2015年06月20日

ゲームブック半里を往く その7 巨大コンピューターの謎と、創元ゲームブックヒロインのお話


シャラナ可愛い(真顔で)


どうも、しんざきです。いつも通り、2015年という時代の今、創元のスーパー・アドベンチャーゲームのレビューという記事に、どの程度の需要があるのかなどという話は気にせずに書きます。


Amazon:スーパーアドベンチャーゲーム 巨大コンピューターの謎


デュマレストサーガ、というSF小説シリーズをご存じでしょうか。

デュマレストサーガは、既に故人となったE・C・タブが1967年から2008年にかけて書き続けていたSF作品です。主人公であるアール・デュマレストは、「人類発祥の地である「地球」という星が、伝説としてしか知られていない程に遠く離れた銀河」において、自分の故郷である地球の手がかりを捜し求めながら、星から星へと旅をします。

様々なSF的小道具をふんだんに盛り込みつつ、極めて固ゆで卵野郎なデュマレストを描いたその作風は、SFハードボイルドの走りといっても過言ではないでしょう。まあ、デュマレスト、行く先々の星で女が出来たり、一作品に二回くらいは死に掛けたりしますけど。

やたらと鋭い反射神経、そこそこ強い腕っ節、たまにエスパーっぽい閃きを見せる洞察力、ドライなようで実は義理堅い性格を武器として、様々な舞台の星をくぐりぬけていく、アール・デュマレストのキャラクターが軸になっている小説群。それがデュマレスト・サーガです。32巻と33巻日本語訳して欲しい。


「巨大コンピューターの謎」は、そんな「デュマレスト・サーガ」を、創元ゲームブックの世界に持ち込んだ、「SFゲームブック」の中でも一種独特な立ち位置を占めているゲームブックなのです。



「巨大コンピューターの謎」。1986年、安田均作。原作はE.C.タブですが、原作「デュマレスト・サーガ」に、本書に該当するエピソードがない(部分的に似たようなエピソードはありますが。迷宮惑星トイとか)為、エピソード自体はオリジナルのものです。本書は本来三部作の想定だったようですが、二巻「惑星不時着」が1988年に世に出た後、続編は27年程発売されていません。個人的には、是非惑星ハスラーでのデュマレストの冒険も体験してみたいんですが。


「○○の謎」というタイトルがいまひとつ大時代的であることは否定出来ません。原作デュマレストサーガにしても、例えば原作は"The Winds of Gath" とか "The Jester at Scar" といった、シンプルに惑星のことを描写したり人名であったりといったタイトルなんですが、邦題は「○○の惑星××」という形態に統一されており(例に出した原作で言うと、「嵐の惑星ガース」と「キノコの惑星スカー」になる)、もうちょっとなんとかなってもいいんじゃねえかなあ、と思わないでもないです。キノコて。いやまあキノコの惑星っちゃキノコの惑星だけど。

とはいえ、「巨大コンピューターの謎」及び「惑星不時着」で活躍するデュマレストについて言えば、その描写は「まさにデュマレスト!」というものばかりです。髪の毛からつま先に至るまで、一分の隙もないハードボイルドヒーロー。プレイヤーのサイコロ運にもよるが、人間離れした反射神経や洞察力、そしてタフネス。で、ドライなようでいてどこか浪花節で、助けを求められたら基本応じてしまう人情味。この辺、原作を下敷きにした「キャラクター作品」としては、本作は一級品と称して間違いありません。


まずはゲーム内容の話をしてみましょう。


・ゲームブックとしての「巨大コンピューターの謎」。

ゲームブックとして「巨大コンピューターの謎」を観ると、その作りは割とスタンダードで、「ステータスの割り振り」に特徴を観ることが出来ます。

本書の中で、主人公のアール・デュマレストは、「体力」「敏捷力」「知覚力」の三つのステータスを割り振られています。各ステータスの基本値は5で、サイコロ二つを振って出た値を、プレイヤーはこの三つに自由に割り振ることが出来ます(最高は10)。

各ステータスは、例えば戦闘でのダメージ判定に使われたりする他、展開の随所随所で成功判定に使われることになります。例えば、扉を力ずくでこじあける時には体力チェックで、サイコロ二つ振ってその時の体力以下なら判定は成功、とか。敵の罠を素早く避ける時には敏捷力チェックとか。

ただ、このゲームブックって結構各判定の結果がシビアでして、重要なチェックに失敗すると一発死亡、みたいな場面も折々あります。その為、最初のステータス割り振りで余りに低い値を出すと、特に進み方が分からない内はエラい苦労を強いられることになります。最初のダイス目次第でゲーム難易度が大きく変わり過ぎる点は、若干不親切な点かも知れません。


ゲームストーリーとしては、デュマレストの当初の目標は、「故郷・アースの手がかりを、惑星アンフォルムのライブラリで掴むこと」であり、デュマレストはその為に、ライブラリの検索料を稼いだり、情報屋と接触して稼ぎ口を探したりといった行動をとることになります。この際、例えばカジノあり、闘技場での戦闘あり、情報屋の皮をかぶった詐欺もあり、しまいには金塊探しの為に、ホバークラフトをレンタルして南の大陸で洞窟探検をしたりもします。この辺り、SFという味を生かした展開の多様さは、このゲームブックの特長でもあります。


が、中盤以降、物語は大きな変動を見せます。そう、シャラナが物語に登場するのです。


・ヒロインはお嬢様。

デュマレスト・サーガでは、多くの作品で、ストーリーを彩るヒロインが登場します。本書に登場するヒロインは、惑星アンフォルムの高官カザフ氏の娘、シャラナ。

酒場でシャラナが暴漢に絡まれているところを助けたデュマレストは、なし崩し的に彼女のボディガードを勤めることになります。そんなシャラナを狙うのは、市内の暴力組織であるコルチェラ商会。主人公デュマレストは、シャラナを守って「アース」の情報を得ることが出来るのか…。と、前半がどちらかというと「お金稼ぎ」を目的としていたのに対し、後半はシャラナを中心にしたストーリーにがらっと変わります。


シャラナ自体は、お転婆なところもありながら基本的には素直であり、どこか夢見がちな少女なのですが、ヒロインの王道通りさらわれます。これはもう言ってしまいますが、一巻でも二巻でもめっちゃさらわれます。

ドルアーガのカイ、ニフルハイムのエスメレー、ウルフヘッドのスミアなどの例を挙げるまでもなく、ヒロインとはこういうものだ!と言わんばかりの王道展開には安心感すらあるといえるでしょう。とはいえ、ネタバレは避けますがシャラナもただのお嬢様ではないので、色々と本筋の内容に絡んではくるのですが。

実は本書、シャラナの護衛役につくことはかなり早い段階から可能なので、展開を覚えると、多分200ステップそこそこくらいでクリア出来てしまったりするんですよね。というか、むしろ慣れていない人は、最初に酒場に何回か通ってシャラナフラグを立ててしまい、急展開にポカーンとしたりしたかも知れません。

正直、本書におけるシャラナの描写はまだまだ手探りなところもあったとは思うのですが、次巻「惑星不時着」では、より掘り下げられたシャラナのキャラクターが読者の前に現れることになります。


この辺で、話は「創元ゲームブックにおけるヒロイン」のお話になります。


・創元ヒロインコンテスト。

先に断っておきますが、ここから先は飽くまでしんざきの趣味の話になります。

私が創元っこだったので今回は創元に限定した話になりますが、創元ゲームブック、「スーパーアドベンチャーゲーム」には、各シリーズ色々な「ヒロイン」が登場します。ヒロインの存在感がどの程度か、というのも作品それぞれ色々です。まず、ざっと各タイトルのヒロインについて紹介してみましょう。


○ゼビウス:惑星ゼビウスの超能力少女、カーチャ。主人公のP・Jと最後まで行動を共にして、一緒にガンプと戦うことになります。健気な戦闘少女、という感じで今の基準でも人気が出そうです。

○ドルアーガシリーズ:王国の巫女、カイ。言わずと知れた超有名ヒロインではあるのですが、ゲームブック中では二巻のラストと三巻のラストにちょびっとだけしか出てきません。ゴルルグの半分以下の存在感はちょっとどうなの。あとジプシーの巫女がかわいいと思います。

○ワルキューレシリーズ:ワルキューレ、ないし…(一応ネタバレの為に伏せる)。このシリーズについては、ワルキューレは正直あまり存在感が大きくないので、もう一人のヒロインこそ正ヒロインと言えるでしょう。一巻のラストは必見です。

○ドラゴンバスター:原作通りセリア姫。最後の最後以外殆ど出てきません。

○ネバーランドシリーズ:エスメレー。後述します。

○ウルフヘッドシリーズ:平和な小国サングールの王女スミア、ないしスミアにそっくりな妖精タイタニア。スミアさんかわいいですよね。やっぱよくさらわれますけど。タイタニアは全裸ぼくっ子妖精という特殊嗜好なキャラ。「火竜のアクセル」という超かっこいい名前の仲間がいますが、実際にはごくシンプルなデブです。

○スーパー・ブラックオニキス:タラミス。清く正しいビキニアーマー戦士。作中、盗賊バムブーラと魔術師シモンは、ゲームシステムの都合上シルエットでしか描かれないので、まともにイラストが描かれるPCはテンペストと彼女だけだったりします。

○パンタクルシリーズ:ティーンズ・パンタクルでは主人公が女子高生の大島いずみ。パンタクルIIでは…ポッポレイポ?(毛むくじゃらですが)

○紅蓮の騎士シリーズ:アミナ姫。ただ、二巻・暗黒の聖地の最後の方でちょびっととしか出てきません。ただし要所要所のイラストはエロ可愛い。

○展覧会の絵:リモージュの市場の女性吟遊詩人がかわいかったと思います。

○魔界物語シリーズ:えーと、ヒロイン的存在いたでしょうか。強いて言うとベルゼブルの竜のティグナス王女とか…?

○エクセアシリーズ:「ギャランス・ハート」では主人公が女性剣士のアリス・カエンです。あとヴァレリィがかわいい。

○ソーサリー!:アリアンナ。この人です


とまあ、こんな感じで種々雑多、たくさんのヒロインがいる訳なんですが、こうしてみると王女様とかお姫様多いですね。D&D的な洋風ファンタジーの名残なんでしょうか。

で、私が考える創元ゲームブック三大ヒロインが、「ネバーランド」シリーズのエスメレー、「パンタクル」の迦陵頻伽、そして「巨大コンピューターの謎」のシャラナだ、という話なのです。

まずエスメレーさん。

エスメレー.png

ネバーランドのリンゴからこっち、林先生一流の「超さらわれる」ヒロインです。で、毎回猫妖精のティルトに助けられます。ネバーランドと、ニフルハイムと、カボチャ男で計何回さらわれたでしょうか彼女。5回くらい?上記イラストは、「カボチャ男」でピーマンにさらわれていたエスメレーを助けた時のイラストです。微妙にエロいと思います。彼女はエルク(ファンタジーで言うエルフ)なので、随所にエルフ的な特徴が表現されています。

ニフルハイムのアンヌーンで、彼女に服を買ってあげないプレイヤーには天罰が下ると専らの噂です。

次に「パンタクル」の迦陵頻伽。

がりょうびん.png

彼女、実際には鬼族なので、メスロンの敵方なんですよね。で、メスロンが目的を達成すると、自分はこの世界にいられなくなる。それを知りつつ、メスロンには正体を隠して彼をサポートするという、非常に切ない物語が描写されます。登場頻度は決して多くないのですが、それでもプレイヤーに残した印象は濃いものがあったと思います。


で、「巨大コンピューターの謎」「惑星不時着」のシャラナ。

シャラナ.png

彼女、正直なところ「巨大コンピューターの謎」ではまだあんまりキャラが立ってなかった気もするんですが、随所で健気なところもみせ、惑星不時着では色んな面で超がんばってました。上のイラストでは、デュマレストが戻ってきてほっとしつつも嬉しそうなところがかわいいですよね。作画上の問題なのか、足超長いですけど。


ことほど左様に、「ゲームブックヒロイン」というのは今では超ニッチなテーマになってしまいましたが、魅力的なヒロインがたくさんいる訳で、もうちょっと話題になってもいいのではないかと思うところです。


という訳で、後半は趣味に走ってましたが、今回語りたかった「デュマレスト・サーガ」については、原作ゲームブック合わせ、SF好きな皆さまにもお勧めです。いつか3巻が発売されることを切に祈念する次第であります。


今日書きたいことはこれくらい。
posted by しんざき at 15:25 | Comment(4) | TrackBack(0) | ゲームブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
幡池裕行さんの挿絵は素敵ですね〜。

久しぶりに引っ張りだそうかしら。

次はエクセアでお願いします!
Posted by nei at 2015年06月20日 20:23
服をどんどん脱いでいくカイの冒険版のカイにも一言お願いします
Posted by at 2015年06月21日 11:19
デュマレストサーガのゲームブックは懐かしいですね。
ヒロインがデュマレストの懐に飛び込んでくる初登場シーンのカットは衝撃的でした。
その後、原作も読んだのですが、偶数巻でくっついたヒロインと死別して奇数巻では傷心というワンパターンに早々に脱落したのもいい思い出ですw
Posted by 児斗玉文章 at 2015年06月26日 20:16
はじめまして、
私はやはり断然、カーチャですよ。
養子、能力、口調など全て好きです。
「戦うヒロイン」という部分もポイント高いです。
Posted by さまだ at 2016年03月26日 21:30
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