2015年07月15日

強行採決がどうとか


以前、といっても10年くらいは昔だったような気もするんですが、竹下登氏の回顧録を読みました。

政治とは何か―竹下登回顧録

強行採決がどうとかこうとかという話については、本当はその回顧録を読むとすっげえ色々書いてあって面白いんですが、手近なところではWikipediaでも色々まとまってまして、まあ内容もこんなもんだと思いますので、気になる人は読むといいと思います。

Wikipedia:強行採決
国会では議案に充当させる審議時間の配分や審議の順番など議事日程は議案ごとの均等割ではなく、議案ごとに議院運営委員会で調整され、ここでの調整が重要な政治上での駆け引きの材料となってきた(国対政治)。このため、議院運営委員会での優勢を背景に、野党の合意を取り付けないまま審議を終了させ、法案を採決することを「強行」とマスコミや野党が表現した。また与党が一方的に審議を打ち切ることから、「与党による審議拒否」とのレトリックが用いられることもある。
与党が強行採決する際は、国会対策委員長同士や会談や委員会の理事懇談会といった非公式な場で、野党側に対して「○時○分に採決に踏み切る。」あるいは「○○議員の質疑終了後、質疑を終局する。」などと事前通告されている。このため、採決間近になると、与野党の議員が集結の準備を整えており、マスコミ各社のカメラもスタンバイを終えている。採決する時間も、NHKの生中継がしやすい時間帯を選んで設定されている。一方、一部の野党が出席して強行採決に踏み切る予定が、段取りを間違え全野党議員が欠席のまま採決してしまったため、数時間後に改めて野党議員の出席の上で強行採決をやり直した例もある。また、与野党対立を激化させないため、委員会で強行採決を行ったあと、当該委員会の委員長が引責辞任することもある。
このように、与野党が対立する法案にあって、どうしても妥協点が見出せない場合、ギリギリの落とし所として、強行採決が選択される。与党は法案を可決させるという「実」を取り、野党側は「体を張ってこの法案を阻止しようとした。」という姿を国民にアピールする「名」を取る。その意味では、与党が野党の顔を立てたものとも言える。
実際のところ、「強行採決」という言葉自体メディアが作ったものでして、国会法や衆議院規則にそういう記載があるわけでもありませんし、「○月×日に採決を行います。みんな来てね!」と事前告知しなくてはいけない、という決まりがある訳でもないです。

ないんですが、実際にはちゃんと告知が行われるので、野党の皆さんが事前に反対のプラカードを作る時間もある訳です。出来レース感が溢れる、素敵な慣例ですよね。


ちなみに、野党が採決に抗議する姿が慣例通りテレビ放送されていて話題になっていましたが、自民党が下野していた時期にも強行採決は散々行われておりましたので、自民党も当時抗議活動を行っていた筈です。プラカードを作っていたかどうかまでは私は知りませんが。


結局のところ、強行採決といっても、「国会法に則って正規に運営された立法府が正規に審議した」という事実は動かせないと思いますので、採決方法について文句を言うならば、順番として、まず国会法に文句を言わなくてはいけないんだと思います。というか、民主党は何故、自分たちが与党の間に少数意見を尊重する方向に法改正しなかったんでしょうか。長年主張し続けていたことを実現するチャンスだったと思うんですが。不思議ですよね。


その辺り、強行採決という言葉は、与党に対して「反民主主義的」「独裁的」というレッテルを張る用途で便利使いをされ過ぎているような気もしないではありません。

実際には、全ては定められた手順に則って行われているわけで、国民多数に選ばれた与党が数週間の審議の後に今回の採決に至っている時点で、民主主義なんでこんなことで死んでまうのん?と思わざるを得ません。ひょっとすると、現状の「民主主義」というもの自体どうなの、という話に落ちるのかも知れないですが。


全然関係ないですが、今回の採決について「自民党によるクーデターだ!」とかいうテキストをtwitterで見かけまして、「え、マジで!?多数派与党の国会立法もクーデターって言うの!?」とか軽く衝撃を受けました。新しいクーデターの概念ですね。言語の可能性って素晴らしい。


まあ、強行採決ってのも随分イメージ先行の面白い言葉だなあ、という話でした。
posted by しんざき at 15:06 | Comment(14) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
別に新しい概念じゃねーから
Posted by いやいや at 2015年07月15日 15:39
ひたすらレッテル貼りばかりでマスコミも野党も芸がない
Posted by at 2015年07月15日 19:46
まぁ今回に関しては、こんだけ国民の間でも反対意見が広がってる中での採決なので「国民の理解を得ていない」という意味での強行採決、といえるんじゃないでしょうか。
Posted by どもども at 2015年07月15日 23:03
中国のスプラトリー諸島をどう思ってるかだな
そこでやったことを日本にはしないと言い切る根拠はなにか
Posted by 名無し at 2015年07月15日 23:31
恒例の「強行採決」
朝日新聞の「民主主義って何なんだ」→それを受けて?「民主主義は死んだ」
言った人の知識レベルを疑う「自民党によるクーデター」
など、今日は面白い言葉がいっぱい飛び交っていますね
Posted by at 2015年07月15日 23:58
あれをクーデターと言うのは確かに失笑ものですね。そんな事言うのは意識高い系の無知か、ヒロイズムに酔った政治厨くらいでしょうけど。何万時間議論しても与野党の主張は変わらないに、あーいう事言う人はどんな解決の仕方を望んでいるんでしょうかね?
Posted by 本蔵 at 2015年07月16日 00:04
デモで国会採決を覆そうとするのはクーデターだから冷静になろう、とか言っちゃう香ばしいのもいますね^^;;;;;;;
Posted by コプンカップ at 2015年07月16日 01:25
賛成派と反対派で意見交換もそこそこに分断して、かつ双方に花を持たせるような議会運営を見せられていたら、「理屈とは結論から導き出すものである」と学習しちゃいますよね(どっち選んでも花もらえるんですから)。
「どうでもいいからサイコロでも振って決めたら?」みたいな政治不信(現千葉市長熊谷氏の言では政治過信)の大きな原因だと思うんですよね。
Posted by 地獄の肩こりコマンド at 2015年07月17日 00:36
採決日時の事前通告を行うのが強行採決なら、
今日は審議も採決も行わない、と野党に通告しておいて、
野党議員が地元へ帰郷したのを見計らってから、審議を今から開始する、と与党や賛成議員に通告し、そのまま採決まで終わらせるようなのは、
なんと呼べば良いんでしょうね…
Posted by ナナシンボウ at 2015年07月17日 18:13
どもどもさん
国民の中で反対意見ってそんなにないですよ。テロもどき政党と一部の反日マスコミが異常に煽ってるだけで国民はそれほど関心ありません。
Posted by at 2015年07月18日 18:15
反対意見が多いと感じてしまうのはマスコミが反対の側の意見しか流さないからでしょうね。
事実、賛同側の主張をマスコミが報じているの見たことがありません。
(実際には報じているのかもしれませんが、ここまで見えてこないと言う事は、そのバランスが圧倒的におかしいと言う事でしょう)

そもそも。
反対デモやってる人は、それが集団的自衛権(或いはその発展系である集団防衛)と本質的には同じだと言う事に気付いているのでしょうかね。
Posted by 鴉鳥 at 2015年07月19日 08:43
強行というけど、そもそも自民党はマニフェストに入れてましたから、強行でもなんでもないはずなんですよねぇ。
『何処が強行か』と問われるなら、憲法改正せずに法案を通して順序が逆だということと、「時の政権が政治的に必要なら憲法違反を行う法律を立てていいのか」という議論はありますいけどね。

必要なのは間違いないですけど、憲法の立場が問われますね。
Posted by 謎言語使い at 2015年07月19日 12:35
クーデター言ってるのは違憲だからじゃないかなと
Posted by at 2015年07月19日 14:11
参加して反対意見を述べ、それが相手の考えを変える程に説得力があれば、その後の採決に影響するかもしれない。
そういう意気込みで挑むのが野党の仕事であって、今回のはただの職務怠慢ですね。
Posted by 児斗玉文章 at 2015年07月20日 11:22
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