2015年11月12日

レトロゲーム万里を往く その127 聖剣伝説 LEGEND OF MANA


さあ、歌おう。声の限りに、Song of manaを。


以下、かなりの長文ですので、忙しい人は画面をスクロールして最後の3行だけ読んでください。デカい字で書いてあるので目立つ筈です。


プレイステーションというハードが1994年に世に出てから、もう21年が過ぎました。ファミコンが出たのが83年ですので、実は「ファミコン→プレイステーション」の時間的距離よりも、「プレイステーション→現在」の時間的距離の方が倍近く長い、ということになります。

かつて、プレイステーション・セガサターン・PC-FX・ニンテンドー64辺りの、いわゆる「次世代機戦争」を間近で経験した私にとっては、今でもプレイステーションは次世代機ではあります。とはいえ、流石にぼちぼち、レトロゲームネタとしてプレステゲームを取り上げても良い頃かと思いました。皆さまにとって、プレステやサターンにおける「レトロゲーム」はどんなゲームでしょうか。


ちょっと、「プレステ時代のスクウェア」を振り返ってみたいと思います。


プレイステーションというハードにおいて、スクウェアとエニックスという二つのメーカーは、いわば最強のキラーソフトメーカーとして認知されていました。当時、この二大メーカーがソニー産ゲーム機にタイトルを供給するという、ただそれだけのことが各雑誌で連日トップニュースになったことを記憶しています。

96年8月2日のトバルNo.1を皮切りに、キラーソフト中のキラーソフトだったFF7が発売されたのが1997年1月31日。その後、ブシドーブレードやゼノギアス、アインハンダーといったプレステの独自タイトル・独自シリーズの傍ら、ファイナルファンタジータクティクスやサガフロンティアなど、SFC時代からの看板を生かしたタイトルも、スクウェアは縦横無尽にリリースしていきました。

プレステ時代のスクウェアは、今の印象以上に「RPGのスクウェア」として認知されていた、ような気がします。しかし、実際にプレステのスクウェアタイトルを見ていると、ジャンルは意外な程多様性に富んでいます。トバル、牌神、ブシブレ、アインハンダー、パワーステークス、フロントミッション、双界儀。もちろんエアガイツも、武蔵伝だってスクウェアです。この中には結構な実験作も含まれています。

恐らくスーファミ時代よりもずっと、「プレステ時代のスクウェア」は冒険的だったのではないでしょうか。そこには、かつて「半熟英雄」や「アップルタウン物語」や「磁界少年メットマグ」を世に送り出した、いわばスクウェアの挑戦的なDNAの存在があったような、そんな気がします。


そんな中。レーシングラグーンの少しあと、デュープリズムの少し前に、プレステで初めて「聖剣伝説」のシリーズタイトルを冠したゲームが生まれました。


「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」。RPG。1999年7月15日、スクウェアから発売。ゲームボーイに誕生し、SFCで人気を不動のものとした聖剣伝説シリーズの、待望を一身に集めた続編でありながら、その凄まじいまでの詰め込み具合と新機軸は、シリーズファンの度肝を抜くに十分過ぎる程でした。


ゲームの詳細については、Wikipediaをご参照ください。

Wikipedia:聖剣伝説 LEGEND OF MANA

こちらでは、ゲームのオープニングを参照することが出来ます。プレイシーンもちょっと出てきますが、なによりパステル調の美しい、美しすぎる背景グラフィックが一見の価値ありです。




さて、ゲームの話をしましょう。


そこにあったのは、ただひたすらの「ものすごい詰め込み」

およそありとあらゆるスクウェアのゲームの中でも、「詰め込み過ぎ」という点ではトップクラス、いや下手すると現在でもトップに君臨しているゲームなんじゃないかと思います。正直好みも分かれます。


かつて、「聖剣伝説2」や「聖剣伝説3」は、キャラクターが織りなすドラマと、若干のアクション性と、遊びやすさを絶妙に融合させた文句なしの名作タイトルでした。時折バグこそあるものの、FFとはまた違った味わいのその完成度は、今でも見劣りのするものではありません。

一方、聖剣伝説 LEGEND OF MANA(以下LOM)は、決して遊びやすいタイトルではありません。というか率直に言って、ライトゲーマーの方には攻略本なしだと結構わけわかんねえというレベルの内容だと思います。その意味で、このゲームは聖剣というよりはむしろサガシリーズに近いです。


一つには、このゲームがあまりにも「広過ぎる」という点があると思います。


LOMは、一人の青年(ないし少女)が、マイホームのベッドで夢から覚めるところから始まります。暖かく居心地のよさそうな(またこのグラフィックが素晴らしいの一言)家を出ると、マイホームの前にたたずんでいる、植物と人の間の生き物のような不思議な存在、「草人」。その草人から手渡される、「積み木の町」という「アーティファクト」。


「世界は、みるひとのイメージでかわるんだって。知ってた?」


まず、このゲームの第一の要素が「ランドメイク」システムです。白地図のような何もない世界に、自分で町やダンジョンを配置していく。そして、その町やダンジョンで起きるイベントを探しまわって、様々な条件を満たして、新しいアーティファクト(町やダンジョンを作る為のアイテム)を手に入れる。この繰り返しで、徐々に地図とイベント記録が埋まっていく。その感覚は、まるでイベントの宝探しです。

このゲームにおいて、プレイヤーは「能動的にいろんな場所を探し回って、いろんな条件を満たして自分でイベントを発掘する」という行動を求められるのですが、まずはここがノーヒントだと結構厳しい。最初の内こそ、町中で人に話しかけていれば勝手にイベントが始まるのですが、中盤以降世界が広くなるにつれて、どこの町に行って誰に話しかければ新しい展開が発生するのか、結構根をつめて探し回らないといけなくなってきます(わかりやすい奴もあるのですが)。


一方、このゲームの戦闘は、11種の武器ごとに操作性が変わる、ベルトスクロールのようなアクションです。ボタンとキーの組み合わせで様々な連続技が出来たり、ヒット&アウェイを狙ったり、逆に一気にラッシュをかけて相手を気絶させたりと、格闘ゲームのような要素を意識しているように見受けられる部分も結構あります。慣れてくると爽快感があるのですが、コツがつかめるまでは右往左往することになるかもしれません。

ダンジョン攻略やボス戦も決して難易度が低くはなく、後述する武器作成に手を出していない場合には、かなり苦労する場面もあります。特によくあがる名前が凶悪ボスの一角ラ・バン、ダンジョンとしては難関焔城。ダンジョンについていえば、テレポートのような手段が基本存在しない(固有の仕掛けとしてテレポート手段が存在するマップもある)為、行ったりきたりが面倒くさいという声もありました。


武器作成や必殺技を覚えるシステム(特定の特技をつけてひたすら戦闘回数をこなす)、ペット育成や楽器作成、ロボット作成のような寄り道も含めて、このゲーム、「深過ぎて面倒くさい」要素はかなり多いんですよね。この辺り、攻略的にはかなりシンプルだった旧聖剣シリーズファンの中で、LOMに対する好みがわかれる理由にもなっていると思います。


ここで、ある程度LOMの雰囲気や世界観が好みでないと、先を進めるのが苦しくなってしまったという人もいたでしょう。


が。「雰囲気や世界観」という部分がポイントになった時、LOMは、一部のゲーマーにとって凶悪無比な魅力を発揮し始めます。



あなたが、ボクらを好きな時、ボクらもあなたが好き。


真珠姫かわいい。(真顔で)


LOMには、三本の「シナリオの柱」とでもいうべきメインストーリーがあります。

一つは、宝石が人の姿をとった「珠魅(じゅみ)」という種族、その中の二人「瑠璃」と「真珠姫」を中心として織りなされる、「宝石泥棒編」。

一つは、エスカデ・ダナエ・マチルダ・アーウィンの、4人の幼馴染のちょっとした人間関係が、世界を揺るがす大事件に発展していく「エスカデ編」。

一つは、巨竜ティアマットと白竜ヴァディスに使える二人のドラグーン、ラルクとシエラを中心に進む、「ドラゴンキラー編」。


このメインストーリー、どれを進めても最終イベントまでたどり着けるのですが、これ意外にも山ほどのサブストーリー、そしてそれらを彩るキャラクター達がいます。

まずは、これら数々のストーリー群に出てくるキャラクター達と、彼ら・彼女らのセリフが、ツボにはまるともう底なし沼のように魅力的なのです。


例えば、月夜の町ロアで年中飲んだくれているアナグマの面々。

「ぐま!」


例えば、セイウチのバーンズが率いる海賊船バルドと、ダジャレ好きの海賊ペンギンたち。

「風がなければ船は進まん。 しかし、風の無い時こそ風に感謝する。 これが本当の海の男だ。」


例えば、世界全体のバックボーンストーリーの中核にいる、「マナの七賢人」の面々。

「見るのは未来だけでいい。罪の意識は、君を記憶の檻に閉ざし、鍵を開ける。鍵を開けて。自分自身を許せない人が、誰を許せると言うの?」


例えば、あちらこちらの町でぶらぶらしているだけのように見えて、実はメインストーリーの一番重要なところに鎮座している草人たち。

「ほしのかずをね かぞえてるのもね すきだな」「けっこうね、ほしってね たくさんあるっぽいよね」


例えば、相変わらずろくなことをしないろくでなしだけど妙に憎めない、シリーズ恒例の猫商人ニキータ。

「よき出会い! よきわかれ! 人生エンジョイするにゃ!」


例えば、当初世界征服を狙って町の一角にカボチャを繁殖させる、双子のちびっこ魔導士バドとコロナ、そして彼らが出身とする魔法都市ジオの面々。

「たいへんなのです!」「困ってるのです!」「とんでもないことです!」「一大事です!」


例えば、普段はマイホームの植木鉢に入ってじっとしているだけだけど、時には主人公の土産話を日記に書き綴ったり、時にはバドのほうきを探して大冒険する、いわば主人公の相棒「サボテン」。

「かかわっても かかわっても かやのそと」


その他その他その他その他、とにかくキャラクターは多すぎて到底書ききれないのですが、それら魅力的なキャラクター群が、時にはお互い関わり、時には一人で勝手なことをしている様は、群像劇などという一言では括れない光景です。


個人的に特に気に入っているのは、勿論メインストーリーの中でも最も完成度が高いといわれる宝石泥棒編の珠魅の面々と、魔法都市ジオの学生連中。ジオの学生を授業ボイコットから引き戻す「ギルバート・愛の出席簿」なんかでは、バドやコロナを連れてジオをうろついて、いろんな学生と話しているだけでも十分楽しいです。

一方、七賢人の言葉はどれも含蓄にあふれていてすごいのですが、特に「語り部のポキール」の言葉なんかは印象的なものが非常に多いです。

「つまるところキミは、闇を憎まなくていい。それだけがわかればいい。」
「人の愚かさばかり見る、キミの生き様に光明はあったかい?」
「キミに全てをまかせる。 しいて言うならば、それがボクの力だ。」


一方、七賢人は割とギャグもこなす人たちなのであって、鍛冶屋のワッツとのエピソードやガイアと真珠姫の会話なんかもなかなか楽しいです。オールボンの「シリアスも行き過ぎればギャグになるぞ」は、エスカデ相手ということもあって名言中の名言。


そして、それらキャラクターたちを隙なく彩っているのが、水彩画のような素晴らしいグラフィック群と、言葉を失う程に完成度の高いBGMの数々。私、数あるスクウェアRPGの中でも聖剣シリーズの曲は群を抜いて大好きなのですが、その一角で大きな存在感を占めているのがLOMです。

いうまでもないドミナの町や、オープニングの尋常じゃない清涼感を皮切りに、リュオン街道、月夜の町ロア、魔法都市ジオ、港町ポルポタや各ボス戦に至るまで、聞きごたえのない曲が一曲たりとも混ざっていないことは断言します。

特に、珠魅たちの都市である「煌きの都市」なんかは、一応ストーリー上ラストダンジョンにあたる筈なのに、ピアノを基調とした余りにも静かで寂寞感のあるBGMで、静かに聴きいっているだけで胸にじわっとくる名曲です。


そして、なんといっても、エンディングで流れる最後のボーカル曲「Song of mana」。町々をめぐるニキータと、草人たちの台詞をバックに流れ始めるSong of manaの晴れやかさは、何をおいても一聴の価値があると言っていいと思います。




ところでディオールチャートが長すぎるんですが。

話は変わりますが、このゲームの「武器作成」という仕組みは凶悪の一言ですべてを言い表せるものでして、とんでもなく奥が深いんですがとんでもなく大変だしとんでもなく面倒くさいです。

このゲーム、普段「使う」対象としてのアイテムが実はほとんど出てきませんで、武器防具以外のアイテムはほぼ全部が合成素材という、RPG全体を見ても割と珍しい陣容になっています。

もとになる素材に対して、順番に合成素材を使っていくことで、様々な特殊効果が発現したり、どんどん武器が強くなっていったりするのですが、とにかくこれが下準備から実行から、滅茶苦茶深くて滅茶苦茶時間を食います。

解説してくださっているページから、一部を引用してみます。略語がたくさん使われてますが、余り気にせず「そーゆーものだ」と思ってください。

引用元:M.T.R.聖剣伝説LEGEND OF MANA様

A : 0-0-9-0-0-0-0-0
  ・ 輝きx5>イオウx2>輝きx2
B : 0-0-9-6-0-0-0-0
  ・ >輝き>アウラx2>輝きx2
C : 0-0-9-6-7-0-0-0
  ・ >サラマx2>イオウ>輝き>イオウ>火マナ
D : 0-6-9-6-7-0-0-0
  ・ >輝きx2>シェイドx2>輝きx2
E : 6-6-9-6-7-0-0-0
  ・ >ウィスプx2>輝きx2
F : 6-6-9-6-7-0-8-0
  ・ >ジンx2>水銀>輝き>水銀>風マナ
G : 6-6-9-6-7-6-8-0
  ・ >輝き>カオス>ノームx2>イオウ>輝き
H : 6-6-9-6-7-6-8-6
  ・ >カオス>ウンディx2>水銀>輝き
これ、「輝き」とか「イオウ」とか書いてあるのが一回一回使う合成素材なんですが、一回使うごとに「カン、カン、カン」と金槌をたたいて10秒くらいはかかります。で、これ、基本というか、チャートの途中です。まだこれでも全然最強武器の部類には届きません。これだけのアイテムをそろえるだけでも偉い手間なのに、アイテム揃えてからある程度鍛えるまで数時間かかります。
 
今でこそ、MMORPGなんかで強力武器を手に入れるまでに手間がかかることは珍しくありませんが、PS時代当時、一人用のRPGでこれをやってしまうスクウェアには正直絶句する他ありません。

「アルティマニア」なんか読みながらやると楽しいことは凄く楽しいので、ついつい時間を使ってしまう武器作成なんですが、余りにも理論が複雑過ぎてとてもライトゲーマーがついていけるようなシステムではありません。詳細は是非上記リンク先様などで参照してみてください。



さて、大概長くなりました。

この記事を一言でまとめると、内容は

LOMはとんでもなく面白いし音楽超いいので遊んだことない人は是非遊んでみてください(あと真珠姫かわいい)

ということだけであって、他に言いたいことは特にない、ということを最後に申し添えておきます。

今日はこの辺で。

posted by しんざき at 00:58 | Comment(2) | TrackBack(0) | レトロゲーム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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この記事へのコメント
聖剣LOMがレトロゲームのくくりに入っていて絶望した

真珠姫かわいい
Posted by at 2015年11月13日 11:00
たしかに、宝石泥棒編はピカ一だった。
Posted by at 2015年11月14日 18:32
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