方やることと、考えた後も調べることをやめないこと。どっちかだけではダメ。
・そういうことを上手くやるための練習が勉強。



こういうことが、少しずつでも息子の中に根付いてくれればいいなー、と思い、私的な記録として残しておく。


今日書きたいことはそれくらい。
posted by しんざき at 22:47 | Comment(27) | TrackBack(0) | 子育て・子どもたち観察 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事へのコメント
いつも楽しく拝見しております。
一見「調べないとわからない」と思えることが、本当にそうなのか意外と悩ましい。
場合によっては、無茶なテーマに対し自分の持てる知識と思考を駆使して、淡い根拠らしきものを見つける。
そんな思考も必要な気がします。

Posted by at 2014年01月19日 00:01
鉄や鋼の話をしていた横で「長女は魚のおもちゃをがじがじとかじっていた。」
この事実から考えてわかることなのですがもしかしてお宅の長女は「がっちゃん」ではないですか?
Posted by at 2014年01月19日 00:06
まだ皿までは食べません>がっちゃん
Posted by しんざき at 2014年01月19日 00:32
このパパは天才かよ
息子を導くのが上手すぎるわ

とか思って何回も読んでしまいました
こういうのがサラッと出てくるお父さんって素敵ですね
Posted by ハマの三文芝居 at 2014年01月19日 01:17
すばらしい教育。
素直にそう思います。

勝手な思いですが、こちらのブログの電子書籍化を検討いただければと思います。
個人的には、以前読んだ記事で「子を持つと、若い頃に悩みがちな“自分の生きる意味”が創出される」というような文章に感銘を受けました。
(表現がぜんぜん違ってたらすいません)
Posted by at 2014年01月19日 03:07
ステキすぎる。
偉大な物理学者R. P. Feynmanを育てた父の話を思い出しました。
Posted by nobby at 2014年01月19日 13:51
素晴らしい教育!!
Posted by kunikazoo at 2014年01月19日 14:17
寺田寅彦とか牧野富太郎の人物伝を是非お子様に
Posted by at 2014年01月19日 17:33
孔子を思い出しました。
「子曰く、学びて思わざればすなわちくらし。思いて学ばざればすなわちあやうし。」
Posted by at 2014年01月19日 21:20
いわゆる「知識」と「知恵」の差、ですね。共感できます。
Posted by at 2014年01月19日 22:17
いいパパ。息子さん達お子様が羨ましい。きっと立派な大人になりますね
Posted by at 2014年01月19日 23:18
しんざきさんの子育ての記事を楽しみにしている者です。
時々、息子さんへの対応が細かくて考えすぎではないかなあと思ったりしていたのですが、今回のしんざきさんと息子さんの会話で
今までの積み重ねがあるからこその、この会話なんだと思いました。

上から話すばかりだけではなく、息子さんから聞いた話をだして、息子さんから教わることもある。と伝えつつ話す。

しんざきさんと奥様、落ち着いたら子育て本だしてください。

Posted by at 2014年01月19日 23:28
しんざきさんの子育ての記事を楽しみにしている者です。
時々、息子さんへの対応が細かくて考えすぎではないかなあと思ったりしていたのですが、今回のしんざきさんと息子さんの会話で
今までの積み重ねがあるからこその、この会話なんだと思いました。

上から話すばかりだけではなく、息子さんから聞いた話をだして、息子さんから教わることもある。と伝えつつ話す。

しんざきさんと奥様、落ち着いたら子育て本だしてください。

Posted by h at 2014年01月19日 23:29
こんな親父になりてー
Posted by at 2014年01月20日 00:27
「考えてよ」って言われたら僕ならドキッ!とします。「調べればわかる」のは本当なのでしょうか。調べられる事柄も、実は先人たちが考え抜いて生み出したものではないのでしょうか。

考えると調べるの差がわからない子供はなんとピュアで美しいのでしょう。彼らからすれば大人になればなんでも「考えられる」のです。

社会に出てもイノベーションを生み出そうとすると所謂「知識」は生み出す作業の根幹には余り関係ありません。自ら考えて回答を「何もないところから」生み出す力が最重要です。

もうすぐ中1になる長男が空想科学好きで、幼稚園児のころからお風呂でよくこんなことを聞いてくれました。私は「ショーゴはどう考えるの?」と聞きました。回答が無茶苦茶でも考えたことをほめてあげました。
Posted by Haya at 2014年01月20日 08:01
いや、回答を「何もないところから」生み出すことは出来ない。
必ずその根幹には、今までの人生で得た知識がある。
たとえば、36×20=?
この答えを暗記している人などいない。しかしではただ考えるだけで出るかと言うと、そうでもない。九九を知っている、繰り上がりのやり方を知っている・・・そういう知識の上に、知恵は発生する。
社会的な問題を考えるときだってそうだ。普天間の基地をどうすべきか?考えるとき、かならず人は今までの人生で得た経験を総動員して、あるいは歴史の授業を思い出して、自分なりの答えを出そうとするだろう。
頭がものすごく良くても何の知識も持っていない人間には、答えを出すことは出来ない。
だから「調べる」ことが重要なんだよ。
Posted by at 2014年01月21日 09:34
今はネットで何でも調べられます。自分自身先端研究に従事しておりますがこのような領域でさえ、Googleにサーチワードを入れれば情報が得られます。過去の図書でさえ情報化されて検索で共有できる、「調べる」には格好の時代となりました。

ところが、調べることで回答が得られるという方々が増えてしまっております。調べたことは過去の出来事であり、そこに何ら新奇性はありません。知恵もありません。知恵とはこの瞬間を生き抜くための道具で、過去のものはそのままでは大概役に立たないのです。

相対的に、調べると言うことの価値は下がっています。

知識があるのは当たり前の時代なのです。その先に如何に「自分で考える力」があるのかが問われます。

木星の重さも、考えれば近いところまで行けるかも知れませんよ。(フェルミ推定という便利な道具があります)もしその考える過程が間違っていたとしても、父と子の会話の中では、その考える過程を示すことが出来れば、それは子にも親にも大きな財産となろうかと思います。
Posted by Haya at 2014年01月23日 07:26
まとめサイトから来ました。
あなたは、最高の父親だと思います。

考えることを捨てた大人(自分がわからないから子供だましを使う)がたくさんいる中で、きちんと自分がわからないことを子供に伝え「知識を得て、その上で考える力」をお子さんに伝える行為はすばらしいと思います。

私も、子供ができたとき貴方のような父親になりたいです。
Posted by at 2014年01月25日 09:37
あー
うちの甥っ子もそんな感じだなー。
これは参考にしてみよう。
Posted by at 2014年01月26日 10:48
はじめまして。記事拝見させていただきました。
なるほど、いいですね。

最近では小さい子だけでなく、中高生ましてや大学生社会人でもこういった「調べる」「考える」といったことが正しくできない人が増えているように感じます。
そういったなかで、小さいころから正しい考え方の順序を教わり、訓練してくことができる息子さんはしあわせだなぁと思いました。
ぜひともブログの記事の一部に紹介として記事を書きたいのですが、記事内にリンクなど貼り付けてもよろしいでしょうか?
Posted by マツヲ at 2014年01月26日 18:28
>マツヲさん
引用、紹介などについては特に制限なくご自由にどうぞです
Posted by しんざき at 2014年01月26日 18:56
>管理人様
ありがとうございます!
後日使わせていただきますね!
Posted by マツヲ at 2014年01月26日 20:45
面白い文でした。
親なら通る道ですよねぇ
自分も絵を趣味とする親子ですので、技術的なことでですが似たような会話をたまにします
そんな時上手く教えられるよう必死になるのですが
同時に親の醍醐味(?)的なものも感じられて凄く幸せな気分になれるもんですね
親子って良い物ですね♪
Posted by at 2014年01月26日 22:21
理解できるだけお子は、頭がいい
ついでに実践してるとは・・・
Posted by at 2014年01月27日 11:55
なるほどと思いました。ただ、「重さはもっとずっと差がある」と断言した理由を聞きたかったのかも知れないな、とも思いました。同じ物質なら長さが2倍違うとき重さは8倍違う、みたいな。
Posted by や at 2014年02月09日 23:37
考えて浮かんできたものが必ずしも正解とは限らない点でちょっとモヤモヤ。
Posted by at 2015年08月25日 18:00
半径比が「調べなければ分からないこと」とだとして
重量比はそれを基に「考えれば分かること」では?

単純に半径比が10倍なら、体積比は3乗スケールで効いてくるんだから1000倍だ

もちろん、比重の違いはあるにしても、太陽は水素で、
木星も何か知らんがガスなんだから似たようなもんでしょ
ってことで調べてみたら、やっぱり質量比1000倍くらいじゃないか。

ほらやっぱり「考えれば分かること」だ
「えー、考えてよーー」って言った息子さんは正しかった
Posted by at 2021年03月03日 19:03
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック