2014年10月08日
主語をでかくするかどうかは単に選択の問題ですよね
webのごくごく一部で、なんか「主語がでかい問題」というのが盛り上がっていたらしいので、経緯を全く把握しないまま書きます。文章のテーマ的にブーメランになりそうですが気にしません。
主語をでかくするかどうかというのは、「文章のテーマをどれだけ一般化するか」ということとニアリイコールになります。飽くまで「テーマを」というだけであって、主語をでかくすれば文章の内容も一般化されるのか、というと、当たり前ですがそういう訳ではありません。
●でかい主語の例
・日本人が/外国人が
・男性が/女性が
・老人が/若者が
・サラリーマンが/ニートが
●あんまりでかくない主語の例
・俺が/○○さんが
・高橋留美子が/あだち充が
・△△市在住の住民が
・10年に一回くらいしか新作書かないSF作家が
なんかWebのごく限定された一部の界隈では、「でかい主語はよろしくない」的な議論になっている気配がありますが、実際のところ、別にでかい主語自体に問題があるわけではありません。どっちを選ぶか、ということです。
主語をでかくする、というかテーマをより一般化することには、メリットもあればデメリットもあります。
-----------------------------------------------------
●メリット
・テキストの対象となり得る人が増える
→広範に興味・注目を得られる可能性が高くなる
→文章を「自分のこと」と受け取る人が増え、感情を煽りやすくなる
・文章が分かりやすくなる
→「こういうヤツもこういうヤツもいるけど、全体としては大体○○だよね」というテキストより、「○○である」というテキストの方が遥かに話は早い
・精密な議論でなくてもなんとなく論としてまとまりやすい
→対象が広くなるので、広い範囲のぼやっとしたテキストでも結論になり得る
→「社会の問題」だとか「民族性の問題」みたいな、大上段の結論が出しやすいとも言う
・テキストのテーマに当てはまる人が増えるので、「全くのはずれ」ということは少なくなる
→的が大きくなれば下手な鉄砲でも当たりやすくなる道理である
→当たり前だが、当てはまらない人も増える
●デメリット
・テキストから正確性、精密さが失われる
→というか、一般化した話を精密に書こうと思うとちゃんとした統計が必要になる
・「俺は違うけど」「私には当てはまらないんだけど」といった、反論になり得る反例が非常に多くなる
→平たい話、テキストの弱点が増える
→有効な反論になるかどうかは置いておく。反論したくなる、という点ではメリットにもなり得る
-----------------------------------------------------
早い話、「文章の正確さ・妥当性と引き換えに、スコープの広さ・分かりやすさを得ること」が「主語をでかくすること」と大体イコールです。ダイヤルを調節するようなもんです。
あるべき論で言えば、「テキストの性格、揃っているデータ、対象とする読者などによって、主語の大きさ・一般化度合いをコントロールする」というのが本来あるべき姿なんでしょう。きちんとした統計があるなら、その統計が及ぶ範囲を一般化して語ることには何の問題もありません。統計がなかったとしても、「俺はこうなんだけど」というテキストなら誰に文句をつけられる筋合いもありません。
勿論、統計が欠けていたとしても、ある程度一般化せざるを得ない時だってあるでしょう。人間十人いれば考え方は十通りあるに決まっていますが、いちいちそんなことを考慮に入れていては記事は書けません。ある団体を一括して論評する時、「その団体の中の様々な考え方」などいちいち挙げていては一生かかっても記事は完成しません。
一方、一個人の所感を「日本人男性の考えること」みたいな感じで一般化したら、そりゃあいくらなんでも無理筋だよって話になるでしょう。世の中には、広い範囲の注目を求めて、個人的な問題でも無理やり一般化したがる人というのがいて、そういうテキストは炎上を起こしやすいです。
端的に言うと、テーマによって「一般化しても問題がないライン」というのがあって、そこを超えると怒られやすくなるよってことです。単にPV目当て、炎上・反論大歓迎というような場合には、妥当性や精密性なんてどうでもいいから思いっきり主語でかくしちまえ、という選択もありえるでしょう。そうでなければ、妥当なラインの一般化にとどめておく方が無難、ということになります。当たり前の話ではあります。
一般化は悪いことではありません。というより、ある程度の一般化は、文章において必要不可欠です。しかし、摂取しすぎると害になることもあります。
一般化は用量、用法を守って正しく使いましょう。皆様、良い一般化ライフを。
昔似たようなこと書いてました。
「個人的な問題でも一般化したい病」について

この記事へのコメント
コメントを書く
この記事へのトラックバック