2015年09月23日

レトロゲーム万里を往く その126 ミネルバトンサーガ


ファミコンにおける「RPG」って何だったんでしょう、という、結構大きな話から始まるわけです。



もちろん、コンピューターゲームにおける「RPG」とは、当初は「D&Dをコンピューターの世界に持ち込んだもの」でした。最初、メインフレームで動いていた幾つかのダンジョン型ゲームは、やがて「Ultima」や「Wizardry」「Rogue」になって世界中のパソコンユーザーたちに知れ渡るようになりました。

そして、それらのゲームは海を越えて、日本では「ダンジョン」や「ぱのらま島」、「ドラゴンスレイヤー」、あるいは「ハイドライド」、「ザ・ブラックオニキス」「夢幻の心臓」といった、数々の国産パソコンゲームタイトル名作群に姿を変えました。


この頃、こういったパソコンRPGの流れを熟知していたであろうファミコンゲームの開発者たちが、RPGをファミコンの世界に持ち込む時、どういうことを考えていたのかなあ、などと私は想像します。


一番最初にきたのは、「ちびっこも含めたファミコンユーザーに分かり易い形で、RPGという新しい世界を知ってもらおう!」というものだった筈です。そこから考えると、アクションゲーム花盛りだった1986年、最初に出現したのが「パソコンのRPGを下敷きにした、アクション寄りRPG」だったのは当然のことと言えるでしょう。ゼルダの伝説はある程度「ハイドライド」や「ザナドゥ」を意識していた筈ですし、ハイドライド・スペシャルは「ハイドライド」を若干マイルドにした移植作です。数か月遅れた「ワルキューレの冒険」は、そこにぐっと「奥行」というか、色んな要素を加えたタイトルになっていました。


そして、おそらくは「夢幻の心臓II」を意識していたであろう「ドラゴンクエスト」と、その半年余り後に発売された「ドラゴンクエストII」が、ファミコン業界における「物語を語るRPG」のスタンダードになったことは疑いないでしょう。この後しばらく、ファミコンにおけるRPGの世界は、言ってみれば「どこまでドラクエで、どこからドラクエでないか」という視線と戦うことになりました。

1987年に発売されたRPGが、「ドラクエとどう差別化するか」ということを考えながらデザインされたことは想像に難くありません。例えばヘラクレスの栄光。例えばゾイド。例えばインドラの光。例えば桃太郎伝説。どれもこれもそれぞれに、「ここがドラクエと違うんだ!!」というアピールポイントを持ったタイトルたちでした。

私が考える「ファミコンRPGのキーワード」は、「試みの歴史」です。

スタート地点にあった数々の名作を、どんな試みで超克し、どんな試みを後につなげるか。RPGという物凄く広いフィールドに、限られたハードウェア性能を使って、一対何を埋め尽くすのか。そんな「試み」が繰り返し繰り返しユーザーに提示されたのが、ファミコンRPGの歴史だったのではないかと、私は思うのです。



そんな中そのゲームは、「未来神話ジャーヴァス」で微妙にRPGの潮流に乗り遅れた感があった、アーケードの雄タイトーから発売されました。


それは、数あるファミコンRPGの中でも有数の、「出会いと別れ」の物語。



ミネルバトンサーガ。RPG。1987年10月23日、タイトーから発売。

ジャーヴァスに続くバッテリーバックアップシステムを始め、数々の新機軸をファミコンRPGに持ち込み、その高い完成度は当時から一部ファミコンゲーマーの定評を受けていました。当時、ドラクエシリーズや桃太郎伝説などの影に隠れてしまった感は正直否めませんが、米田仁士先生の溜息が出るほど美しいパッケージイラストを始め、新旧RPGゲーマーにアピールする魅力を、そのタイトルは十分に発していました。



ゲームの背景など、詳細はWikipediaに記載されています。

Wikipedia:ミネルバトンサーガ ラゴンの復活

「ゲームのせつめいしょ」様では、説明書の内容をそのまま参照出来ます。

ゲームのせつめいしょ:ミネルバトンサーガ ラゴンの復活


動画はyoutubeから参照出来ます。後述しますが、BGMほんとーーーーに素晴らしいので、フィールドの曲だけでも聴いてみてください。



さて、ゲームの話をしましょう。


・そこにあったのは、度胆をぬく程の「新機軸」の数々。

まず特筆すべきなのは、ミネルバトンサーガの「オーパーツ」と称してもまったく違和感のない、凄まじいまでの新機軸の数々です。


ミネルバトンサーガは、ゲームの種類としては、ドラクエなどと同じ「2D見下ろし型RPG」ということになります。ゲームを初めてすぐの印象としては、ドラクエやFFとそれ程異なるところがないでしょう。

が、プレイヤーはすぐに、ミネルバトンサーガに込められた「工夫」の圧倒的な物量に気付かされることになります。


・魔法・飛び道具などの戦術次第で格上の敵も倒すことが出来る、シンプルでありながら奥が深い2Dアクション型の戦闘シーン(ここだけハイドライドっぽい)
・ラスボスを含め、どんな敵からでも100%逃げることが出来るという大胆なバランス設定
・個別にストーリーを持ち、くるくると出会い・別れを繰り返しながら入れ替わる仲間たち
・仲間たちは、ドラクエのような大名行列形式ではなく、フィールド上を自然に歩く(障害物は勝手に避ける)
・街道の上を歩くと敵が出てこない(例外もある)
・育成ゲームとしての楽しみも見せてくれる傭兵システムと、傭兵たちの階級
・傭兵は、この時期に既にオートAIを実装しており勝手に動く
・ゲームの進行具合に応じて、細かく変化する街の人々のセリフ
・当時はまだ数少なかったバッテリーバックアップ方式
・何故か敵とも会話が出来る戦闘中会話システム(それ程意味はない)
・船のグラフィックが大きい



繰り返しますが、このゲームが出たの、1987年の10月です。ドラクエIIのわずか8か月後。まだファミコンRPG全体の歴史としても黎明期というべき時期に、ここまでの工夫を詰め込んだタイトルは他にちょっと見当たりません。


個人的に、特に印象深いのは傭兵システムです。このゲーム、ストーリー上の仲間のレべルは基本的に上がらないので、育てることが出来るのは基本傭兵のみです。そして、傭兵一人一人にも「ルトナ」とか「キース」とか名前がありまして、育ってきて称号も上がると結構愛着がわくんですよね。

しかし。傭兵はある程度かしこいとはいえ、当然自分では操作出来ないので、油断すると案外さくっと死にます。そして死ぬと復活出来ず、「ユラトぉぉぉぉっ!!」とか絶叫することになる訳です。手塩にかけて育てた傭兵が、ひかせ際を誤ってあえなく敵に敗れた時の喪失感は、Wizardryのロストにも匹敵するものがあります。

一方、戦闘バランスは結構独特で、弾数制限がある(弾は街で購入できる)飛び道具を上手く駆使すれば、序盤でもかなり格上のキャラに勝つことが出来ます。これを利用した稼ぎテクなども存在しまして、序盤に戦えるシープヘッドを倒しまくると大量に経験値が稼げたりするんですが、そうしなくてもレベルは割とさくさく上がる親切仕様です。これで経験値稼ぎの楽しさを覚えたちびっこたちもいたのではないかと。

とはいえ、どれだけレベルを上げても、最終ダンジョンは割と地獄仕様でして、かなりの苦労を強いられることになります。機会があれば是非攻略をば。


くるくると入れ替わる仲間たちにも一人一人きちんとドラマがあり、台詞があり、出会いと別れがあります。この辺の見せ方、プレイヤーに対する「別れ」の提示というものが、このゲームはほんとーーーに真に迫っており、新たなキャラクターと出会った喜び、前のキャラクターと別れる寂しさを、非常に丁寧にプレイヤーに提示してくれます。私が、ミネルバトンサーガを「出会いと別れのRPG」と呼ぶ所以です。

街の人達を含め、ちょこちょこと変化しながらプレイヤーに提示されるメッセージの数々は、「自分は本当にこの世界を旅しているんだ」という臨場感を感じさせてくれること大でした。個人的にはジノーとかいい味出してたと思います。



・美麗なグラフィックと、神曲以外存在しないBGM。

ところで、上でも書きましたが、ミネルバトンサーガには神曲以外存在しません。断言します。

私が特に好きなのはフィールドのBGMとED・スタッフロールのBGMでして、とりわけスタッフロールのBGMについては、ラスボスを倒して平和な世界を廻った時のメロディラインそのままに、軽快さと透明感と重層な展開という、一見矛盾しているように見える要素を見事に並び立てている素晴らしい名曲です。

出来れば、ご自分でラゴンをしばき倒してからどっぷり聴かれるのをお勧めしたいところなのですが、忙しい方はyoutubeで検索してでも一聴されるとよろしいのではないかと思います。


ともあれ、ミネルバトンサーガのもう一つの凄さは、やはりなんといっても「世界の見せ方」なんですよね。

例えば、ストーリーの進み具合によって、同じ街でも聞ける噂話が変わったり。

例えば、色んな街の吟遊詩人から、その地に伝わる伝承を聞くことが出来たり。

例えば、説明書にアイテムの原料やの作り方が細かく書いてあったり。

例えば、製品への添付で世界地図を観ることが出来たり。


上記の美しいBGMや、細かく書きこまれたグラフィックも含めて、ミネルバトンサーガの世界観演出はとにかく徹底しています。ゲームの中にも外にも、南オフェーリアという世界がどんな場所なのか、プレイヤーに伝えようとする要素が山積みです。この辺りは、後のTAITOシューの世界観の組み立てにも通ずる部分があるような気がします。


と。長々書いて参りましたが、私の中では「メタルマックス」「サンサーラ・ナーガ」と並ぶ、ファミコンRPGの中でも屈指の名作が「ミネルバトン・サーガ」です。どうもまだバーチャルコンソールでも配信されていないようなのですが、機会あれば是非とも遊んでみることをお勧め致します。


今日書きたいことはこれくらいです。


posted by しんざき at 19:34 | Comment(1) | TrackBack(1) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
ミネサガいいですよね。
今でも毒の名前、下から順番に言えますよ。
Posted by 児斗玉文章 at 2015年09月25日 15:42
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