2007年04月22日

レトロゲーム万里を往く その61 「映画を目指した」ゲームの災厄


なんか久々にゲームタイトルを冠してない万里など。調べてみたら1年半ぶりだった。

知はうごく:コンテンツ力(7−3)日本の戦略

細かいところなんだが、ちょっと違和感があったんでつきつめて考えてみた。

で、違和感を感じた対象がここだったんで自分でも若干呆れた。本筋から外れた部分であることは一応理解している。
アニメや漫画は感動をもたらすけれど、ゲームは、お金だけ持っていって、子供の時間奪ってますね。その人生にプラスアルファがない。宮崎さんとか他のアニメ見て、人生変わったという人はいると思います。心ふるえるほどの感動とか、ゲームは若干難しい。

当たり前だっつの。ドンキーコングやアイスクライマーで心がふるえる程感動する子供がご近所にいたら、まず性癖の心配をしろ。将来ミスター味っ子(初期)みたいな人になるから。

と第一感では思ったんだが、良く考えてみると。アニメや漫画、あるいは(宮崎さんの名前が示している通り)映画と、ゲームがこういう文脈で比べられること自体、私の認識とだいぶずれている。というか、おそらく私の認識の方が世間からずれている。私の脳回路が8ビットで動いていることは私も認知している訳であって、認識がずれていることを認めるにやぶさかではない。


つまりこれは、「近年、ゲームはいつの間にか漫画やアニメと同じ土俵に乗せられてしまった」ということを意味しているんだろうか。


そもそも、「心ふるえるほどの感動」とか「人生へのプラスアルファ」がゲームにはない、などというテキストが書かれるのは何でか。それは多分、ゲームに対してあまりにも「物語」を期待しているからだ。

良質な物語は心に響く。良い小説は人生を豊かにする。多分五十年くらい前から、国語の先生が言い続けてきた言葉だ。

ここ数年、ゲームのCMや店頭広告を見て「何の映画だ?」と思うことは多くなった。実際、ゲームの中身そのものも「アニメ的」あるいは「映画的」であることは多い。スクエニのアレとかナムコのそれとかを引き合いに出すと分かりやすい。「ストーリーを一番の具材として、その周辺にゲーム要素をばら撒く」という作り方をされているゲームは、一昔前程ではないかも知れないが、今でも結構ある。

「見た目」である程度映画やアニメに追いついてしまったゲーム業界の、少なくともその一部は、「内容」でまで映画やアニメを目指してしまったのだ。これは改めて言うことでもなく、ここ十年ばかりずーっと指摘されてきたことだと思う。

しかし勿論、「映画もどき」は永遠に映画にはなれない。映画的な外見に釣られて、映画以上の感動をゲームに期待する人は、多くの場合がっかりする。「遊ばせなくてはいけない」という巨大な制約を抱えたゲームは、「物語」を描き切るのに適したプラットフォームだとはお世辞にもいえないから(ノベルゲームの様な例外も存在するが)。そして、「物語」を描く土壌に関しても、ゲーム業界と映画業界ではそれこそ数十年の差があるから。

ところが、なまじっか映画を目指してしまったせいで、世の中には誤解をする人が出てきた。ゲームのことを、「劣化映画」とか「劣化アニメ」と判定してしまう人が現れる訳だ。そういう人が、例えば「物語の内容が薄い」こととか、「キャラクターの内面描写が足りない」ということに対してケチをつける(参照:FF12に関する論議について。→まこなこさんのコメント欄も参照) そして、例えばメイドインワリオみたいな、もうちょっと純粋に「遊び」に近いゲーム群は、「子供向け」とか「ミニゲーム集」みたいな括りの元、「大作」の影に押し流されていく。

多分、冒頭引用での「若干難しい」というのは、そういうことも含めての「難しい」なんだろうなあ、とは思う。


本来ゲームは「遊び」であって、つまり鬼ごっことかかくれんぼとかじゃんけんとか、そういったものの延長線上にある存在だった筈なのだ。だから、ゲームをやって何か得るものがあるとすれば、それは「遊び」をする上で得るものである筈だ。「遊び」をコンテンツと考える際、アニメや漫画の土俵で比較すれば、そりゃゲームの魅力は薄いだろう。「遊び」と「物語」は本来全くの別物なのだから。

結果的に「ストーリーが評価される」名作というものは、ゲーム業界にも多分たくさん存在する。だが、最初から「ストーリーを中心に」ゲームを作り、ゲームを遊び、ゲームに期待するなど、本末転倒なんじゃないだろうか。


と、本エントリー一旦ここまで。「遊び」的分類について、レトロゲームでやってみようかと思ってたんだが、ちょっと長くなりそうだったので次回に回す。

手前みそだが、以前書いた似た様なテーマのエントリ。ご参照頂けると幸い。
レトロゲーム万里を往く その24 〜エンディングの呪縛〜
レトロゲーム万里を往く その25 〜エンディングの呪縛・2〜
レトロゲーム万里を往く その27 〜エンディングの呪縛・3〜
posted by しんざき at 02:06 | Comment(0) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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